平和的なブログ

ゲームのことばっかり話してます。たまに映画とか。

シリーズ完結編は最高のファンアイテムだった -ランス10-

平成の最初に生まれ平成の最後に完結したゲームシリーズがある。


ランス


アリスソフトより発売される正真正銘のエロゲーである。
典型的中世ファンタジー世界観のように見せかけ、なぜかハニワが亜人として住み着いていたり、ヤバそうな名前の雑魚キャラヒムラーとかゲッペルスとか)が大量にいたり、和名のキャラ(しかも忍者や魔法使いとして)がさも当然に紛れていたりとするヘンテコ世界観で、そんな世界に住む『可愛い女の子は全て俺のもの!』な鬼畜でやりたい放題な破天荒冒険者ランスが主人公のゲームだ。
ランスは冒険したり命を狙われたり時には国一つを救ったりもする。その合間に女の子を抱いたり女の子を抱いたり女の子を抱いたりもする。というかまあ、ランスの目的はむしろそっちなのだが。


今作、ランス10はシリーズの完結作である。



面白かった! 



ただそれに尽きる。今までのシリーズでランスは魔族の女の子を襲って身ごもらせたり、エルフっぽい女の子(カラーと称される)を襲って身ごもらせたり、奴隷とよぶヒロイン、シィルが氷漬けになったりそれを解かしたりしていたが、それらの冒険で広げられた風呂敷が見事に集約して畳まれていった。素晴らしい流れだった。


ランス6で出てきたダークランスがこういうキャラになるのか!」
戦国ランスでもがき苦しんだトラウマがようやく解かれるときが来たか!」
「ランス9で上手くリファインされたシーラが激強キャラになってる!」
「マリアお幸せに」
「メディウサ絶許」


などなど、ゲームを進めるたびにシリーズのファンならば頭に衝撃がガンガン走る展開になっている。最終決戦が終わったあと流れるエンディングを見た時には半ば放心状態になっていた。無尽蔵に広がる風呂敷に「無事にこのシリーズは完結できるのだろうか」という疑問が湧き上がるのに対してアリスソフトは完璧な答えを提示した。お手上げだ。ここまで完璧だと降伏するしかない。
「勇者と魔王はいくら倒しても別の存在が新たな勇者と魔王となって復活する」「魔王はかならず破壊衝動に飲み込まれる」「それらを作った創造主は人がもがき苦しむ様子を楽しんでいる」などといった「こんなのどうやってもグッドエンディングになるわけないよな……」といった設定を、見事打ち返して場外ホームランにしたてた。


最後の最後の最終局面、恐ろしいまでの伏線回収を行った上、ランスは「全員、俺様についてこい!」というセリフをパーティメンバーと、プレイヤー本人にも投げつける。傍若無人で怖いものなしで無鉄砲・無計画、プレイヤーに対しては「女の子を犯す」「女の子たちを犯す」かなんてろくな選択肢をよこさなかったランスが、初めて真の意味で「世界」を守る英雄、プレイヤーの代理人へと昇華した瞬間だ。血がたぎるセリフである。30年という歴史を背負ったキャラだからこそいえる最高の、最強のセリフだ。褒めることしかできない。他のゲームシリーズではどうやっても真似できることができないだろう。



もし以上の文章にて興味をもって「ランスシリーズをやってみたことがないんだけど、ランス10をやってみようかな?」と思った人はちょっとまって欲しい。ランス10は今までのシリーズファンだからこそ脳天をぶち抜かれるのであって、ランスを知らない新規層向けのゲームではないのだ。


そしてもう一つ、「決して楽しくはない」のだ。



ついさっき面白いと評したばかりだが、詳しくこのゲームをシステム面から解説していこう。


このゲーム、2018年に発売されたにしてはあまりにプレイヤーに対して不親切すぎる。


敵と味方、お互いが向き合い行動力を使用したり溜め込んだりして攻撃しあうターン制バトルを採用しているのだが、このシステムを解説する努力を完全に放棄している。各キャラの使えるスキルはバラバラで、何がどう強いのかは使ってみないとわからない。
同じスキルを次ターンにも使うと行動力にペナルティが生まれることだけチュートリアルで説明してくれる。が、具体的にどのスキルがどう作用するのかは実際に試してみるのがもっともわかりやすい。わかりやすいだけで理解できるとは限らないのだが。



そして各ルートの宝箱をあけることでいままで歴代の出てきたキャラがランダム(※ここ重要)で手に入る。そのキャラをリーダーとしてセットすることで戦闘のときにスキルを使えるが、控えキャラになった場合でも各々のリーダーのステータスにプラスに作用される。だからキャラをたくさん獲得したほうが有利になるため宝箱が非常に重要になる……のだが、おそろしいことにこれらの解説はゲーム内では一切なされない。私がこのシステムを理解したのはBBS PINKのランス10本スレを読んでからだった。まさか30半ばも過ぎてBBS PINKのエロゲー板に行くことになるとは思いもよらなかった。


一応説明書にあたるヘルプは同梱されているが、はっきり言って無駄だ。自分が何を調べたいのかすらわからない初心者に無関係の事柄を細かに書かれたヘルプは害悪にあたる。私が知りたいと思った情報を与えてくれることは一度としてなかった。ありがとうBBS PINKの人たち。キャラのもつスキルの効果を知りたい場合は詳細ボタンを2度押すとは思わなかった。

