平和的なブログ

ゲームのことばっかり話してます。たまに映画とか。

リブートの名にふさわしい内容であったか? 超昂天使エスカレイヤーR

 リブート。いい言葉だ。
 バットマン・ビギンズは素晴らしい映画だし、ロボコップ2014年度版もいろいろ世知辛い世の中を描写していて楽しかった。ターミーネーター新起動は……まぁ現在シュワちゃんvs過去シュワちゃんを見れただけで価値があるかもしれない。

 リブートは映画だけの話ではない。もちろんゲームにもある。今回の記事は「超昂天使エスカレイヤー:リブート」。正真正銘のエロゲーである。そのためそういう内容なお嫌な方はここで読むのを中止していただきたい。




 2014年に発売されたエスカレイヤーリブート(以後Rと表記)は、2002年に発売された超昂天使エスカレイヤーのリブート作である。戦闘システムに手を加え、CGを高解像度へと新たに書き換え、新規シナリオを追加し敵キャラクターも増やしたものだ。なるほど、こうして並べると「リブート」の言葉にふさわしい内容かと思える。


 エスカレイヤーRについて言及する前に、まず2002年に発売された原作の「超昂天使エスカレイヤー」について解説を行おう。


 この作品、いわゆる「戦うヒロインがエッチな目にあうエロゲー金字塔だ。
 「ヒロインものエロゲーを初めて実装した作品ではない。それ以前でも「流聖天使プリマヴェール」というヒロイン調教を題材としたゲームは存在する。エスカレイヤーが先進的だったのは、ヒロイン、エスカレイヤーが「ドキドキダイナモという性的興奮をエネルギーに変換する機関を備えているという設定だ。そのため主人公はヒロインとあの手この手でエッチなことをしてエネルギーを貯める。それによってパラメータを上昇させ、地球侵略を目論む怪人軍団と戦う。勝利をすれば次のストーリーにつながるが、敗北してしまうとエスカレイヤーは敵怪人に陵辱される。その際、当然エネルギーを獲得できるのだ。
 敗北しても強くなってリベンジに向かうヒロイン。プレイヤーとしては進めないストレスを、パラメータ上昇とエッチシーンを見ることで相殺するどころか黒字になるように作られている。(ただし怪人に負け続けると心が折れてゲームオーバーになってしまうが)
 

 エロゲー界による「如何にしてゲームシステムに戦うヒロインとエロを密着させるか?」という難題に対して、見事な答えを返したのだ。主人公とエスカレイヤーが体を重ねる必然性を作り、怪人に陵辱される描写をつけたし、それによる能力強化の理由付けまでやってのけたのは、満点の答案用紙であるといって過言ではない。


 
 その原作エスカレイヤーが2002年、リブート版は2014年。12年の歳月を得て復活したエスカレイヤーRは果たしてどうだったか?


 大幅に手が加えられたのは戦闘システムだ。原作がほぼオートバトルで終わっていたのに対し、Rではいろいろと手を加えられた。エネルギーを戦闘スキルに変更することができ、各種スキルを装着し戦闘に向かう。得たエネルギーをパラメータの上昇か、スキルの割り振りに使うかで戦略性が発生することにはなっている。
 そのスキルを使うためにはルーレットを回す必要がある。
 ルーレットは各ターン1回周り、5つセットしたスキルのどれかに充当する。簡単なスキルならば一つ充当しただけで使用可能になるが、強力なスキルの場合3つ充当させないと使用可能にはならない。つまり強力なスキルばかりをセットしただけではなかなかスキルが使えなくなり、簡単なスキルばかりだと火力が足りないことになる。


 最大の問題点。いったいこのシステムのどこにエロさがあるんだ? ただ怪人との戦闘がわかりにくく、煩わしいものになっただけなのだ。
 いや、別にエロさがなくてもゲーム的に面白いのならば問題はない。問題はないのだが、2014年の時点でルーレットを回して楽しさを覚えるゲームデザインはむしろ斬新すぎる。ルーレットの目押しを楽しいと思うには、私は年を取りすぎてしまっていた。戦略性が向上した、という表現は聞こえがいいが、この戦闘システムはいわば「蛇足」以外のなにものでもない。ゲームデザイン的に面白くもなれずに、エロ要素に結びつけることもできないのなら、前作同様オートバトルで構わなかったのではないか?


 原作エスカレイヤーは素晴らしい作品だった。しかしドラゴンクエスト1が如何に素晴らしい作品であろうが、そのまま現代に持ってきて懐かしさを取っ払った場合ただただ「よくわからない」「さすがに古臭い」といった評価を受けてしまうのと同じように、骨子をそのまま持ってきたこのエスカレイヤーRは「さすがに古臭い」という評価を受けることを否めない。
 残念なことに、「リブート」というには力不足だった。確かにシナリオは追加された、敵キャラは増えた、CGは高解像度化された。ただ、それだけだ。それなら「リマスター」なり「追加版」なりのほうがよほどふさわしいように思える。


 12年という長い年月においてゲームとしてなにかしらの進化をすることができなかった…と表現すると、なかなか寒いものがある。エロゲーなのだからエロ描写がしっかりしていればいい、という見方もあるかもしれない。かつて「ドキドキダイナモ」という発明で問題を潰したように、リブートと銘打った今作においてもなにか一つ大きな変化を期待したが、それはなされなかった。それはとても残念なことだと、ここに感想として記す。

 

復活したゲームに魂はあったか? 魂斗羅ローグコープス

…11/5 追記あり

 

魂斗羅”とは熱き斗魂を生まれながらに持ったゲリラ戦術の達人に与えられる呼名である

 

 令和元年、突如としてそのゲームは復活した。

 その名は魂斗羅。昭和に誕生し平成を駆け抜いたアクションゲームシリーズである。

 長らく休眠状態にあったこのシリーズがいきなりの復活を遂げたが、その出来栄えは、スカイリムやゼルダbotwといった歴史に残る名作と比較したら……とても比較できるようなものではなかった。

 それでは駄作であったか? いや、そうではない。このゲームには駄作の2文字で済ませられるようなものではない美点が確かにあるのだ。

 では凡作か? いや違う。このゲームは、いうなればプレイヤーを振り回し騎手不在状態でゴールにぶっちぎりで走り抜けた暴れ馬のような困った存在だ。

 

 

 ゲームシステムを解説していこう。このゲームは見下ろし視点型アクションゲーム。右スティックで移動、左スティックでエイム、トリガーで射撃といえば概ね伝わるはずだ。

 素直なゲームシステムではあるが、ゲームを始めるとプレイヤーを振り落とすような仕様が待ち構えている。やたら硬い敵に豆鉄砲のように錯覚するほど攻撃力の低い銃。令和に入ったというのに恐ろしく解像度の低い画面。絶妙な動きで敵を存分にバックアップしてくれるカメラワーク。そして魂斗羅という銃をバリバリ撃ってなんぼのゲームシリーズでありながらも実装されている「オーバーヒート」という要素。すぐにオーバーヒートする豆鉄砲を手に無数に湧き出てくる敵をなんとかして倒さねばならないが、おそらくここで半分のプレイヤーは落馬することだろう。競馬でいえばスタート直後だ。いくらなんでも早すぎる。

 歯を食いしばって苦痛なミッション1-1をクリアすると(恐ろしいことにここはチュートリアルだ)、武器に取り付けるMADチップと肉体改造用の臓器、そして少量の金が手に入る。

 とりあえずオーバーヒートを速く改善してくれる放熱板か、オーバーヒートにしにくくなるバッテリーでもつけてみよう。両方あるなら両方つけてもいい。強化臓器も付け替えだ。

 そして次のミッション1-2へいくと、手応えが違ってくるのに気がつくはず。銃が強いのだ。そう、銃にも経験値が存在し、レベルアップすることで性能が若干上昇する。それと先ほどつけたMADチップと重なって、豆鉄砲はエアガンくらいに進化したのだ

 

 バリバリ撃てるようになり、ダッヂで敵の攻撃を回避するようになり、ラグにも慣れたプレイヤーのスキルが上昇してくると(恐ろしいことにこのゲーム、オフラインシングルでも自覚できるほど操作ラグがある! 10f以上だ!)、今度は武器のコアチップを拾うことだろう。コアチップはそれぞれ対応したMADチップと少量の金を足すことで武器を精製できる。その武器はマシンガンの他にもミニガンだったりチェーンソーであったりタレットであったり地雷バラマキ装置であったりと多種多様だ。(11月1日のアップロードでさらに増えた)

