平和的なブログ

ゲームとか。基本 https://twitter.com/AthlonvsK6_3  に居ます

反発心から見える作家性 -新桃太郎伝説-

 30年ほど前のかつて少年ジャンプの巻末ページには読者投稿ページがありました。様々なコーナーがあり読者は頭を捻っていろんなネタを競い合って投函し、編集者は何千枚とくるはがきを確認しながらキラリと光るものを拾い上げそれをまとめあげたのです。
 SNSがまだなくテレビが一方的な情報発信装置として圧倒的な力を誇っていた時代、読者のなかには読者であるだけで満足できずに発信しかえそうとする猛者が生まれてきたのです。
 そしてそんな中、こんなコーナーがありました。「評論家をぶっとばせ!」。テレビや雑誌にあふれる評論家を評論しかえしてやろう、というもの。「お前は偉そうにゴタゴタいうけれどどんだけ詳しいんだよ!? お前がやれよ!」的なでした。当時盛り上がっていたファミコンブームの中で、「ファミコン評論家」というものが現れはじめたのです。……が、この時はまだ評論家をぶっとばせ!コーナー内でファイナルファンタジーを持ち上げて、ドラゴンクエストを落とせば通ぶれると思っている」などと読者から指摘されてしまうほどのものでした。つまり、あんまりゲームに詳しくない人がゲーム評論家を名乗ってそれっぽいことを言っていて、それにたいしてみんなが内心不満を持っていた…なんて状況だったわけです。
 「いったいなぜ桃太郎伝説の記事にそんなこと言いだすんだ?」と思う人が出始めるだろう頃なので、話を本題にもっていきましょう。今回の記事は「新桃太郎伝説の話です。


 桃太郎伝説? 桃太郎電鉄じゃなくて?」と思う人もいるかもしれません。桃太郎伝説とはドラゴンクエスト1が売れ、日本でJRPGというものが芽生え始めた頃、ハドソンによって発売された日本の昔話をベースにしたファミリーコンピュータRPGです。桃太郎電鉄のほうはこの後にスピンオフのテーブルゲームとして生まれたんですね。
 桃太郎伝説は桃太郎が主人公で、人に迷惑をかける鬼たちをこらしめるために旅をし、鬼と1対1で戦い進む、まさしくドラゴンクエスト1そっくりな代物なのですが、特色としてはコメディチックでギャグが詰め込まれていて、かつ世界観が和風でおおらかで適当といったものです。たとえば敵は「あかオニ」「あおオニ」といったオーソドックスなものから「べんきょうのおに」「またあおオニ(またあおオニ、といって逃げ出すことがある)」といった適当なものが混ざっていたり、「ジャキチェーン」という連続攻撃が得意な敵がいたり、道中で話しかけてヒントをもらえるキャラがお地蔵様だったり、オープニングで桃を食べようとするおじいさんがナイフとフォークを握っていたり、畑のなかにう〇ちにしか見えないキャラがいて話しかけると「ぼくはう〇ちだよ!ぷりっ!」というセリフが聞けたりと…。
 こんな感じで一風変わった世界のRPGはヒット作になりました。その後PCエンジンにて移植が行われ「桃太郎伝説ターボ」として発売され、そして直接の続編である「桃太郎伝説2」がPCエンジンにて発売されました。こちらもほんわかといて適当な世界観にパーティバトルへと進化したバトルが搭載された本格的なRPGです。PCエンジンの力を存分に振るい最大20人パーティが組め(といってもそのうち直接戦闘でコマンド入力するのは四人だけで、最大時でもお助けキャラのお地蔵様が10人分、ただのお荷物キャラのう〇ちが3人分なのですが!)、イベントを多数組み込んだ正統派なパワーアップ作品となっております。
 PCエンジンではほかに、コメディタッチで初心者でもクリアできるように調整されたイージーモードを搭載している(当時は結構珍しかったんですよ)桃太郎活劇が発売されています。

 こんな風に桃太郎作品は広く展開されていたわけですが、どれも世界観が独特で、コメディタッチです。ただし根本が「愛と正義」であったため、オニたちはあくまで「こらしめる」であり、死を忌避していたり、改心したオニと村人が一緒に祭りを楽しむさまが描写されていたり、ただふざけるのではなくて締めるところはきちんと締めて真面目にゲームをプレイする子供たちに楽しんでもらおうと思える真摯な姿勢が見れるのです。

 2の後にさらに続編である桃太郎伝説外伝」をはさみ、スーパーファミコンにて初めて桃太郎伝説が展開されたのが今回紹介する「新桃太郎伝説となります。この新桃太郎伝説、話としては1の続編に位置付けられていて、いわば2のリメイク作品になっています。そしてこの作品、桃太郎ファンにとって結構な衝撃をもたらしたものでありました。

 その理由は、作風がいままでのものと違っていたからです。たしかに表面上は今まで桃太郎シリーズとおなじように、昔話ベースで鬼たちと戦いこらしめるものです。しかしそこで展開するのは、シリアスで重厚なストーリー。かつて桃太郎と戦い愛と勇気を知ったエンマ大王は地下に囚われ、鬼の世界を統括するバサラ王が人の世界をも征服しようとダイダ王子を送りつけてきました。異変に気が付き桃太郎もダイダ王子と戦いますが、手も足も出ず敗北。そして今まで持っていた力と技もすべて吹き飛ばされてしまい、いわゆるレベル1の状態に戻されてしまうのです。おじいさんとおばあさんの住む家で寝込んでいた桃太郎が目を覚まし、そんな状態でも再度鬼退治の旅にでる……というもの。各地をめぐり鬼の支配から村を開放し、仲間を集めていくという流れになるのですが、その各地の鬼のやることが笑えないものになっています。
 花咲の村では桜の木は焼かれてしまっているし、金太郎の住む村では子供たちが檻に閉じ込められ、その檻に巨大な岩が今まさに落ちようとしているところを必死に金太郎が一人で岩を支えてこらえているという状態。そんな悪行がシャレにならないレベルの中で特に残忍さ・狡猾さが目立つ鬼がいます。それが初期からお邪魔キャラとしてイベントごとに顔をだしている「カルラ」です。

 カルラはいたるところで桃太郎の邪魔をするのですが、それがえげつない。桃太郎にやられ改心した部下の鬼を殺してしまうのは当たり前、村に毒の雨を降らせて大量虐殺、人魚も大量虐殺(その血のためか人魚たちが住む村に入ると画面が赤く染まる)、そしてライバルキャラであったダイダ王子も殺害し、しかもしかもそれらをすべて桃太郎になすりつけて出世の糧にしているというもの。最終的にはバサラ王を亡き者にし、その後釜を狙おうと暗躍しています。その野望は結局叶うことはないのですが、なんとカルラはヒロインかぐや姫を殺し、世界を崩壊させてしまうのです! 
 わずかに残った大地に生き残った人々が集まり、改心した鬼たちが一生懸命人を救おうとし、鬼ヶ島から食料を持ち出してはいるものの多くの人たちが死んでしまった…。一刻もはやくカルラを、バサラ王を止めなければならい。桃太郎と仲間たちはカルラたちがいる地獄へと向かうのでした。
 