しかもこのゲームのバランス調整はなにかおかしい。二戦目のボスにしてバトルシステムを熟知していないと倒せないキャラがでてくる。そんなボスがでてくるならば、事前にバトルシステムを段階的に周知させていくようなデザインを施さねばならない。私が最初にそのボスと戦ったとき「負けイベントの判定バグか?」と疑ったほどだ。1991年に出たFF4でさえ、霧状態のミストドラゴンに攻撃するとカウンターをくらうと親切に教えてくれたはずだ。


ようするにこのゲームは非常に難易度が高い。時間制限があり指定されたターン内で条件が満たされなかった場合、シリーズをやり通してきて見知ったキャラがあっけなく死んでいく。国が滅ぼされてヒロインは陵辱される。そして最終的には主人公ランスたちも殺される。バッドエンドだ。
プレイヤーはバッドエンドを一つ見るたびにボーナスポイントを得ることができる。それで新規にゲームをやり直すと若干上方補正がついた状態でプレイできる。無意味なチュートリアルから。
プレイヤーは見知ったヒロインたちがなすすべなくやられ、ランスが絶望のあとで殺される様々なエンディング(無駄に多彩である)を周回して見ていき、戦闘力を底上げして、そしてほとんど唯一の正解ルートを探し当てることが必要とされる。


1時間くらいかかるチュートリアルを何周もしながら! 10時間かかってようやくバッドエンド一つ!!


私、仕事して結婚して子供いるんですよ? 無尽蔵に時間がある大学生じゃないんですよ?


このあたりのミスマッチは如何ともし難い。今までずっとシリーズに付き合ってきたファン向けであるはずなのに、トゥルーエンドに向かうためには100時間はざっくり必要とは。



もう一つ指摘をしておかなければならない。高難易度に調整した結果理不尽さが生じているところを。
このゲーム、敵のHPが非常に高く長期戦になる。回復方法も限定されているため「如何に敵の攻撃を防ぐか/妨害するか」に比重が置かれるようになる。その最適解を極めると、「初手、毒付与の後80%の確率で成功する睡眠魔法をかけて3ターン放置して毒ダメージ与えつつ行動力を貯める。失敗したらリセット&ロード」という作戦が構築されてしまう。いや、これならまだいい。したい奴がやればいい。


困ったのは敵の攻撃を妨害する能力が同じような「80%の確率で敵の攻撃を阻止」といった確率のものでしかないのだ。

敵が3回攻撃してきて、その内一つが「20%の確率で自軍のキャラ一人をダウンさせる。ダウンしたキャラは戦線から離脱(復帰不可)」だった場合はどうするか。



まずは妨害攻撃があたるのを祈る


あたったらその3つのうちの一つを妨害してくれることを祈る


だめだったらダウン攻撃が発動しないことを祈る


ダウン攻撃が発動してしまった場合、メインアタッカーにあたらないことを祈る。





これではゲームではない。祈祷だ。




味方にはダウンのとき身代わりになってくれるキャラもいるにはいるが、そのキャラを獲得するには悲惨な状況にならなければならない。戦況を優位にさせていると運でしか獲得することができない。
また運だ。
このゲーム、戦略性ある戦闘を構築している一方で、大事な自軍のキャラの獲得の多くをランダム性に任せるという意味不明な構造だ。ルートによっては確実に獲得できるキャラもいるのだが、戦略性の幅はどうしても限定されてしまう。こんな作りにするのなら時間制限をなくすか、もしくは全体的に難易度を下げるべきだった。


しかも最後の最後、真のラスボスがこのダウン攻撃を発動してくる。「頼むからランスにだけはあたってくれないでくれ」と画面に向かって祈るしかない。もしランスにあたったらやり直しだ。このあたりはいよいよ持ってスタッフの正気を疑った。


このようなシステムになった理由はおそらく「最適解を知っていてもなおも一筋縄ではない高難易度」を目指した結果ではないか。このようなシリーズキャラが多数いて様々なスキルが登場するゲームでは、特定のキャラと特定のスキルを組み合わせればたいていのボスを倒せる強力な技というものが出てきてしまう。それを知っていてもなおもなかなかクリアできないような、高難易度を目指したのではないだろうか? 私からしてみたら余計なお世話でしかないのだが。


攻略Wikiを見て進める奴はどんな状態でも攻略Wikiを見るものだ。それはプレイヤーそれぞれの自由にしたらよい。私はできる限り攻略サイトに頼るまいとした結果、2つ目のボスで詰まって助けを求める羽目になった。これが楽しいゲームプレイであったとはとてもいえない。20時間以上プレイし2つ目のバッドエンドを見たところで最終的に心が折れて改造セーブデータを入れることになった。ランス10をゲームとして見切ったからだ。



このゲームはゲームではない最良のファンアイテムだ。
そのためファンでもない新規層がプレイするのはただの拷問でしか無い。この拷問を面白がることができるのは、ランスシリーズをやり尽くしてきた猛者だけだ。

それでもこのシリーズに足を踏み入れようとする、猛者たらんとする者がいたなら、まずは鬼畜王ランスか、戦国ランスをオススメする。前者はWindows95時代のゲームだが、なんと無料で、かつGoogleChromeでプレイすることが可能だ。後者はシリーズの後半に入ったためキャラが把握しづらいかもしれないが、おそるべき完成度を誇る。ゲーム初心者でもさくっと独特のシステムに馴染むことができる。



ようこそ地獄へ。我々は君を歓迎する。さぁ、この最高な拷問を楽しもうじゃないか。