 新しい武器に変え新しいステージに向かうプレイヤー。そのクリア報酬は大量のMADチップと武器のコアチップだ。MADチップも多種多様である上、レア度とレベルがあるため一つで済むわけはない。より高いレベルのMADチップを求めて同じステージを周回するのだ。さあ! 掘って掘って掘って掘って掘って掘って掘って掘って掘って掘りまくるのだ。

 そうして武器のレベルが5以上になると、武器のランクを上げるアップグレードが出来るようになる。MADチップと金銭を足すことで同じ武器で有りながら攻撃力を飛躍的に高めることが出来るのだ。レベルは1に戻ってしまうが、全体の性能は上がるので問題ない。問題ないのだが、とにかく金がかかるのだ。

 

 一回の探索で貰えるのは僅か1000G。アップグレードには低ランク品でも2万G。Sランクだと15万G以上が必要になる。

 

 こうなると金策のために掘りすすむ必要になるかと思うが、安心して欲しい。君の手元には不要な武器コアチップと、大量のMADチップがあるはずだ。これで武器を精製し、それを売ると一万Gほど手に入る。

 

 つまりこのゲームは不要なMADチップを武器に精製して金に換え、その金でお気に入り武器をアップグレードするゲームなのだ。拾ったハズレのMADチップも無駄にはならない。きちんと消化する流れが出来るのだ。さあ、掘って掘って掘って掘って掘って掘って掘って掘って掘りまくるのだ。掘りまくる中できっと高レベルのMADチップを手に入れることが出来るだろう。それに付け替えることでより効率的に敵をなぎ倒すことが出来るようになる。武器精製に混ぜれば最初から高レベルな武器ができあがる。

 見覚えのあるステージと、色違いの敵を倒しつつミッションを制覇していくと、最初に感じていた不満感が感じなくなっていくことに気がつくだろう。このゲーム恐ろしく画質が悪い反面、びっくりするほどロード時間が短い。サクサク画面が切り替わり、何回掘り進んでもいける。超強化されたミニガンで無数に湧き出てくる敵を一斉になぎ払うのは快感としか言いようがない。同じミッションを繰り返しやり直すのが楽しいのだ。もはや豆鉄砲やエアガンを振り回していた頃はおさらばだ。君の手の中には今正真正銘魂斗羅が扱うマシンガンが握りしめられている。

 

 

 「バリバリでてくる敵をバリバリ撃つのは楽しい」という至極当たり前の話を、このゲームはプレイヤーに体験させられることに成功している。失敗しているのはプレイヤーを置いてけぼりにしているのだ。上で解説したような武器を精製して金に換えるテクニックは一切紹介されない。さらにはシングルプレイで進めてもポーズ機能というものがない。Switchのホームボタンを押したとしてもゲーム内時間は進んでいるため敵に殴られ続ける。魂斗羅になるためにはポーズ機能という軟弱な救済措置は必要ないのだ

 

 そして最大の長所であり欠点であるところはオンラインコープだ。このゲームはオンラインにより最大仲間四人で同じミッションに向かうことができる。プレイヤー一人では単なる火だが、二人集まれば炎となる。炎となった魂斗羅たちは無敵であり、四人集まった場合は画面が弾丸で埋め尽くされプレイヤーが訳分からないうちに敵は殲滅されて戦場は焼け野原だ。その時のテンションの上がり具合は形容しがたい。

 欠点は四人集まることがほとんど無いことだ。マッチングシステムにも問題あり、2分待機したら即一人でミッション開始だ。魂斗羅はせっかちさんなのだ。おかげで過疎のこのゲームでマッチングするのは困難だ。

 

 ここまで読んでもしかしたら「ちょっとやってみようかな?」と思った人がいるかもしれない。頼むから体験版には手を出さないでいてほしい。このゲームの体験版はもっともゲーム内で苦痛な部分だけが収録されている。しかも頑張ってそれを乗り越えてもセーブデータ引き継ぎは出来ない。製品版を購入してもまた最初からやり直し苦痛のステージ1が始まるのだ。これほど計算されつくした公式のセルフネガティブキャンペーンがあっただろうか?

 今ならゲオで半額以下で購入することが出来る。小売価格は5000円なのでそもそも高くないのだが、それでも売れていないことが丸わかりだ。体験版を見れば仕方ないことではあるが。

 

 ちなみに私は小売価格そのままでダウンロード版を買いシーズンパスも購入済みで同時期に購入したデモンエクスマキナよりも長くこのゲームをプレイしている。何故だ。何故なんだ。プレイヤーを振り落とそうとする暴れ馬に必死になってしがみついている間に、私も魂斗羅になれたということなのだろうか。

 この令和という時代に、これほどプレイヤーに不親切でおいてけぼりにするゲームは久しぶりだった。そんなゲームに立ち向かっているうちに魅了されてしまったのかもしれない。これほど雑で、低予算で、画面が汚く、全然マッチングしないのに、面白いゲームに出会えたことは幸運であったのかもしれない。

 

 

11/5 追記

 本日11/5、アップデートがなされた。その内容はゲームバランスの調整と、内部解像度の向上だった。ゲームバランスのほとんどは熟練プレイヤーの不満点を潰す素晴らしい内容である(取ると弱くなるスペシャル武器や、緊急回避にしかつかえないボムの攻撃力アップなどは素晴らしい)。なお、シングルプレイでのラグの低減も今後のアップデート予定に組み込まれたとのこと。

 過疎マッチングに手が入らないのは残念ではあるが、コナミの対応は十分に評価に値する。まだすべての不満点がなくなったわけではないが、ここは素直にコナミへ感謝したい。

人間しか出てこないホラーゲーム -遺作-

 初代バイオハザードをやったとき、振り向いたゾンビのムービーで悲鳴をあげ、窓を破ってきたゾンビ犬でコントローラーを投げつけ二度とやることはなかった。初代サイレントヒルをやったとき、廃病院から過去世界に飛んでそこが刑務所であったことがわかった途端、電源を落とした。
 ホラーゲームは恐怖を得てなんぼのゲームだ。その恐怖の根源とは未知のクリーチャーであったり、幽霊であったり、得体のしれないものだ。
 さて、問題だ。その恐怖の根源が「どこにでもいる用務員のおじさん」であるホラーゲームは成立するだろうか。
 すぐに答えをいってしまうが成立する。それが18禁ホラーエロゲー「遺作」である。


 遺作は1995年にエルフから発売されたゲームだ。
 主人公は高校生で夏休みのある日ラブレターが届き、そのラブレターにより学校の旧校舎に呼び出される。しかしそこにはさまざまな理由で呼び出されたヒロイン6人と、同級生の男子2人がいた。イタズラだと気がついた彼らはさっさと帰ろうとするものの、扉が固くしまっていることに気がつく。取り壊し前の旧校舎には窓も板で打ち付けられており、完全に閉じ込められた状態に追いやられた。嫌な予感が背中を走る。はやくここから脱出しなければならない。さもないと……。


 ゲームシステム的には3Dで構成された旧校舎内を移動し、部屋の中をクリックして探索するもの。探せばアイテムやヒントが見つかり、脱出の糸口が見えていく。ヒロインや男子生徒がいる部屋の中では会話が出来、彼らの過去やここに来た事情の裏を探ることもできる。それらを縫い合わせていくとおぼろげながらも全体像が輪郭をあらわしていく。


 しかし順調にはいかない。ヒロインは唐突に姿を消す。そしてビデオテープが置かれているのだ。それを再生すると映っているのは、学校の用務員である遺作に陵辱されるヒロインの姿だ。

 いままで「何か薄気味悪い用務員」でしかなかった遺作はついに牙をむく。すぐにわかるが、彼らをこの旧校舎に集めたのは遺作だ。そしてヒロインたちを狙ってこの旧校舎に潜んでいる。選択肢を間違えると即遺作はヒロインを浚いそして陵辱する。主人公はそれをなんとかして阻止せねばならない。

 
 謎なのはこの旧校舎、さほど広い構造にはなっていない。なのにどこにも遺作の姿は見つけることはできず、かつ遺作は孤立したヒロインの状況を把握していて即攫うのだ。ヒロインを助ける正規ルートを通っていても遺作は簡単には見つからない。遺作はいったいどこでどうしているのだろうか…。この謎を解かない限りは真エンドを見ることが出来ない

 ゲームシステム的に面白いのが「ハズレを選択するとHシーンが見れる」という構造になっていることだ(とはいってもオッサンである遺作がヒロインを犯すものだが)。これは構造的に後のボンバーガールにも見られるもので(やられると操作キャラの服が破けてしまう)、プレイヤーの謎解きストレスを深刻なものへとさせない作用をもたらしている。