 バサラ王を改心させ、カルラを打倒し、かぐや姫も復活し崩壊した大地も蘇る。これから人と鬼とが手を取り合い、新しい国を作らなければならないのだ……! エンディングはこういうものです。なんと、甦ったのはあくまでかぐや姫と大地であり、死んでしまった人たちや鬼はそのままという状態なのです。死を忌避していた桃太郎シリーズではありえない、といっていいのではないのでしょうか。


 開発期間がわずか4ヶ月ということもあり、ゲームバランスや一部の処理の重さに甘さが残っていて、そこが評価の減点対象となっているものの、全体を見ると「ハードで重厚なストーリーに豊富な仲間の個性が光る」という点が評価され、名作と呼ばれる扱いを受けている作品なのではないか、と言っていいと思います。

 さて、ここまで読んでいただいて皆様には「なんで新桃太郎伝説はこんなにハードなストーリーになったの?」という疑問が浮かんだかと思います。それを明確に語ったインタビューを私は見つけることができませんでしたが、いくつか思い当たる節がなくはないのです。それを今からご説明いたします。

 はるか昔、新桃太郎伝説が発売される前「ハドソン魔境」というアンソロジーコミックがありました。桃太郎伝説PC原人天外魔境といったハドソンの主力IPをもとにした主に4コマ漫画を中心にしたコミックです。その中に桃太郎シリーズの作者であるさくまあきらや、後にサクラ大戦をつくる広井王子桃鉄のびんぼうがみのモデルとなった榎本一夫らが集まったインタビューが収録されています。(申し訳ないのですが、すでに現物はなく、かなり昔に読んだ記憶を元に記述をしています)
 インタビューの内容は結構開発の現場に踏み込んだもので、ハドソンの社風が「上司に開発の相談しにいったら返事が『やれば?』だった」ですとか「スーパー桃太郎電鉄Ⅱでショック死する人が出るかもしれないから、そのとき新聞で答える内容は考えてある」というものが語られています。その中にこんな記述がありました。
 それはさくまあきら「評論家に腹がたっている」と答えているものです。
 桃太郎シリーズやPC原人はコミカルな雰囲気でゲームに不慣れな子供でもとっつきやすいように調整されています。そのうえでやりごたえがあるように難易度を設定していたはず……なのですが、当時のゲーム評論家に『大人向けではない』と批判されていたことを話していました。そしてその上でさくまあきら「こっちはお子様ランチをつくっているのに、なんでフランス料理じゃないんだって因縁をつけられたようなもの」と語っています。他には桃太郎伝説2の、前述の20人パーティに触れられて『さすがに20人もいると感情移入できない』という評論を見て「やってないなら書くなよ!」と怒った件にも触れています。
 お気づきの方もいるかもしれませんが、ジャンプ放送局「評論家をぶっとばせ!」コーナーが作られたのは、まさしくこういう事情があったからです。さくまあきらは当時の編集員でした。その事にもインタビュー内で触れており「相当な反響があった」と答え、「みんな評論家に対して思うことがあったんだね」、と振り返っています。


 私の想像ですが、結局さくまあきら「評論家をぶっとばせ!」コーナーだけでは溜飲が下がらなかったのではないでしょうか?
 「俺の作っているものはお子様ランチだ!」と言い放った、その上で「俺はフランス料理もつくれるんだぞ!」という反発心。それの結晶が新桃太郎伝説なのではないでしょうか? 新規ipとして新たに大人向けをつくるわけではなく、今まで桃太郎シリーズに触れてきて成長してきた子に対しての大人向けを意識した作品を提供することで、自らの作家性を誇示した……そう思えてならないのです。初代桃太郎伝説ファミコンで発売されたのが87年、新桃太郎伝説の発売が93年です。う○こで喜んでいた小学生低学年が、中学生になるほどの時間がありました。さくまあきらは、その中学生以上の層がこの新桃太郎伝説をストレートに受け止めることができると信じて、イメージチェンジを図ったのではないでしょうか。
 ジャンプ放送局の編集を行い、読者からの意見を吸い上げることに長けていたさくまあきらだからこそ、それを把握することが可能だったのではないのでしょうか。


 新桃太郎伝説の発売から25年が経ちました。作者であるさくまあきらは、2016年に桃太郎電鉄新作をリリースしてから以後、新作の話を出すことはありません。そして今年1月1日に心筋梗塞で緊急入院となりました。現在、退院し無事な姿を見せています。次なる作品は、難しいかもしれません。
 かつて8bit、16bitのゲーム機において子供たちの心を魅了し、そして衝撃を与えたゲームクリエイターさくまあきら。彼が心血注いだ作品である「桃太郎伝説」シリーズを是非プレイしてみてください。

 そしてさくまあきらさんは、お体に気をつけ養生をしてください。私は、あなたが喜びと楽しさと衝撃を与えることに成功した子供の中の一人なのですから。

竜退治の先にあったドラゴンクエスト -メタルマックス2-

注意! このレビューではメタルマックスシリーズと、ドラゴンクエストシリーズのネタバレを多分に含んでいます。

 

はじめに -メタルマックスとは-

 かつてのファミコン時代『竜退治はもう飽きた』というキャッチコピーで売り出せたゲームがありました。今のゲームを振り返ってみると、ハンターは竜退治をし、竜を倒す冒険のナンバリングは11を迎え、吹き出る温水に乗って雪山の山頂付近に着地し秘境を見つけた後には名を冠するドラゴンが舞い降りてくるのです。

 

 ようするにみんな竜退治が大好きなのです。これはどうしようもありません。王道は褪せることがないからこそ王道なのです。しかし同時に、それに対して刃向かってしまいたくなるのも、これも人の性か、と神がいうほどありふれた行為でもあるのです。

 

 話をもどしましょう。『竜退治はもう飽きた』と銘打ったゲームは『メタルマックス』。文明が崩壊し、荒れ果てた荒野に賞金首モンスターを狩るためハンターたちが戦車に乗り込み疾走する……そんな近未来と西部劇が合体したような、火薬と鉄の匂いが似合う一風違う世界観のRPGは、ファミコン時代後期、剣と魔法の世界観のゲームがボコボコと溢れた後に登場しました。

 

 刺激的なキャッチコピーは明確にこのゲームがアンチ・ドラゴンクエストであると示しています。しかし同時にこのゲームは『自分たちなりのドラゴンクエストを作ってやろう!』という気概に溢れた作品でもありました。なぜなら、これを作った人たちは元々ドラゴンクエストを作ったスタッフだったのですから。

 

 詳細はこのインタビューにて語られているので是非読んで頂きたいのですが、メタルマックスの主要スタッフはかつてドラゴンクエストの1から3までの開発に参加していたことがあったのです。

 しかしシナリオライター堀井雄二との方向性との違いにより彼らは独立、そして己のセンスを注ぎ込んだメタルマックスを作り上げることになりました。

 

 根強いファンが出来、舞台をスーパーファミコンに移し改めて作り上げたのが今回紹介するソフトメタルマックス2になります。高品質なグラフィックのみならず、進化とお遊びをふんだんに取り入れた上にゲームバランスも素晴らしくよくできているという出来栄えです。 前作の反省点を活かし、短所を潰し長所を伸ばした結果といえるでしょう。

 

 さてこのメタルマックス2ですが、このソフトは如何にドラゴンクエストと違うのか、そして如何に根源が同じなのか、というところに重みを置いて、ドラゴンクエストとの比較を行いながらレビューを行いたいと思います。

 

 

魔王という発明品 -目的の明示-

 

 ドラゴンクエストにおいて(というか多数の中世ファンタジーRPGにおいて)、旅に出る理由付けは「魔王退治」であります。1作目は竜王が、2作目は大神官ハーゴンが、3作目にはバラモスが「理由を抜きにして魔物を引き連れ人間たちを襲ってくるので、倒さねばならない理解不能な相手」として存在する状況に追いやられています。これはプレイヤーにとって非常に説明しやすく、また感情移入しやすい状況に最短距離で持っていく発明といえるでしょう(発明したのはドラゴンクエストではないでしょうが)。

 

 しかしメタルマックスは中世ファンタジーRPGではありません。近未来の世界に魔王はいないのです。しかしモンスターや賞金首は出さねばなりません。

 

 これを解決したのが「スーパーコンピュータ・ノア」です。かつての人類が作り上げた地球環境の汚染を救済するための打開策を見出すための超AI。しかしノアは「人類がいるかぎり地球の環境汚染は改善されない」という答えを出してしまい、文明を滅ぼすために各地にミサイルを打ち込み、文明を破壊したあともモンスターや自律殺戮兵器を生み続け、人類の滅亡を企み続ける存在。メタルマックス1のラスボスはこの超AIとなりました。メタルマックス1は魔王退治ではなく、ノアを打倒し世界を救うハンターの話なのです。

 

 ちなみにメタルマックス1の主人公はただの修理屋の倅だったのですが、ゲーム開始直後に父親にモンスターハンターになるんだ!」と啖呵を切ってしまったために勘当され、流れ流されてハンターになるという物語展開を迎えています。それが最終的には世界を救うハンターとなった……という面白みがあるんですね。

 

 さて、今作メタルマックス2「魔王役」はどうなったのでしょうか。1と2は世界観が非常に似通っていますが、共通と明言されていません。ノアを続投させても良かったのでしょうが、今作では「バイアス・グラップラーという組織が主人公を旅に向かわせる敵として確立しています。

 

 主人公はまだ半人前のハンター。幼い頃に孤児だった彼を拾い育ててきた女ソルジャー、マリアは彼を連れて依頼を受けたマドの町へとやってきます。この町はバイアス・グラップラーと呼ばれる人間狩り集団に狙われていて、それを守るためにマリア他、名うての用心棒たちが集まり迎え撃った……という導入からゲームは始まります。

 やがて人間狩りははじまり、グラップラーたちが町を襲撃するのですが、それをマリアや用心棒たちが軽く一蹴します。しかしグラップラー四天王」の一人である「テッド・ブロイラー」が姿を表わし圧倒的なパワーで用心棒たちを焼き尽くします。残ったのはマリアと主人公のみ。マリアは最後の最後まで主人公をかばい続けるのですが、やがて事切れ主人公も炎の中に焼かれていきます……。

 

 主人公が目を覚ますと、そこはベッドの上。主人公は酷い火傷を負っていたものの、唯一生き残っていたのでした。マドの町の人たちもその大勢を人間狩りで攫われてしまったものの、隠れて生き延びた人たちがいたのです。そのうちの一人の少女が主人公を助けてくれたのでした。

 動けるようになった主人公はバイアス・グラップラーに、テッド・ブロイラーに復讐するために旅立つことを決めたのでした……。

 

 このような導入部を迎え、ゲームは始まります。どことなく、ドラゴンクエスト4の第5章を彷彿とする展開(主人公が隠れ住む山奥の村に、魔王が魔物を引き連れ襲ってきて、幼馴染の少女の犠牲の上に主人公が唯一助かる)ではありませんか? 村が焼かれる、大事な人を失う、といったイベントから物語が始まるのは王道です。メタルマックス2においては「文明崩壊後という特殊な世界観」「倒すべき敵の明示」「主人公への感情移入」といった複数の宿題を、この王道イベントを通すことで一気にやり遂げたのです。まさしくこれこそ「自分たちなりのドラゴンクエストではないでしょうか。

 メタルマックスの主要スタッフはあくまでドラゴンクエスト1-3までのスタッフであり、4以降は関わっていません。それなのに似たイベントで始まるのに面白さを感じませんか?

 

目的地の指示と、探索の報酬

 

 さて、そんな劇的なスタートを切った導入部が終わり、いよいよ旅をすることが可能になりましたが、実はメタルマックス2においては「どこどこへいけ」「何々をしろ」と明確に指示させることはそこまで多くはありません。いわゆるフリーシナリオに近く、重要な箇所でのイベントを除けば多数がスキップ可能です。16体いるうちの賞金首モンスターのうち、倒さねばならない敵はわずか5体で、その他で倒さねばならない中ボスは数体です。 

 

 序盤で貰えるヒントも「主人公を助けた女の子のおじいさんがエルニニョの町へ言った」「エルニニョの町は東の砂漠を超えたところにある」「エルニニョの町は今グラップラーが支配していてやばいことになってる」くらいで、危険さを匂わせつつも主人公にはっきりとは「そこへいけ」とは言いません。直接的な指示を忌避するのはドラゴンクエストでも同じです。

 