 いくつかのバッドエンドに突入し、それでも適切な選択肢を探し出し、ヒロインを守り、真実へと徐々に近づいたプレイヤーは、次第に遺作の本当の恐ろしさに触れることになるだろう。
 遺作はクリーチャーではない。幽霊でもない。力はある方だが、それでも常人の粋を超えていない。そんな遺作はまさしくホラーゲームに登場する敵として最適なほど恐ろしいキャラクターである


 遺作は人に罪悪感を埋め込ませ、それを左右し誘導する。人を意のままに操ることに長けている。その上、まだ操っていない相手に対しても心理の裏をつくことが得意だ。意表をつき姿を隠し、不意をつく。そして恐ろしく計画的で残忍だ。バッドエンド、旧校舎に閉じ込められた主人公らは身も心も遺作に陵辱されたあと、縛られ火を放たれる。燃え盛る旧校舎、遺作は証拠をすべて消し去り完全犯罪を成り立たせるのだ。
 周回したプレイヤーが謎を解いていくことで、遺作がどのようなトリックを用意してきたのかわかる。登場人物の中の一人が見事に遺作の罠にかかり、それにより誘導させられたことに気がつく。しかしそこまで謎を解いたところで、遺作の罠はまだ残っているのだ。そもそもこの旧校舎に閉じ込められた時点でほとんど遺作は勝利を確定していたも同然なのだから。



 このゲームの素晴らしいところは、遺作があくまで「人間」であることに重きを置いていながらもホラーとして恐怖を掻き立てることに成功していることだ。鬼畜を自称し、完全犯罪を犯し、人の心を操り、陵辱するのも、遺作があくまで醜悪な人間の範囲内で行われることだ。己の欲望のためならば犯罪を犯すことに躊躇がない。最後の最後まで丹念に描かれたその描写に、遺作はある種のダークヒーローのような見方も出来てしまう。人間の倫理観を捨てた人間はかくも恐ろしい存在に昇華することができるのだ。

 このゲームに銃はない。剣もない。霊を封じ込めるカメラもない。他のホラーゲームのような対抗手段が用意されてない。
 遺作はクリーチャーではない。だが恐ろしく機転の効く上、倫理のタガが外れている。そんな相手を倒す手段といえば……そう、こちらも機転を利かすのだ。なんの変哲もない、使い所もないようなアイテムを機転を利かすことにより、遺作はあっけなく首の骨を折って死ぬ。遺作はクリーチャーではないからだ。


 遺作の魔の手から逃れた主人公。しかしヒロインの一人でも遺作の毒牙にかかっていた場合はバッドエンドに進む。
 新学期、悪夢のような夏休みを終えた主人公の机に置かれていたのは、なんと旧校舎に呼び出しをうけたときと同じラブレターだった……。この悪夢から逃れるには、すべてのヒロインを助けなければならないのだ。真エンドを見なければ遺作から開放されたことにはならない。


 そして真エンドはヒロインの二人、どちらかと結ばれる展開となる。その幸せそうなヒロインと主人公の表情にようやくプレイヤーは安堵することができる。死してなお人を苦しめる遺作の悪夢を打ち倒すことができたのだから。


 真エンドを見たあとのプレイヤーは選ぶことができる。このゲームを完全に終了させることか。それとも、まだ遺作に捕まったことがないヒロインのビデオテープを見つけるため、バッドエンドを再度見るか。
 さて、このときのプレイヤーと遺作、どちらが「鬼畜」だろうか? …こういった問題に手を突っ込んだのが、次回作「臭作」である。

 このゲームには人間しか出てこない。そしてそれをプレイするのも人間なのだ。

これで全部だ -DS悪魔城ドラキュラ三部作レビュー-


 前回のレビューでGBA悪魔城ドラキュラ三部作を紹介したが、実はこの後、DS上においてもメトロイドヴァニア三部作が展開されている。私は今まで長らく三部作の最終作を未プレイでいたのだが、親愛なるフォロワーの好意によりついに三部作すべてをプレイすることができた。フォロワーの好意を返すために、ここに三部作のレビューを書き残すことにする。なお、「奪われた刻印」のみ自分で購入したものではない、借り物でのプレイであるため主観に若干の差異があるであろうことを、予めお伝えする。お含みおきを。


蒼月の十字架


 DSで初めて発売された悪魔城ドラキュラ。ストーリー的には前作暁月の円舞曲の続編に当たる。……の、はずなのだがなぜかキャラデザが大きく変わっている。前作は月下ベースの耽美的な絵柄だったのが、今作はアニメ塗りなやや低年齢層向けなキャラ絵。それはそれとしてオープニングは今の視点から見ると古さを感じさせる代物だが力が入った上にシステムをうまく解説しているものになっているので、ぜひ一度見て欲しい
 主人公は来須蒼真が続投、前作のエンディングでドラキュラの力を全て失ったはずの蒼真は、魔王復活を企む教団の動きを見つけ、再度自らの力を発揮し魔王復活を阻み、みずからの因縁に終止符を打つ…というもの。


 前作をプレイした人ならほとんど変わらないゲームプレイにスムースになじむことができるだろう。敵を倒すと低確率でその力(ソウル)を吸収することができ、アックスアーマーなら斧攻撃を、ゲーゴスならレーザー攻撃を、ブラックパンサーなら超高速ダッシュを習得できる。それらのソウルは装備で切り替えできるが、中盤に習得できるソウルでXボタンで装備をあらかじめセットした二種を瞬時に切り替えられるようになる。これにより「移動用」「戦闘用」といったセットの切り替え、「ソウル収集用」「経験値稼ぎ用」といった切り替えを容易に行うことが出来る。


 これらは前作を踏襲したものだが、DSへとプラットフォームを移したことで新規要素がいくつかある。
 特に大きなものが二画面を活用したマップとステータス画面の切り替えだ。DSの下画面部分がメイン画面となり、上には常時マップが表示されることになる。これを見ながらの探索がとにかく便利だ。道に迷うことが格段に少なくなり、次なる目的地へ最短距離で突き進められる。その上いつでもセレクトボタンで今戦っている敵ステータス画面と切り替え可能だ。このステータス画面で敵の弱点属性を把握することができ、かつ敵が落とすドロップアイテムやソウルも把握できるという便利機能。探索とアクションの両方をすすめるゲームとして、この切替はGBAであった前作と比較して圧倒的な優位になる。


 そしてもう一つは魔封陣である。ボス戦で一定以上のダメージを与えると画面がフラッシュし、そのまま下画面にタッチペンで魔封陣を一筆書きするようになる。ボスに適合した魔封陣を描くことで封印成功、ボスを倒したことになる。
 「ん? このシステムなんか意味あるのか?」と思った方、鋭い。この魔封陣システム、DSロンチの頃によくあった「とりあえずタッチペンを使ってみよう!」的システムで、これでなにかプレイヤー的に有利になるわけではないし、面白さがあるわけではない。強いて言えばマップ状の行き止まりとして機能している(たとえボスのいる部屋の手前にきても、対応している魔封陣を所持していないと戦うことが出来ない)くらいで、タッチペンをこんな風に使っても……。
  

 ただタッチペンの活用がすべてダメだったわけではない。道中の障害物をタッチペンで壊すことで先にすすめるようになっている仕掛けもあるのだが、全部壊してしまうと足場になるものもなくなってしまうので、適切に選んでタッチしていくことになる。これはなかなかよいギミックだと思う。跳ね返る玉を指定した場所においこんでタッチペンで破裂させるギミックもなかなか良かった。


 また前作もそうなのだが、コナミ特有の「複数同時描写による超巨大多関節敵キャラ」がとにかく見事だ。DSではできそうにないような下画面の1/4を占める巨大敵がぐりぐりとなめらかに動いて行く手を阻む。その種類も豊富なので見ていても楽しい。(なお、この同時描写技術は引き継がれラブプラスにつながっていく)


 全体的に前作からのパワーアップ版という今作だが、それゆえやはり「お目当てのソウルがとにかく出ない」という前作の悩みを引き継いでしまったという感が残ってしまった。また説明書もとにかく不親切で「STR:力 CON:肉体の強さ」などと教えてくれるが、具体的にどういう意味合いを保つのかはプレイをしてもなかなか分かりづらい(まさかLCKがソウル吸収確率に作用するとは思わなかった)。こうしたところに10年昔以上という年月を感じることができる。DS初期の作品であるがゆえ、こういった細かなところは目をつむって欲しい。