 メタルマックス2の面白いところはそれに付属して「探索の楽しみ」も感じられるようなマップデザインを施してあるところにあります。エルニニョの町は東にあります。では、西にいくとどうなるのでしょうか? すると山脈の行き止まりの手前に一軒家があり、そこには飲んだくれの男が住んでいました。話しかけると、「エルニニョの町は反対方向だ」と教えてくれます。そして家から出ようとすると、その男が「どうして妻は出ていってしまったんだよぉ」と泣く声が聞こえてくるイベントが発生します。……ストーリーとは直接的に絡むことではありませんが、つまりプレイヤーに対して「目的地は逆だけど、この世界にはこういう風にいろんなところにいろんなイベントがあるんだよ。是非探してみてね」というメッセージを送っているのです。

 

 では素直にエルニニョの町を探して東に行った場合はどうなるでしょうか? 東にいくと、谷間にある小さな施設を発見しました。そこは名もない酒場。補給することと、エルニニョの町の情報を得ることができました。

 今度は北に砂漠を超えることで、ついにエルニニョの町を見つけることができるのですが、その町は破壊されたビル群の中にぽつんとあるのです。この世界が文明崩壊後にあることを改めて確認できるようになっています。

 

 このゲームの主人公は、最初の時点で未完成のマップを有しています。移動のたびにマップがアンロックされていってどんどん詳細になっていくようになっているわけですが、「探索すればかならず何かがある」というデザインと絡み、隅々まで探してやろう! という気にさせてくれるものに仕上がっています。

 物悲しいストーリーが背景で流れていたとしても、探索はプレイヤーにとって楽しいものでなくてはならない。これはドラゴンクエストとの共通点ですね。

 

ドラゴンクエストがやらなかった「探索」と金属探知機

  

  さて、そんな共通点があるメタルマックス2ですが、明確にドラゴンクエストにはなかった要素が存在します。それは「フィールド上にアイテムが落ちている」ということです。PS2時代に進み、3Dフィールドを実装したドラゴンクエスト8ではフィールド上の宝箱が実装されていますが、この時代のドラゴンクエストには「フィールド上を調べても落ちているアイテムは存在しない」というのがありました。これは仕様としては当然かもしれません。一マスごとに移動して「しらべる」を繰り返すのはさすがに労力です。かわりに(4以降は)町や洞窟のなかで、あやしげな場所にちいさなメダルがおかれているようになりました。

 

 メタルマックス2においてはダンジョンや町の中に宝箱変わりの「木箱」がおかれているのですが、そのほかに普通にフィールド上に強力な武器・アイテムがおかれています。そしてその場所はノーヒントです。これでは場所を探すだけで大変な労力なのでは? 

 これをメタルマックス2は金属探知機というアイテムで一気に解決に導きました。中盤のイベントで手に入れるこのアイテムは、使用すると主人公の周囲を自動で探し、怪しいところを見つけ出してくれます。そして同時に「このイベントだけではなく、フィールドのあちらこちらにアイテムが落ちている」ことも教えてくれます。

 

 そうなるとどうでしょうか? 今まで歩いてきたフィールドも戻って金属探知機で探してみたくなりませんか? するとなんと、本当に強力なアイテムがあちらこちらに落ちていることに気が付くのです! 進みすぎて時代遅れになってしまった武器も、売り飛ばして改造費用にすることが可能です。今まで何の気なしに進んでいたフィールドが一転し、宝箱に変わったのです。探索済みの場所を再度探索する喜びを、プレイヤーに与えることに成功しているんですね。

 

 ドラゴンクエスト1において、ロトのつるぎ竜王の城の最深部ではなく、途中に置かれている理由はご存知でしょうか? それは強い武器を存分に味わってもらうため、なのです。最深部においてしまっては、それを味わい切る前にラスボスである竜王との戦いに赴いてしまうわけです。

 メタルマックス2のフィールド上に置かれた強力なアイテムは、まさしくこれに相当します。探索で手に入れた装備は、強い敵、次なる賞金首モンスターに効果的なダメージを与えることができ、思う存分その強さに酔いしれることが出来ます。

 

 ドラゴンクエストはあえてしなかったことを、メタルマックス2は金属探知機というアイデアで乗り越えて実装し、成功したといえるでしょう。(なお、ドラゴンクエスト6以降はレミラーマという呪文が追加され、「アイテムがある場所を光らせる」というアイデアを実装しています)

 

旅は辞めることができる。しかし辞めることは出来ない

 

 メタルマックスシリーズの恒例イベントですが、ラスボスを撃破する以外にエンディングを迎えることが可能です。それは結婚し、ハンターを引退するというものです。メタルマックス2でも命の恩人である娘と結婚し、「引退しその後も慎まやかだが幸せな生活を送った」というエンディングを見ることが中盤以降ならいつでも可能なのです。プレイヤーはつまり、ラスボス撃破以外の好きなタイミングで己の物語にピリオドを撃つことができる権利を与えられているのです。

 

 メタルマックス2の巧妙なところはそのような選択肢を上げておきながら、決してプレイヤーに引退エンドで終わらせて満足させようとはしないストーリー展開を繰り広げることです。

 主人公の目的はマリアの敵、テッド・ブロイラーを倒すことにあります。その旅の中で仲間に出会い、戦車を手に入れ、強くなり、次第に敵組織グラップラーの存在理由を知っていくこととなります。

 

 文明が崩壊する前、一人の天才科学者が己の難病に絶望し、研究所の一室にこもりっきりになった。己の病気を、なんとかして治すために。死から逃れるために。しかしその後文明崩壊の日が訪れ、研究所と共に埋もれて姿を消した……。しかし彼はその意識をスーパーコンピュータに移植することに成功していたのです。そのコンピュータは己が破壊されること、つまり死を恐れました。そのためコンピュータの現状維持と、防衛システムの再構築、さらなる究極生命体の創造……。各地で暴れていた賞金首モンスターは、このコンピュータが作り出したものでした。そしてグラップラーは、実験を続けるための生体細胞を手に入れるために人間狩りを行うために作られた私設武装集団だったのです。

 

 そんな真実を知った主人公とプレイヤーは、はたしてテッド・ブロイラーを倒したあとでも「ああ仇が打ててよかった。ここで旅を終えよう」と区切り、戻って引退することができるでしょうか? 各地で人間狩りの被害にあい、グラップラーたちに支配され、賞金首モンスターから逃れる人々を今まで散々見てきたのです。主人公はセリフを一言も発することはありません。しかしプレイヤーの意図を汲み行動することができます。彼はプレイヤーの操作のまま、銃を取り、戦車を駆り、暴走するコンピュータへと立ち向かうのです。好きなタイミングで引退することができるという要素を組み込んでおきながら、ラスボスを倒しにいく動線はしっかりと組み込んであるのです。ここで引くことは、ありえないのです。

 

 プレイヤーと主人公の一体化は、ドラゴンクエスト3の終盤でも行われました。父オルテガが生きていたという衝撃の事実。しかしオルテガは息子を息子と認識する前に倒れて事切れてしまいます。その仇となるモンスターを倒したあとも、そのままプレイヤーは奥に進み魔王を倒そうとするのです。そう、暴走するコンピュータ、「バイアス=ブラド」は、まさしくメタルマックス世界の魔王として君臨することに成功したのです。

 

魔王としての存在、バイアス=ブラド

 

 すこしばかりラスボスのバイアス=ブラドについて語りましょう。これが天才科学者の意識を移植したスーパーコンピュータであることは先に述べました。それではその元になった天才科学者ブラド博士のことを補足したいと思います。

 

 生前のブラド博士がどんな人物だったのかは、各地で断片的に語られています。実業家でもあり、世界有数の巨大企業ブラド=コングロマリットの社長であったと。地球の環境汚染にも心を痛めており、化学の力でそれをなんとかしようとした理想家の面もあったと言われています。

 そんな善良な面が強いブラド博士も、難病により人が変わってしまいました。その後の運命は上で語られたとおりです。

 

 しかしメタルマックス2において、とある別荘地に行くことで少し違った視点を得ることができるのです。テニスコートとプールが整備されている保養地のそこは、文明崩壊した今では食用アメーバの養殖池と、ただで旅人を寝泊まりさせている施設になりました。なぜただなのか、というと……そこに幽霊がでるからです。

 

 事実、テニスコートにいくと老人と若い娘がテニスをしている幻覚を見ることができ(近づくと消えて、ボールの音だけが響き続ける)、別荘の中に入って部屋を見回すと老人と若い娘がベッドで寝ているのが見え、話しかけると骸骨と化したあと消えていく……という現象に遭遇します。

 

 そこの作業員たちに話を聞くと、この別荘地がブラド博士のものだったということがわかります。つまり、この亡霊の老人こそがブラド博士なのでしょう(若い娘は恋人か)

 

 実はメタルマックス2世界において、「幽霊」という存在が見えるのはこの別荘地だけだったりします。敵モンスターに幽霊・亡霊的なものはいませんし、賞金首モンスターも皆実体のあるものばかり。死者は、新鮮なものならばドクターミンチの蘇生術で生き返ることもあるのですが、そうでなければ朽ちていくだけの存在として描写されています。

 

 いえ、もう一つだけ幽霊的存在が出てくる場所があります。ラスボスのバイアス=ブラドを倒したあとに、です。コンピュータが破壊されたAIは「バイアス=ブラドという偉大な精神は死すらのりこえたのだ!」と絶叫します。「わしの意識が物質を超越し、純粋エネルギー体になる そのときこそ、わしは不死の存在になる!」と続きながら、そのAIは強烈なエネルギー体「トランス=ブラド」となって襲いかかってくるのでした。

 

 なるほど、これはまさしくブラド博士の精神が死を恐れるがあまりにそれを超えたものとして実体化したものなのだと……解釈したくなります。でも、少しお待ち下さい。

 ブラド博士の幽霊は、いるんです。別荘地に恋人の霊と一緒に。ではいったい、このラスボスは?

 

 ブラド博士が作り出した、ブラド博士に似ているが全く似ていないスーパーコンピュータ。それが自らの死を乗り越えようとして生み出した怨念…。人ならざるものが生み出した、人よりも恐ろしい理解不能な悪意の塊。まさしく「魔王」としか表現できない存在が、最後の最後、ラスボスの最終形態として現れる。アンチ・ドラゴンクエストであるメタルマックス2の最後の敵は、ドラゴンクエストのラスボスと等しい「魔王」だった。私はそう考えます。

 

ドラクエを超えるのはドラクエだけ」

 

 ドラゴンクエスト6のキャッチコピーはご存知でしょうか? 「ドラクエを超えるのは、ドラクエだけ」というものです。RPGを日本に普及させた自負をもつドラゴンクエストだけが言える名キャッチコピーであるといえるでしょう。

 しかし今の視点から見ると、この時もしかして、「ドラクエを超えたドラクエ」はすでに存在していたのかもしれませんね。メタルマックス2というゲームは、それを主張してもいいゲームだと思うのです。

「キャラゲーに名作なし」は過去のモノになった? バットマンアーカムシリーズレビュー

 かつてのゲーム好きな子供たちの間では「キャラゲーに名作なし」という言葉が、さも真実であるかのように流布されていたことがあります。ファミコンブームで沸き上がるゲーム業界では、「あの人気作の版権取ってきたからなんか適当につくれ!」と現場に押し付け、コンセプトもゲームバランスもどこかにいってしまった作品が(どれとは言いませんが)現れ、子どもたちを絶望に突き落としたのです(どれとは言いませんが)。その中でもキラリと光る出来栄えがいいキャラゲーもあったわけですが、どうも中には「もともと別のオリジナルゲームキャラで成り立たせるはずだったものの、タイミングよくキャラゲーの仕事が舞い込んできたので、キャラのガワだけ入れ替えてつくった」なんてものもあったそうです(どれとは言いませんが)。

 さて、時代を進めてPS2時代あたりのゲーム事情を振り返ってみると……「キャラゲーに名作なし」に引っかからないキャラゲーがどんどん出てきたと思いませんか? ガンダムがアニメのままの動きで動いて格闘ゲームしてる!?」と衝撃を受けたガンダムvsシリーズ。とんでもないキャラ数と必殺技は原作再現そのまんまで収録されているドラゴンボールZ Sparking!シリーズ。ま、まあこの時代でもアレめな出来栄えのゲーム(どれとは言いませんが)があったわけですが、「どうしようもない駄目」なゲームもまた、少なくなっていった気がします。
 
 私の勝手な想像なのですが、今のキャラゲーを作っている人たちが、そもそも若いうちからゲームに親しんでおり、かつアニメや漫画、映画でがっつりとサブカルチャーを楽しんでいるために「いかにして原作をゲームに落とし込むか」という点への意識が高いからなのではないでしょうか? 先に上げたガンダムvsシリーズの「連邦vsジオン」でも、ガンダムとジムでは性能差がありすぎるため普通の格闘ゲームとして再現できない点を「コスト性」という発明で乗り切りました。ジムは量産機なので何機やられても平気だけど、ガンダムは痛手になる、というのは十分に原作再現で、かつゲームを盛り上げる要素として成立しています。


 今回のゲームレビューは「原作愛満載の奴らが作ったキャラゲーシリーズ」の中でもトップクラスに位置するだろうバットマンアーカムシリーズ」です。
 バットマンアーカムシリーズとは、有名アメコミキャラバットマンを主役とした3Dオープンフィールドアクションゲームです。現在まで四作出ており、ストーリーもそれぞれ連続してはいますが、どこからプレイしても問題ありません。なにせあまりに原作愛溢れすぎているためキャラ一人一人の説明が綿密に用意されていて、それを読むだけでも時間が潰せますし、キャラ把握が可能です。私は映画のバットマンシリーズしか見たことがないにわかなのですが、このアーカムシリーズは楽しめながら進むことができました。演出も丁寧で「ああ、このキャラはこういう奴なのね」というのがするする頭に入ってきます。あとだいたい共通してバットマンの命を狙っているということ。