 そんな年月の長さを感じさせてしまうものの、それを差し引いても名作といっていいゲームである。良好なゲームバランス。迫力あるボス戦。ソウルの組み合わせで広がる戦略性。DSのゲームソフトなれど現在中古で高値安定してしまっているが、ぜひプレイしてもらいたい作品だ。




ギャラリー オブ ラビリンス


 前作、蒼月の十字架は続編ものであったが、今作は新キャラクターのジョナサン・モリスとシャーロット・オーリンが主人公であり歴代シリーズとの関連性はあまり強くない。一応メガドライブ版のバンパイアキラーの主人公ジョニー・モリスの息子がジョナサンだということが織り込まれているが、バンパイアキラーを未プレイの私でもスムースに世界観にのめり込めた。


 今作は、前作のソウル・装備切り替えの進化させたシステムが積まれている。ジョナサンとシャーロットはボタン一つで瞬時に入れ替わることが出来、さらにはパートナーのサブウェポン援護、パートナーとの同時攻撃、パートナーの肩に乗ってハイジャンプといった多彩なアクションを導入している。こうしたアクションの多様性は「それを活用しないと難局を突破できない」という選択肢の乏しさにつながる可能性もあるのだが、今作はそこまで難易度を上げておらず「駆使をすればより速く。そうでなくても突破自体はできる」という上手い具合の難易度調節が施されている。


 また今作は敵ドロップの他、とにかくあちこちに武器がスキルが落ちている。ジョナサンはあらゆる武器を使いこなせ、シャーロットは魔法のスペシャリストだ。槍や大剣を拾えばジョナサンが振るい、シャーロットは炎や氷の魔法をガンガン習得していく。そして二人が一致協力することで画面内外の敵を一層するスペシャル技も存在する。これがとにかく強力なので気持ちがいい。ボス戦でももちろん使えるが、インターバルが必要なので、これだけ連発してボスをやり過ごすことはできない(とはいってもサウザンドエッジをうまく当てるとなんとかなるボスも多いのだが)。
 前作と比較してみると、この仕様はうまくハマったと評価できる。前作のソウルはほとんど運任せだったのだが、今作は進行度に合わせて武器が手に入るためだ。それにあわせて熟練度というシステムがあり、ジョナサンのサブウェポンは切替可能だが使いこなすことで熟練度が溜まっていきより強くなる。初期から手に入る斧やちょうこうせきなどは最終盤でも頼りになる。


 画面のレイアウトでは大きなアップデートはなく相変わらずの快適な二画面サポートだ。上画面にはマップか、敵ステータスかのどちらかが常時表示されている。細かな点になるが、このゲームでは「絵の中に入る」という要素が組み込まれている。大マップのステージのあちこちに点在している絵の中には、中マップというべき別フロアがあるのだ。それら個別個別にまた中ボスが住んでいるのでそれを突破することになるのだが、これが探索というシステムとうまく組み込んでいる。

 前作蒼月の十字架は大マップ一つをワープ装置で移動していた。これはGBAシリーズからの恒例ではあるが、本作において別マップを用意したおかげで「迷わない探索」をすることがより可能になったのだ。大マップの他に細かな中マップを多数用意することで、どれがどこまでコンプリートしたのかをプレイヤーは簡単に把握することができる。前作まではどうしても「次にどこへ進むのか」を考える必要があったが、今作からは開放され、「とにかく次の中マップを探索する」ということに専念できるようになったのだ。また、絵のなかに入るというストーリーのため舞台は悪魔城に限らなくても良くなった。町中、砂漠、サーカス、学園と様々だ。ステージを進むことに絵柄がかわるのは見ていて飽きない(前作も一応舞台は悪魔城ではなかったのだが)。


 また今作もコナミサウンドらしくDSの限界を突破した音楽が盛りだくさんだ。ストーリー中、「聖なる鞭バンパイアキラーの封印を解くため過去の持ち主であるベルモンド一族の記憶と戦う」という展開が待ち構えているのだが、そのベルモンド一族とはスマブラにも参加したリヒター・ベルモンド! そしてその時流れる音楽は乾坤の血族! 原曲はCD録音だというのに、それに負けない良アレンジと良音質で対抗している。その他にも名曲・名アレンジがあふれんばかりにつまっている。なおスマブラSPに収録されている乾坤の血族アレンジは、原曲のアレンジではなく、このギャラリーオブラビリンス版のアレンジなのだ。是非一度耳を通して欲しい。


 今作はプレミアがついてしまっているため、ヤフーオークションでも定価超えしている(概ね8000円のようだ)。そのため「ぜひ買って欲しい」といえる状況ではないのだが、何かの機会で手に入れることができたら、それは幸運だ。プレミアソフトだからといって神棚に飾ることなく、ぜひゲームプレイを楽しんで欲しい。



奪われた刻印

 DS悪魔城の三部作最終作。ストーリーも相変わらず直接的な続編ではなくて、新主人公シャノアがドラキュラ復活阻止に動くもの。
 同一プラットフォームで同ジャンルとなる三回目となるため、マンネリ化を防ごうといろいろと試行錯誤した結果が見て取れる。今作は主人公一人だけでかつ記憶を失ってしまっている。自分の失われた記憶を探るため、自分の使命を果たすため、裏切り者になった兄弟子を追いかけるというストーリーが背景に進むのだが、なんと今回はワールドマップ採用で補給拠点となる街が存在する。街の住民も各地のダンジョンに掴まっているので彼らを開放し街の活気を取り戻しつつ、かつその住民たちのお悩みを解決する(クエスト)という多重構造になっている。クエストをクリアすることで店にならぶ商品の種類が増え、装備も増える。金が足りなくなってきた頃に大量の金が報酬として貰えるクエストがでてくる。このバランスの良さは見事だ。


 ワールドマップの思い切った採用もうまく作用している。一度クリアしたマップは出口からも戻れる仕様になっており、探索を容易にした上でサクサクと次に進める仕様となった。その上通常のワープポイントもあるのだから、狙った敵へのドロップが簡単になり、復活する宝箱の存在でダンジョン周回をしクエスト用素材を掘るようにもなった。(これは良し悪しかもしれない)
 ワールドマップで各地を回ったシャノアが特定条件を満たし、とあるボスを倒す。そうすると現れるのは悪魔城。自らの記憶も、使命も見失ったシャノアが悪魔城の前に立ち、そしてドラキュラを討つ決意を固め悪魔城に乗り込むと同時にシャノアのテーマが流れ出す。この演出はストーリーと音楽とも絡み合って本当に素晴らしい。


 独特のシステムとしてはRボタンでシャノアは魔力吸収することができる。普通は町の住民を開放したり新しい魔法を獲得するために使うのだが、敵が魔法を使う準備動作で魔法陣を描いている場合は、それを横取りして吸収することができる。新しいスキルが獲得できるうえ相手の攻撃も塞ぐことができる。この魔法陣の引っ張り具合はうまく描写されていてなかなか楽しい。


 またシャノアはすべてをMP消費して攻撃するキャラクターであり通常攻撃というものがない(前作のシャーロットをさらに極端にした感じだ)。そしてMP回復がシリーズ中ずば抜けて早い。そのため強力な魔法攻撃を連発して敵をなぎ倒して進む、ということが可能になっている。レベルアップや各所に隠されたHP/MP底上げのポーションを獲得することで、さらに上位の魔法を連発することができるようになる。
 

 しかし困ったことに、今作は良質なゲームシステムであるのに対して、ゲームバランスの調整はあまりにも高すぎる難易度に設定しすぎている。床に設置してあるダメージトラップに引っかかればHPの1/4はもっていかれ、敵の攻撃は不規則で読みにくいうえに大ダメージだ。毒にかかると攻撃力と防御力は大幅に減り(これはシリーズ恒例ではあるが、前作においてはキャラ切り替えがあるため致命的にはならなかった)、呪いにかかると一瞬でMPが0になるためシャノアは攻撃不能に陥る。しかも毒・呪いは敵に接触すれば確実になるため、アンチドーテ、アンチカースはいくらあっても足りない。回復薬やアンチドーテが比較的安いのが救いだが、これはむしろスタッフの「不慣れな人は治療薬ガンガン使って突破してくれ」という思いが透けて見えてしまう。


 ボス戦でも高難易度は続く。2画面分の巨体をふるうボスと戦うというシチュエーションは素晴らしいが、そのボスの攻撃方法はあまりに大胆すぎて避けようがない。しゃがんでも、スライディングしても、二段ジャンプしても体当たりを食らう。結局回復薬頼りの特効作戦に至る。
 最後のドラキュラ戦においては、攻撃の一部は「体力の1/5を削る上に秒間で5発食らう多段ヒット」というありさま。回復薬使う暇さえあたえられず食らったら即終わりだ。運よくメニューを開けて回復薬で全快しても、メニューを閉じた途端多段ヒットして終わる。攻撃を受けたあとの無敵時間という軟弱な救済措置はこのゲームにはないのだ。


 そのうえHP0がゼロになる場合、シャノアは悲鳴をあげて跳ね飛ばされ、画面が暗転しデスの姿が表示される。そしてコナミロゴが現れリスタートする場所は元のセーブポイントだ。そこから元のボス戦へ戻ってくるのに30秒以上かかる。この高難易度でゲームを作るのなら、リトライボタンを作るべきだった。おかげで異様なストレスのもと何度も何度も倒せない高難易度ボスに挑むことになる。ゲームオーバー回りの仕様は歴代シリーズおなじみではあるのだが、ワールドマップ採用までしたのだから、即リトライできるようにまでシステムを改善すべきであった。


 レスポンスが悪くゲームの流れがよどんだ結果、プレイヤーの印象がどう変化するか。これは「難しい」のではなく「理不尽」なのだ。私はクリアまで至ったが、それでも「結局あのボスはどうやって倒すのが正解だったのか?」と思うボスが多数いる状況。プレイしなおして再挑戦したいとは思わない。


 出荷量の問題だろうか、中古価格は高騰しており相場は11000円程度。借りてプレイをした者が言えたセリフではないのだが、とてもおすすめはできかねる。




 以上でDS悪魔城三部作のレビューを締める。DS悪魔城三部作は一時期値段が2000円にまで落ち込んでいて(蒼月の十字架においてはベスト版が二度も発売されていたくらい)、そのときに買えたプレイヤーと、そうではないプレイヤーとで主観にかなり相違が生まれるのではないだろうか。中古ソフト高騰には各種動画サイトのRTAやTAS動画人気があると思う。それで興味をもった視聴者が多く生まれたことは喜ばしい。なんとかして適正価格で正規のルートでゲームを配信できないものだろうか、とも思う。DSという独自プラットフォームがここにきて逆に障壁となってしまうことがなんとも皮肉だ。WiiUでDSソフトが配信されたとき一時期待したが、それもやはり応えられずに終わったようだ。

 何らかの形でこれらのゲームが広くプレイされる状況を願って、この記事を締める。長々とした記事を最後までお読みくださり誠にありがとうございました。

最も恐ろしい恋愛シミュレーションゲーム -臭作-

注意:このレビューは陵辱18禁エロゲーをレビューしています。そういったゲームに耐性がない方はレビューを読むことをおすすめしません。

 

 

 ときめきメモリアルというゲームがある。高校三年の間でパラメータを調整しつつ、特定のヒロインと学校生活を送り最後にヒロインからの告白を受けるという恋愛シミュレーションである。

 同級生というゲームがある。町のなかを移動しながら色々なヒロインと出会い、物語を進めながら関係性を深くし、最後に結ばれるゲームである。

  

  どちらのゲームも主人公の色が濃い・薄いという違いはあれど、プレイヤーは主人公を動かして、その主人公とヒロインとが結ばれるかどうかを遊ぶゲームだ。恋愛シミュレーションとは、操作している主人公とヒロインとが恋愛するのを眺めるゲームでもある。

 

 そんななか私は一つ、とんでもない恋愛シミュレーションが存在するのを上げることが出来る。18禁PCゲーム「臭作」である。

 

 

  ゲームシステムから解説しよう。臭作とは容姿最悪、人格は鬼畜のおやぢ、臭作がとある出来事で女子校の寮の管理人にすり替われたところから始まる。その寮に暮らすヒロインは8人。臭作は寮のあちらこちらに隠しカメラを設置し、ヒロインたちの弱みを握ろうとする。そして無事弱みを掴んだら、ヒロインたちに追い込みをかけ、そして自分に反抗できない状況に追いやりヒロインたちの体を貪る、というもの。

 

 ヒロインたちは2日間という日数、決まったスケジュールで動いている。夜は眠り、食事の後は入浴するし、時折トイレに向かう。それにあわせて管理人であるはずの臭作は食事の用意をし、風呂の準備をしなければならない。もしその手際が悪ければ、ヒロインたちはそれにあわせて独自に動くため、スケジュールに乱れが生じることになる。

 

 もし2日でヒロインたちを全員落とすことが出来なかった場合…臭作は雲隠れをすることになり女子寮を去るのだ。そしてここが肝心なのだが、去った先で暴走する車の事故に巻き込まれ、臭作は倒れる。血まみれになり地面に横たわった臭作は静かに笑う。

 

「こんなことぐれぇじゃよ。俺ぁ死なねぇよな……くくっ」

 

 逆回転する柱時計が映り、画面が切り替わるとそこはオープニング終了後の、ゲーム開始時の臭作が立っている場面からだ。そう、ここはタイムリープを繰り返す世界観。臭作が己の野望を貫徹させるまで、終わらない輪廻に入り込んだのだ。

 

 ヒロインたちのスケジュールは前回と同じだ。決まった時間にトイレに行き、風呂に入る。食事に媚薬を混ぜることもできるし、怪しい動きをしている女教師を人目のないところで捕らえることもできる。

 そうして各ヒロインの動きを周回プレイでどんどんと把握していき、それぞれの人間関係も捉え、心の支えになっているヒロインを先に落とすことで他のヒロインをより容易に落とすこともできる。

 

 そうして次々にヒロインを毒牙にかけ、エッチシーンを見ていると時折妙なことになることに気がつくかも知れない。

 普段はヒロインが臭作に犯されるところを見るCGが表示される。しかし回数を重ねることで、唐突に文章が一人称にかわり、画面も主観視点でヒロインが苦しむ顔のアップになったものを見るようになる。

 

 さらにループを重ねることで奇妙なことに気がつくことだろう。ヒロインの中に、どうやっても攻略が不可能そうなキャラが一人混じっている。高部絵里だ。

 このキャラはトイレにいくと必ずカメラが仕掛けられていないところに入り、食事に媚薬を混ぜると体調不良を言い訳に食事を取らず、風呂にカメラをセットしても死角に潜り込むという徹底ぶりを発揮する。

 どうやってもこのキャラの弱みを握ることはできない。それどころか、ちらちらとことあることに隠しカメラを見つめ、それに気がついているような素振りすら見せるのだ。

 

 プレイヤーがこのキャラを攻略不能と認定し、他のヒロインへ攻略の手を伸ばし、そして他の7人すべてを攻略し細かな条件を満たすと……異変が起きる。本来寮を去りそこで交通事故にあう臭作が管理人室に戻るのだ。そこにいるのは高部絵里。彼女は管理人室のPCを見つけ、そこで臭作が行ってきた非道な行為の証拠を見てしまう。その現場を見た臭作は彼女を壁に押し付け、強引に襲おうとする。そこで出てくるプレイヤーの選択肢は

 

 ●このまま臭作のしたいようにさせる

 ●電話の角に頭をぶつけて臭作を気絶させる

 ●もちろん何もせずにこのまま絵里を開放させる

 

 の3つである。この選択肢のうち下2つを選択すると、臭作はついにプレイヤーを認識する。「今まで俺にあれこれ指図していたのはお前だな?」と言い放つのだ。しかし臭作を気絶させることでプレイヤーは臭作とすり替わることができる。そう、Hシーンの中唐突に一人称が代わり主観視点になっていたのは、プレイヤー自身が実際に臭作の中に入っていたからだ。電話の角に頭をぶつけた臭作に変わり、プレイヤーが臭作の体を操作する。そして高部絵里は思わず言ってしまう。

 

「誰……?」

 

 しかし、すぐに別の声も聞こえてくる。

 

「いいからよぉ、そのまま続けて陵辱してやればいいんだ」

 

 間違いなく臭作の声。プレイヤーが背後を振り返ると、そこにはマウスを握り笑みを浮かべている臭作自身がいるのだった。

 

「驚いた顔をするなよ。俺とお前は一心同体なんだ。立場が入れ替わっても何もかわらねぇさ」

 

 臭作は煽る。目の前のメスを犯せと。にらめっこするためにこのゲームを買ったわけじゃないぞ、早くしろ、と。

 

 うろたえ続けたプレイヤーが結局何もできないのを見て臭作はいう。「慣らし運転も必要か」と。そしてゲームをリセットしてしまう。そして始まるいつもの周回は、プレイヤー自身が臭作役をやらされているのだった。何回も聞いたオープニングをこなし、出てくる選択画面。しかしそこに……高部絵里もいるのだった。