 このシリーズの醍醐味はそのアクション性。攻撃、マント、回避、カウンターの4つの操作をぺちぺちと状況にあわせて押すだけで、バットマンがカッコよく敵をぶちのめしてくれます! 敵が殴りかかってくるとその敵キャラの上に冠マークがつくのですが、それが合図。カウンターボタンを押すとバットマンが敵の腕を掴んで反転させ後頭部に一撃決めます。二人攻めて来た場合は、カウンターボタンを二回押しましょう。バットマンが二人の敵の頭を掴んでごっつんこします。スタンスティック持っている敵がいる? その場合は回避ボタンで敵の背中側から攻撃しましょう。シールド持ち? 回避ボタン連打してジャップキックでシールドごと撃ち抜きましょう。ボディアーマー着てる敵? そんな奴はマントで翻弄したあと攻撃ボタン連打のラッシュでボディアーマー越しにダメージを与え続けてノックアウトです!

 銃を持ってきた敵がいた場合、バットラングを投げつけて銃を落とさせてもいいし、バットクローで掴まえてバランスを崩させてもよい。後期のシリーズならば撹乱器を使うことで相手の銃を発射不能に追い込むこともできたりするのです(使用制限はありますが)。そもそも相手に見つかっていない状態なら背後から忍び寄って音もなく相手をノックアウトするサイレント・テイクダウンを発動させることができ、これがまた必殺仕事人的アクションを決めてくれるバットマンがボタンひとつで見れて格好いいのです。
 そんなバットマンに対する愛が惜しげもなく注ぎ込まれた「アーカムシリーズ」。その最初の作品は「バットマン アーカムアサイラム」です。

バットマン アーカムアサイラム

 「壮大なバットマンごっこ遊び」と称されるようになった初作品。舞台はアーカム精神病院という囚人を収容する大型施設。そこでジョーカーが暗躍し囚人たちを逃してしまい反乱が。バットマンは果たしてこの危機を乗り越えることができるのか、というストーリー。上記にあげたアクション要素のほとんどがこの初作で完成しており、また激しいアクションの合間にはバットマンが静かに建物のなかに侵入し、相手の監視をくぐり抜けるというステルスアクション要素が入っています。3Dアクションと思わせ唐突に2Dスクロール風アクションになってみせたりと、多彩な面を見せてくれます。後期シリーズと比較するとどことなく天井が低くオープンワールド感がいまいちなところもなくはないのですが、今プレイしても十分楽しめるアクションゲームです。オススメ。

バットマン アーカム・シティ

 アサイラムの正当な続編です。ゴッサムシティのスラム街を隔壁で閉鎖して、そこをすべて収容所としてしまう計画が進行しており、ブルース・ウェインはそれに反対していたものの、なんと冤罪で逮捕されてしまいアーカム・シティの中へと連れ込まれてしまう…というもの。しばらくはバットマンとしてではなく、ブルース・ウェインとして操作しなければならなかったり、おなじみのジョーカー、ペンギン、トゥーフェイスミスター・フリーズといったヴィランがガンガン出てきたりとファンアイテムとして非常に豪華な出来栄え。そしてバットマンへの愛情が狂ったように注ぎ込まれており、バットマンは物語が進むに連れ徐々にスーツやマントがぼろぼろになっていき、無精ひげが伸びていきます。
 大型精神病院から舞台をスラム街へと移したため、縦への移動が広く行えるようになり、かつグラップネルブーストスキルを獲得すれば異様なスピードで飛行することが可能です。ビルとビルの合間をワイヤーを使ってしゅんしゅんと飛び回り、無線を傍受して悪人が暴れる犯行現場に急行。空から急降下キックで犯人を吹き飛ばす……こんな映画のワンカットのようなシチュエーションを自分がバットマンを操って見ることが可能です。
 収集要素であるリドラートロフィーがあまりに意地悪なところに隠されていてムカっとすることがありますが、メインストーリーやサブストーリーにストレス要素はなくサクサクと進めて楽しむことが出来ます。さらにはおまけとしてキャットウーマンが操作できるDLCも存在します。
 ストーリーはアサイラムからの続きではありますが、状況説明や敵ヴィランの説明が非常に豊富であるため、今作からプレイしても支障はありません(現に私は今作からプレイをはじめました)。今はアサイラムと含めたリマスター版がPS4で販売されております。買うならこっちをオススメします。(なお、Steam版では日本語化することができませんので注意してください。アサイラムの方には日本語Modが存在します)

バットマン アーカム・ビギンズ

 アーカムシリーズではありますがストーリーはアサイラムの前、いわゆる前日譚となります。謎の敵、ブラックマスクからバットマンが懸賞金をかけられてしまい、多数のヴィランバットマンの命を狙い来る…というもの。前日譚であるため警察はまだバットマンを敵視しており、事件を追っていきながら彼らとの信頼を築いていく話でもあります。システム的には前作アーカム・シティを踏襲していますが、いわゆるファストトラベルや、犯行現場の証拠を集めて時間を巻き戻し事件を再現するモードが追加されたりしました。進化した方向性はゲームの面白さとは直接つながらない、あくまで演出面の強化であるのですが、これは前作アーカム・シティがいかに完成されていたかの証左であるといえます。前作同様犯行現場に急行し強襲をしかけることができますし、持っているガジェットを駆使して悪人の攻撃を逸し、撃退することが可能です。ガジェットはさらに追加され、それにあわせるように敵の種類が増え強化されました。前作をプレイしたプレイヤーにはちょうどよい歯ごたえになっておりますが、今作からプレイする人向けにイージーモードもあります。
 とてもオススメできる作品ではありますが、この作品だけはまだリマスターされておらず、WiiUPS3Xbox360の前世代機のみの発売となっております。そのためSteam版をオススメします。日本語化はされていないことになっていますが、ちょっといじるだけでちゃんと日本語字幕が付きます。つまり公式に用意されているのになぜかないことになっているわけですが……? そこらの事情はわかりませんが、マシンパワーも今ではさほど必要ではないので(CPUはCore2DuoGPUはGeForce8800でもOK)、もしプレイしたい場合はSteam版をどうぞ。
 ただしこのゲーム、すでにオンライン稼働を終了しており、オンライン周りのトロフィー・実績を解除することができませんのでご注意を。

バットマン アーカム・ナイト

 アーカムシリーズの最終作(今の所)。実はアーカム・シティにて衝撃の最後を迎えるのですが(アーカム・ビギンズが前日譚なのは、素直にシティの続きを描くのが困難だったからでは? と考えてます)、そこからの展開を描いた作品です。新たな謎の敵、今までのヴィランの再登場というもはやおなじみの展開になるわけですが、アーカムナイトはゲームを根幹から揺らす新要素を入れました。そう、「バットモービル」です! これにより広いゴッサムシティを全力疾走でき、悪人もミサイルで吹き飛ばすことができます! 被害が心配? ゴッサムシティには悪人しかいないので全力で暴れて問題はありません! 公園を駆け抜け柱をなぎ倒し目標とした車へ最短距離を突き進みましょう! グラフィックの書き込み具合も驚異的なレベルです。バットモービルが走れば火花がちり砂煙が上がり、バットマンが雨の中舞えば飛沫が飛び、照明の当たり具合でバットスーツがテカると、様々なレベルで高水準に到っています。

 戦闘システムはシリーズおなじみのモノを踏襲し、ボタンを組み合わせてバットマンガンガン戦うのを見ることが出来ますし、敵の目をかいくぐって潜入し一人づつ音も無く始末していくこともできます。シリーズをやってきたプレイヤーならばほとんどチュートリアルすっ飛ばしてプレイに入ることができます。
 そんなバットマンアーカムシリーズ最新作なのですが……実は私は唯一、このゲームを途中で辞めました。なぜか?
 追加要素であるバットモービルなのですが、これが実は快適なゲームプレイを妨げる要因になってしまいました。壁を破壊する、戦車を打ち砕く、そんな状況打破にバットモービルが必要になるのですが、これの頻度があまりに高すぎるのです。「如何にバットモービルをギミック打破の場所につれていくか?」がむしろ主軸となってしまい、バットマンが自身の能力で状況打開するのとはまた方向性が違ってしまいました。ことあることにバットモービルです。

 また今までおなじみの戦闘システムなのですが、唯一今までのシリーズにはなかった新要素が追加されました。されてしまいました。それは「ディレイつきオートカメラ」です。今までのシリーズもバットマンの動きにあわせて勝手にカメラが動くのですが、これが今作特有の調整が入った結果最悪の働きをするようになりました。このシリーズのアクションは方向キーと攻撃ボタンを組み合わせることで「どちらの方向にいる敵に殴りかかるか」を決めることができるのですが、それとずれるオートカメラが組み合わさることによりバットマンが全然違う方向の敵を殴るようになってくれました。しかもカメラ、プレイヤーの心理の裏をかくように絶妙な動きをします。そして全然違う方向に殴りにいったバットマンは、カメラの死角にいる敵に攻撃されてよろめきます。敵が十人以上いるような大所帯との戦いの場合、当然カメラワークがガンガン揺れるので視覚外の敵が大勢発生するので、こういう事故が多発し、最終的にバットマンはやられます。ゲームオーバーになるとヴィランからけなされ長いロードが入ります(これはシリーズ恒例ではありますが)。これを何回も何回も何回も何回も何回も繰り返す羽目になります。やる気が削れるのがわかりますでしょうか?

 今までのアーカムシリーズは経験値システムを導入しており、悪人を倒したり(華麗に倒すことで倍率ドン!)、隠されていたデータを見つけることでレベルアップし、新たなスキルをアンロックするのですが、今作は特定の指定ミッションをクリアすることでのアンロックとなっております。つまり街にいる悪人をいくら蹴散らそうが経験値にはなりません(バットモービルで轢くことで簡単に倒せるので仕方ないですが)。それはいいのですが、その指定ミッションが単純に面白くないという有様。バットモービルでカーチェイスして相手の車をミサイルで吹き飛ばす、というのは一見面白そうではありますが、実際は「バットモービルと同速で走る車の後ろをはりついてロックオンするまで待ち構えるのを何回も繰り返す」になってしまっていますし(バットモービルのミサイルを喰らって走り続ける車とは……?)、街にある地雷除去をするために戦車部隊を排除もバットモービルの操作感の悪さもあって爽快感が今ひとつありません。シリーズでお馴染みのコンバットやステルス戦もあるにはありますが、前述したカメラワークの悪さもあり「これを延々と続けていたい!」という気持ちにはさせてくれませんでした。

 アーカム・ナイトは高水準なゲームではあると思います。グラフィックの書き込みは凄いし、相変わらずのバットマンのアクションの切れの良さと、トンネルの天井をバットモービルが全力疾走する様はまさしく映画同等の演出です。しかし実際のゲームプレイ、ゲームデザインには心に引っかかるところがとにかく多く、小さなストレスが溜まる仕様になっていると評価せざるを得ません。ここを乗り越える事ができる人は最高のゲーム体験ができることでしょう。私には出来ませんでした。そういうものがあるのだ、と覚悟された方はプレイしてみて、実際に確認してみてください。日本ではPS4と、Steam版が発売されています。Steam版は日本語完全対応です。


 以上でバットマン アーカムシリーズのレビューを終わります。最後がちょっと「キャラゲーに名作なし」っぽくなった? 何をいっているんですか。8bit時代はそんなに甘くなかったですよ??

メトロイド・オモロイド -メトロイド サムスリターンズについて-

 私が一番最初にプレイしたメトロイドシリーズは、実はWii「アザーM」なんですね。このゲーム、ファンからの評価はあまり高くない(おそらく女主人公、サムスの内面が描写しすぎているため?)んですが、初プレイの私には非常に楽しめたソフトです。さほど複雑な操作はいらないのに、勝手にサムスが敵の攻撃をかわし、勝手にネックハンギングを決め、勝手に接射ビーム砲で敵の頭を打ち抜いてくれます! 非常にスタイリッシュで、簡単操作なのに「俺がサムスを操ってこの格好いい撃破をやってのけたぜ」感があるのです。まあ実際は違うのですが、野暮はいいっこなしです。
 ところが次にプレイしたメトロイドフュージョン(初期3DS購入者に配布されたアンバサダープログラムの奴ですね)をプレイしてみて、その面白さにぶっ飛びました。探索の面白さと敵ボスとのガチバトル、そしてサムスそっくりに擬態したXが襲いかかってくる恐怖! そして最後の最後、燃え上がる展開と演出! 2Dアクションゲームにおいて恐ろしいほどの高みに到達したゲームであると思います。(まぁこのゲームやった後にアザーMをプレイしたら、そりゃガッカリするよな、と)