 プレイヤーの行動にいちいちついてくる高部絵里。これでは盗撮カメラをセットすることも、媚薬を仕込むこともできない。ただただプレイヤーは高部絵里と一緒の時間を過ごすことになる。

 

 苛立ち続けているのは操作している臭作のほうだ。高部絵里がいるせいで何もできない、ただ「おっさんと女子高生が並んでいる光景」を見せ続けられているだけだからだ。あの手この手でプレイヤーを操作し(変な日本語だ)高部絵里を離そうとする。しかし高部絵里は離れず、それどころか料理を手伝い、臭作の策略で怪我をしたプレイヤーを応急処置したりしてプレイヤーとの絆を深めていくのだ。

 

 2日間、他のヒロインに何を手出しすることもできず、ただ高部絵里と過ごしただけに終わろうとする周回。臭作はついに激怒する。そして彼が用意した選択肢、それはなんと

 

●高部絵里を陵辱する

●高部絵里を陵辱する

●高部絵里を陵辱する

●高部絵里を陵辱する

 

 という四択だった。選択後苦しみながら高部絵里を追い詰めるプレイヤー。必死の精神で臭作となった体を抑えつけようとするも、選択肢のまま体は高部絵里を壁に押し当て、体を寄せる。絵里は必死に声をあげるが、体はそのまま動き続ける。

 しかしそこで絵里は抵抗をやめる。まっすぐプレイヤーの目を見据えながら……「好きです」と自らの思いを告白するのだ。

 衝撃を受けるプレイヤーと臭作。臭作が臭作たらしめる要素、鬼畜。人に愛されることなんてあってはならない。自らのアイデンティティを否定され、臭作はディスプレイの前でもがき苦しみ、そして消えていく。

 開放された高部絵里は、臭作が消えた管理人室で「こちら」を見つめてくる。

 

「ようやく会えましたね」

 

 そう、高部絵里は画面を通じて、本当の「プレイヤー」に語りかけてくるのであった。そして映るのは画面に手をあてがう絵里の姿。このあとにエンディングが来てしまい、ゲームが終わることを理解している絵里は「手を重ねて欲しい」とお願いする。そしてその願いを「プレイヤー」は叶える。

 そしていままでやってきたこと、臭作の姿を借りヒロインたちを陵辱してしまったことに自問自答するプレイヤー。高部絵里は「貴方は悪い人じゃない」と慰め、そして消えていく。

 エンディングが始まる。スタッフロールの企画のところには「高部絵里」と「プレイヤーの本名」の名前が並んで表示されるのだった。

 

 

 

 以上が臭作における裏ルート・真のエンディングと呼ばれるものの内容である。陵辱エロゲーだと思って購入した人をぶち叩くメタ展開・純愛路線である。

 

 このゲームの恐ろしさは「マウスを握る臭作」の画面が、比喩でもなんでもないことだ。高部絵里と純愛を育んだといえ、その前のプレイヤーはまさしくヒロインたちを盗撮画像で脅し、弱みを握り、陵辱しようとしてこのゲームを購入しているのである。その性欲のおぞましさを臭作という鏡を写して見せつけたのである。

 裏ルートに入った場合、臭作が用意する選択肢は執拗に純愛ゲームから、元の陵辱エロゲーに引き戻そうとするものばかりだ。そしてそれを選択した途端、裏ルートは途中で終わり再び元のルートへと戻される。それを拒絶したプレイヤーだけが裏ルートの真エンディングを見ることができる。しかし、それを見ることができたプレイヤーは他の7人のヒロインを陵辱しているということなのだ。

 エンディング前のプレイヤーは自分のしでかしてしまったことの重さに苦しむ。その苦しみはリアルなもので、実際にこのゲームを行った「私」も高部絵里に感情移入してしまった分、ダイレクトにもがき苦しむことになる。高部絵里がゲームの枠を超えて干渉してきたということは、他のヒロインたちが皆それができた可能性も考えてしまうからだ。「このゲームには他のルートがあり、ヒロインたちが助けを求めているのではないか?」と考えてしまった場合、悶々と苦しみが続くことになる。「まさか純愛ゲームで終わるなんて意外だなぁ」とさくっと終わらせてくれるわけではない。

 

 このゲームは18才未満は購入することができないゲームだ。それ未満の年齢層には悪影響があるだろう、というゾーニングが敷かれている。しかしこのゲームはたとえ18才以上であろうとも関係なしに心を抉る展開が待ち構えている。そう、これこそ最も恐ろしい恋愛シュミレーションゲームだ。ゲームの登場人物とプレイヤーが障害を乗り越えた上で本当に恋愛することになるのだから。

ドラゴンクエスト ユアストーリーを見た感想

 注意:この記事は龍騎兵団ダンザルブとドラゴンクエストユアストーリーとゼルダの伝説夢をみる島他いろいろなゲームソフトのネタバレに踏み込んでいます。



 龍騎兵団ダンザルブ」という作品をご存知でしょうか。元はスーパーファミコンでユタカが発売、開発はパンドラボックスの近未来的世界観のRPGです。パンドラボックス……というとぴんとこないでしょうが、ようするに「四八」で悪名を高めてしまった飯島多紀哉氏が作り上げたRPGなのです。
 この龍騎兵団ダンザルブ、精鋭部隊ダンザルブ隊に配属された新人兵士マシューを主人公として、敵対するダマイア軍との戦争を乗り越えていくゲームなのですが、その終盤の展開はすさまじいものがありました。部隊内の裏切り者や、意図がわからなくなりだす上官からの作戦指令、そしてマシュー自身の出生の謎。それと並行してこの戦争のおかしさを指摘する謎の人物の登場となり、マシューたちは真実を探すようになりはじめます。
 そして判明する真実。実はダマイア軍の作戦指示を出している上官と、ダンザルブ隊の上官とが同一人物であることがわかります。戦争自体がニセものの戦争であり脚本通りであり、至るところに隠されていたカメラによって録画されていた動画は映画として、ドラマとして、リアルな戦争モノとして大人気作品となっているというもの。しかもそれが小説にもゲームにもなっている、と。
 この戦争を生み出し、マシューを戦わせていた張本人である上官を打倒し、開放されたマシュー。彼はゲームの支配下から逃れることができ、最後に隠しカメラに向かってこう言います。



  今、君はテレビを見ているのかい?
  もしテレビの出来事だと思って簡単に片付けたらそれはいつか現実になる…
  君達が戦争を遊びだと考えていたら知らないうちに戦争に参加することになるかもしれない…

  これから僕達は君達の世界に行くよ
  いつかどこかであえるかもしれないね…
  それが戦場でないことを祈って…



 このセリフでこのゲームは終わります。スタッフロールすらありません。ゲームの中のキャラクターが現実のプレイヤーに対して語りかけ、そしてそちらの世界に向かうことを示しながら、架空の世界は終わりを告げるのです。
 ゲームがゲーム自身の枠を超えて、現実に干渉する、プレイヤーに問いかけるという手法は珍しいものではありません。マザー2のラストバトルでは主人公ではなく「プレイヤー自身のねがい」が重要なポイントとして存在しますし、ゼルダの伝説夢をみる島においてのマリンの「わたしのこと、わすれないでね !」はリンクとゲームをプレイしているプレイヤー自身の、両方に向けていった言葉です。
 高機動幻想ガンパレード・マーチにおいても二週目をプレイしはじめると、穏やかで理知的だったはずの先生が「…OVERSか。私の生徒に寄生しているな。何の用だ」と明らかにコントローラーを持っているプレイヤー自身にむかっての質問をします。ここで選択肢を間違えると撃たれて即ゲームオーバーになりますが、「龍を倒しに来た」とその場には似つかわしくない返事を返すことでシナリオが進められます。ここから先生は「ゲーム内のキャラクターでありながら、プレイヤーの干渉を知覚し、かつ協力して真のエンディングを目指す」という路線をとることになります。

 ゲームは架空世界を作り上げるコンテンツです。作り手はいかにプレイヤーの感情を揺さぶるか、試行錯誤の歴史を積み重ねてきました。高機動幻想ガンパレード・マーチは2000年の発売で、その前述のダンザルブは1993年発売です。壁を乗り越えて現実にせまりくるメタ手法はこの頃からすでに萌芽していたのです。


 さて、ドラゴンクエスト ユアストーリーなのですが、ラスト10分からの展開が衝撃でした。今までの流れをすべて捨てた超展開です。私が衝撃を受けたのは「捨てただけで何も拾ってない」ということなのです。

 「実はこの世界はVRで、お前はただのプレイヤーだ」と言い張る流れ自体は構いません。そういう展開もありでしょう。しかしそれを言い張るウィルスを倒したのは、すでに用意されているロトの剣の姿をしたワクチンソフトなのです。ゲーム内のキャラでも、遊んでいるプレイヤー自身の努力でもありません。それでカタルシスが生まれるか、というと、まぁ全く生まれなかったとしかいいようがありません。本人の資質や歩んできた流れと無関係に用意されたアイテムで難局を打破して「お前こそ真の勇者だ」とはならないでしょう。これはドラゴンクエストなのですから。とってもラッキーマンだったら話は別ですが。


 「この世界は作り物だけど、俺は愛しているし絶対に守ってみせるんだ!」としてウィルスを自力で倒す展開なら、「私たちじゃあのウィルスを倒せない! でも唯一この世界の住民ではない貴方ならウィルスを倒せる! そして……その貴方を、私たちは助けることならできる!」みたいな仲間たちのバックアップが生まれる流れなら、カタルシスはあったんですよ。それを全くしていない。水たまりのように底の浅い展開だ、としか評価しようがないのです。


 ゲームという媒体のコンテンツは、いろいろなメタ表現に挑戦してきました。映画でも他の人が多数指摘しているようにいくらでも良質なメタ展開をしたコンテンツがあります。伊丹十三監督が「タンポポ」で映画館に座る男に「そっちも映画館なのね? そっちじゃ何食べてる?」と言わせたのが30年以上昔の話です。2019年、令和に入った時代に見せられるにしては、このユアストーリーはあまりに陳腐でしかないのです。これで「これは貴方の物語です」といわれても。


 1986年に発売された「たけしの挑戦状」ではエンディングを見たあとにさらに隠しメッセージがあります。それは「こんな ゲームに まじになっちゃって どうするの」というもの。……エンディングのスタッフロール後に「こんな えいがに まじになっちゃって どうするの」と流れてきたら、却って許せたかもしれませんね。この映画は捨て方も半端だったのかもしれません。

打倒アクトレイザー! SFC音源に立ち向かった者たち

まえがき

 以前、このようなツイートがありました。

 かの古代祐三氏はSFC初期の名作、アクトレイザーの音楽を担当したことでも有名です。そのアクトレイザーの衝撃は凄まじく、当時ファイナルファンタジーシリーズの音楽を担当し、業界内で高い地位を築いていた植松伸夫氏ですら「あれは業界内で事件だった」「当時では勝てなかった」と語るほどです。

 そんなアクトレイザーはどれほど音楽が優れていたのか、実際に聞いて比較してみましょう。まずはスーパーファミコンのロンチタイトルであるマリオワールドをお聞きください。

 
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 ファミコンとは段違いの音質・音源なのですが、今聞くとどことなく柔らかすぎる音楽のようにも思えます。

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 その発売の一週間後に発売されたサードパーティ製初のゲームソフト、ボンバザルではこのような音源です。マリオワールドのような柔らかい音を使い上手い具合にメロディを流しているのがわかります。ファミコン時代は使える音数も少なく、音質もさほど幅がなかったため、メロディラインで勝負をかけるという作風が広くとられましたが、上記二作はそのような流れを受け継いてるように感じられます。

 そしてその直後発売された、アクトレイザーの音源を実際にお聞きください。

 
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 今までのファミコンの延長線上にあるものではなく、全く新しいオーケストラ調で広がる音が繰り広げられるのがわかるかと思います。古代祐三氏もねとらぼのインタビューにて「音源のプログラミングに関しては当初からかなり高度なことをやっていましたので、音響的な面でこの迫力を超えられるものは数年は現れないだろう、と思っていましたね(笑)」「それまでFM音源ばかりやっていましたので、それでは実現が難しい、生々しいストリングスやドラムセットの音が鳴らせたときはとても興奮しました。当時のゲーム音楽の最先端であった、アーケードゲームでもここまでのスペックの音源は無かったかと思います」などと、自分の腕前を誇ると同時に、SFC音源のスペックの高さを褒め称えています。(余談になりますが、このSFC音源SPC700の開発者はかのプレイステーションの父、久夛良木健氏であり、PS1、PS2にはこのSFC音源の後継機が搭載されています)

 非常にハイスペックであるこの音源は、しかしながら「扱うのが難しい」という難点がありました。アクトレイザーはその成功例として有名ですが、では、失敗してしまった場合はどんな音になるのでしょうか? スーパーファミコン発売から半年たった頃に発売されたこのソフトの音楽をお聞きください。
 
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 イースⅢは他機種にて広く展開し、音楽に特に定評のあるタイトルです。ですがスーパーファミコン版はその音の力の抜け方に、逆の評価がついてしまったのです。なおファミコン版の同じ曲はこのような具合です。聴き比べていただくと、如何にSFC音源の扱いが難しかったか、想像できるかもしれません。

 そんな暴れ馬のようなスペックのSFC音源が、四年後鳴らした音色。光田康典氏がクロノトリガーで鳴らした音楽はアクトレイザーのそれをついに上回りました。

 
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 音の透明感と臨場感は、聞き飽きることも色褪せることもさせません。古代祐三氏が白旗を上げるのも無理はないでしょう。4年という月日でついにトップが入れ替わったのです。


 ……のですが、はたしてこの4年の間、他の作曲家は黙ってみていたのでしょうか? いえ、違います。彼らは己の力を振り絞り、全力でSFC音源へと立ち向かい、打倒アクトレイザーに燃えていたのです。
 今回の企画は、アクトレイザークロノトリガーの間で発売された、良質なサウンドを実装したスーパーファミコンソフトを紹介していくものです。それでは早速参りましょう!

カプコン

 
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 トップバッターはカプコンロックマンXです。「そっちがオーケストラならこっちはロックじゃ!」と言わんばかりの力強い音色をバリバリと奏でてくれています。
 このロックマンX、作曲陣は入社1-2年目の新人を中心に集めており、このオープニングステージの作曲者である山本節生氏は(このロックマンXの中の曲の半分を作曲担当)現在もカプコンに在籍しておられますが、作曲はせずにサウンドマネージャーとしてマネジメントを中心に行っているとのこと。
 ロックマンXについてはこのインタビューでいろいろと語っておられるのですが、ロックについての思い入れをガンガンと語って下さっています。(なお、関係ないですが当時のカプコンでは先輩がガンガンやめていき三年目で中堅になったという世知辛い状況になったことについても語っています)

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 カプコンといえばSFC時代、ストリートファイター2で大いに盛り上がった会社です。アーケードで発売されたスト2を、SFC上でほぼ完全再現したことで大ヒットを飛ばしました。音楽についてもほぼ同じ音を再現できております。
 なお、ストリートファイター2のメイン作曲者下村陽子氏がカプコンに在籍されていたのは93年までになります。その後、スクウェア(現スクウェア・エニックス)に移籍することになりますが、そこで彼女は……。

 

スクウェア

 
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 名作ライブ・ア・ライブの作曲を担当することになりました。光田康典氏以外の作曲家も存分に力を発揮できるスクウェアの自力の強さを伺えしれます。
 そんなスクウェア作品の中でもう一つ注目したいソフトがあります。

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 作曲者はすぎやまこういち。そう、ドラゴンクエストの作曲者であるすぎやまこういち氏は合併前のスクウェアでも作曲担当をしていたのです。……というか、この半熟英雄 ああっ、世界よ半熟なれ」は、すぎやまこういち氏が企画をスクウェアに持ち込んだことからスタートしたという逸話があるのです。ファミコン半熟英雄にハマったすぎやまこういち氏がスクウェアに続編を作ってくれ、と頼んだという。ドラゴンクエストの作曲担当も、もともと「森田和郎の将棋」のアンケートハガキをすぎやまこういち氏がエニックス社に出したことを発端としているので……どんだけゲームやってるんでしょうか、この方。
 ちなみに作曲者はすぎやまこういち氏ですが、サウンドプログラマーはなんと光田康典氏なのです。1992年の時点でその才能の片鱗を見せつけていたのでした。(もともと作曲志望で入社したのに作曲させてもらえない状態だったそうな)

 

富樫則彦編

 古代祐三すぎやまこういちといった方々はこのときにすでに知名度を有していました。下村陽子光田康典といった作曲家はこの時点から有名になりつつありました。彼らに対する知名度には一歩劣りますが、それでもこの時代から根強いファンがいた作曲家に富樫則彦氏がいます。
 
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 機動戦士ガンダムF91 フォーミュラー戦記0122」アクトレイザーから半年後、1991年7月に発売されたソフトです。力強いドラムとキラキラしたメロディが印象的で、ゲームとしての評価はそれほどでもないですが、音楽的な評価は反対に高評価を受けています。なお、私が当時プレイしたときには最終面に出撃した直後でフリーズをするようになり、クリアは不可能でした。修正ROMはあるんでしょうか…。

 
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 発売元が違いますが、このサンドラの大冒険は翌年の1992年、ガンダムF91フォーミュラー戦記0122と同じ開発会社ノバがつくりあげ、富樫氏がサウンドを担当したものです。ガンダムではまだ若干音数の少なさが気になるのですが、さすがに一年間という時間を与えられたあとは完成度を急激にあげてきたのがわかります。

 富樫氏は現在「nori」名義でJ-POPユニット「nj」を結成し、今も活動を続けています。公式サイトから飛べるページで視聴も可能なので是非聞いてみてください。


禎清宏編

 
 現代でも第一線で働いていて、かつ当時でも最前線にいた作曲家をもうひとりあげましょう。禎清宏氏はファミコン時代はコナミに所属し、ファミコン魂斗羅のBGM担当をしていた作曲家ですが、SFC時代はナツメに移籍し音楽を担当しています。

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 「反省ザル ジローくんの大冒険」はその気の抜けたタイトル(当時人気者だった猿のジローくんを主人公にしたパズル色強めのアクションゲームです)とは裏腹に、非常にスタイリッシュな音楽が評価されています。1991年の発売ですが、その後1993年に禎氏は独立、音楽作成専門会社「ピュアサウンドを設立し、他社からの音楽制作依頼を請け負っています。

www.puresound-net.co.jp

 今ではサモンナイト6」「幻影異聞録♯FE」「メタルマックス4といった有名コンシューマゲームの音楽に携わっています。なお、サウンドギャラリーにてサンプル曲を聞くことができますので、是非皆さん耳を通してみてください。


多和田吏編

 もうひとりピックアップしたい作曲家がいます。多和田吏氏はかつてジャレコに所属し、そのジャレコから独立したヘクトに移籍した作曲家です。ダンジョンマスターSFC版)、じゃじゃ丸の大冒険といった作品のサウンドを担当しておりましたが、93年に発売された「イーハトーヴォ物語」が彼の評価を急上昇させました。

 
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 その結果、なんとすぎやまこういち氏に才能を見出されドラゴンクエストシリーズサウンドデザインを担当し、ドラゴンクエスト6サウンドドライバ作成に携わることになったのです。その後は任天堂のセカンド会社ジニアス・ソノリティの設立に携わり、取締役に就任(2007年退任)。ポケモンコロシアムシリーズに携わることになったりと広く活動し、いまでもフリーとして活動しつづけている作曲家です。
 

崎元仁

 またこの時代にすでに活躍していた作曲家といえば、崎元仁氏も忘れてはならないでしょう。

 
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 伝説のオウガバトルは複数の作曲家との共同作品なのですが、この有名な「サンダー・おおえど・Aチームのマーチ」(いったいどういう曲名なんだ)崎元仁氏作曲です。
 また変わったところでは、版権モノのゲームである「スーパー・バック・トゥ・ザ・フューチャー2」の作曲を担当しています。

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 特徴的なバック・トゥ・ザ・フューチャーのあのテーマを見事にSFC音源に落とし込んでBGMに仕立てることに成功しています。この時期の崎元仁氏はフリーの作曲家として広く活動し、ドラゴンクエスト6やリメイク版3の編曲にも携わっていましたが、オウガバトルスタッフがスクウェアに移籍したことをきっかけにファイナルファンタジータクティクスに携わり、さらにはファイナルファンタジーⅫの作曲すべてを担当するにまで至り、つまりドラゴンクエストシリーズファイナルファンタジーシリーズの両方に関わった作曲家ということになります。
 現在ではアニメ音楽も手がける一流の作曲家として名高い地位に到達しています。



任天堂

 さて、ここで焦点を任天堂に戻しましょう。ロンチタイトルのマリオワールド以後、任天堂もいろいろなアプローチをSFC音源に仕掛けています。

 
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 有名所ではマザー2において(開発はHAL研究所であり、音楽もマザー1から引き続いて前作スタッフが作っていますが)、サンプリング音源を多用することで本来の性能を超えた音楽を再生することに成功しています。多様しすぎたその結果、総容量の三分の一が音源という状態だそうな。

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 またレア社が開発した「スーパードンキーコング」はその驚異的なグラフィックも評判になりましたが、同時にBGMも完成度の高さから当時から話題になっていました。
 これらは任天堂自身ではなく、あくまで関連会社のHAL研究所レア社が手掛けたものです。任天堂自身がつくった作品はマリオワールド他にスーパーメトロイドスターフォックスなどがあげられます。それらはその作品の世界観にあわせた独特な音源を作ることで作品の雰囲気を盛り上げることに成功しています。

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コナミ

 「世界観に合わせて音楽を作る」ということにおいて当時から比類ないレベルの高みに登っていたメーカーがあります。コナミです。後に音ゲーBEMANIブランドを展開することになるコナミは、すでにこの時から評価を確立していました。ファミコン時代ではゲームカセットの自社生産を許可されていたため、拡張音源を載せたりと好き放題にしていたコナミですが、SFCでもその力を存分に奮っています。

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 この「魍魎戦記MADARA2」はいわゆる「異世界へ迷い込んだ現代の少年の物語」なのですが、その異世界の世界観と、この民族音楽風BGMががっちりと組み合っていて浸れるようになっています。というか、当時このBGMをずっとテレビからかけ流しにして聞いていました。他にも名曲ぞろいでピックアップするのに悩みに悩んだので、他の曲も是非聞いてみてください。

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 その方向性とは真逆に突っ走ったソフトに魂斗羅スピリッツがあります。汗と弾丸で構成される暑苦しい画面、群がるエイリアン共を筋肉ムキムキの主人公たちがバリバリとマシンガンで吹き飛ばすゲームは、ノリのいいBGMでテンションをガンガンに上げにきます。このBGMが流れるステージでは主人公が無数に飛び交うミサイルの間を飛び回りながら超巨大航空戦艦をぶちのめしにいきます

ティム・フォリン編

 今までずっと国内メーカー・国内の作曲家を紹介して参りました。最後にここで海外からの最強の刺客を紹介しましょう。ティム・フォリン。15才でデビューしたという海外の作曲家は、NES「シルバーサーファー」のBGMを担当したことで知られています。8bitの限界を突破した音楽の手腕はSFCでも健在です。

 
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 ハーモニカの音色がハーモニカ!! この「PLOK!」というゲームはアクティビジョンから発売されたのですが、当時のアクティビジョンは日本国内では無名もいいところでした。「よくわからない海外のゲーム」という枠に収まってしまい、評価はされていなかった覚えがあります。なにせこのゲームの特集を読んだことがあるはずの私ですら「記憶にないことが記憶に残っている」という状態です。(ファミリーコンピューターマガジンで紹介されていたような…)当時、プレイしていないゲームのBGMを聞くのはほとんど不可能でした。私は紹介するゲームの中でこの作品だけはリアルタイムでプレイしたことがありません。その上プレイした話題ですら触れたことがないレベルですが、ネットの興隆とともに評価されてきた作品と思います。

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 その一方でリアルタイムでも日本で評価されたタイトルを一つあげられます。この「ロックンロールレーシング」ナムコから発売され、そこそこの知名度を持っていました。私も知人が持っていたので、当時プレイしたことがあります。聞き覚えのある音楽がアレンジ込みでスーパーファミコンから流れてきたことに驚きをうけました。当時すでにCD-ROM媒体による生演奏収録を実現したPCエンジンCD-ROM2が存在しましたが、それでも衝撃を広げることに成功しました。今もなお語り草になるほど、高評価タイトルです。なおゲーム自体もマリオカートを別方向に進化させたようなはちゃめちゃレースゲームで(ミサイルや地雷で敵車を粉砕できる)、とっても楽しいですよ。

おわりに

 アクトレイザーは音楽面で比類なき評価を受けた作品であり、クロノ・トリガーはそれを超えたと称されていい作品です。しかし、他にもいろんな作品がスーパーファミコンというプラットフォームにはありました。それらは今の時点で評価されているものもあれば、見逃されているものもあります。一度立ち止まっていろんな作品の音楽に触れてみてください。そこには、強敵に立ち向かいながらもどんな音を出そうか苦心した作曲家たちの血と汗が染み込んでいるのです。以上をもって、SFC音源に立ち向かった作品の紹介を終わります。皆様ここまで、お疲れ様でした。