 で、今回のレビューは3DSメトロイド サムスリターンズです。元はゲームボーイメトロイド2で、それのリメイクとなっています。ストーリー的には「また凶悪な宇宙生命体メトロイドが出てきたからなんとかしてくれ、サムス・アラン!」的なもので、初代をプレイしていない人でもあっさり入り込むことができます。そういうゲームではないので。
 「メトロイド」とは、主人公サムス・アランがパワードスーツをまとい、新種の宇宙生物メトロイドと戦うアクションゲームで、今作メトロイド サムスリターンズでは2Dアクションとなっています。体力はHP制で、攻撃手段もビーム、アイスビーム、ミサイル、ボムと多彩で、このうち強力なミサイルは残弾制。硬い敵はミサイルで打ち砕き、変な動きをする敵はアイスビームで動きを封じて足場にしてしまえばいいのです。そしてメトロイドシリーズのウリは「探索」です。広大なマップのいたるところに隠された通路が存在します。そこをビームやボムで破壊することで次のフロアにいけたり、またはミサイルの残弾が増えたり、HPを増やしたりというパワーアップが可能です。最初のうちからすべての武器がつかえるわけではなく、アイスビームやミサイル、ボムは探索を進めるごとに手に入っていきます。

 リメイク度合いとしては元のゲームをかなり大胆にアレンジしており、探索や戦闘を楽にするスキルが追加されています。周囲の状況をマップに映し、かつ壊れる壁を光らせてくれるレーダー、相手の攻撃を無効化してくれるアーマー、マシンガンのように弾を発射するバースト、周囲と敵を遅くさせた中自由に動けるいわゆるクイックタイム効果と、どれも効果的な代物ばかり。これらスキルの仕様にはエナジーが必要になりますが、探索を続けるとこのエナジーの上限も増やすことが可能です。さらには「メレーカウンター」なる接近技が追加されています。敵がキランッ! と光ってから突進してくる攻撃は、そのタイミングに合わせてボタンを押すとサムスがカウンターを仕掛けて敵をぶっ飛ばしてくれます。これがまあいい具合に格好良いわ効果的だわで爽快感バッチリです。アザーMで培われた要素も入れ込んでる感じですね。


 こう書いていくと「ガッチガチのストイックなアクションゲーム」のような印象を受けるかもしれません。しかし、実はそうではないのです。メトロイド サムスリターンズの実態は『ものすごくストイックなアクションゲームに見せかけて、初心者救済措置が練り込まれたゲーム』なのです。

 かつてのロックマン魔界村、近年でいえばCupheadのような横スクロールアクションはトライアンドエラーを繰り返し、プレイしている本人のスキルをあげることでボスを撃破し、クリアを目指すゲームです(内部に若干救済措置が練り込まれてはいますが)。このゲームは非常にそれに近い……ように見せかけて、そうでないように調整が施されています。最初のボスは非常に簡単に撃破することが可能です。もし負けてしまっても、ボス戦の直前からリトライが可能になっています。そしてしばらくのボス戦は「最初のボス戦に若干攻撃方法がプラスされただけのマイナーチェンジ版ボス」となっています。そのかわりにボス戦自体の数を増やし、サクサクと撃破することでアクションが不慣れな人でも徐々にサムスを動かすことになれさせていくような動線が敷かれています。それと並行し、サムス自体のパワーアップが成されていきます。ビームは壁を透過するようになり、ミサイルは数が増え、ジャンプ力はあがり、新規スキルも獲得しました。つまりボスの強化とサムスの強化を同時に行い、徐々にプレイヤースキルを向上させていくようになっているわけです。


 それでもボスの強化についていけない初心者はどうすればよいのか? その場合はボスから一回離れ、今までの道を戻ってみましょう。新しく手に入れたスキルや、ハイジャンプの能力でいけなかった場所、取れなかったアイテムに手が届くはずです。そうした結果、より増えたHPで、より大量にもったミサイルでボスに再戦することが可能です。このゲームは探索が自身の強化にダイレクトに跳ね返ってくるので、探索は苦になりません。余裕があればレーダーを発信してみましょう。アイテムの場所までバッチリ記してくれます。それでも「どうしても取れないなぁ」と思った場所は、また後でくればいいのです。パワーアップ後に取ることができるでしょう。

 そして慣れたころに、ようやく新規ボスの投入が行われます。足が生え牙が生えたガンマメトロイドは今までになかった攻撃パターンで貴方を翻弄します。さらなる成長体ゼータメトロイドはサムスの身長を大きく超える巨大生物となり、攻撃力も跳ね上がっています。どうやって彼らに対抗するか? 初心者は素直に持ってるエナジーをアーマーに振り分けましょう。凶悪なメトロイドの攻撃も、どんどん防いでいきます。そして攻撃パターンを見切り、どうやって動けばダメージを受けずに済むか学習したプレイヤーの前に、強化されたゼータメトロイドが現れます。攻撃力が上がったゼータメトロイドは……戦いに慣れたプレイヤーの敵ではないはずです。アーマーを起動させて『ちょ、ちょっと待って! そんなに激しい攻撃してこないで! こっち初心者なんだから!』と震えているサムスはもういません。『ゲハハハハ! ビームのマシンガンは美味いか? ほぉらそれで破けた腹部にスーパーミサイルをお見舞いしてやろう! おっ、攻撃直前に光ったな! それを待っていた! そぉらカウンターだ! ひっくり返って無防備なお前の弱点にミサイル連射じゃ!』メトロイドをぶち倒す男前なサムスを見ることができるでしょう。

 このゲームは丁寧です。上手いことプレイヤーのスキルを上昇気流に乗せることに主眼を置きながらも「スタイリッシュにサムスがメトロイドを撃つのが私自身が上手いからだ」と錯覚しやすいように作られています。流石に最後のボスやその手前の大ボスの難易度は歯ごたえがありますが、それでも何度もリトライしていく中で学習し、いつかは倒せるぞ、と思えるような調整がなされています。

 アクションゲームをするときに難易度調整を迷うことなく「イージー」を選択する人も、このメトロイド サムスリターンズは楽しめること間違いありません。是非プレイしてみてください。なにせこのゲーム、ハードは一度クリアしないとプレイできないようになってますので。

埋もれた名作が埋もれてしまった理由をいろいろと考えようか

 埋もれた名作、と聞いて皆さんはどんな作品を思い浮かべるだろうか? ゲームでもアニメでも映画でも、名作の影に隠れてしまった作品は星の数ほどある。そんな影に隠れた作品でも、貴方にとってはとても心に残った名作があるに違いない。私にとって埋もれた名作の一つが、『ブラッドギア』である。


 ブラッドギアは1994年にPCエンジンスーパーCD-ROM2用に発売された横スクロールロボットアクションゲームだ。発売はハドソンだが開発会社はウエストン ビット エンタテイメント。ストーリー的には実は別のソフトの続編にあたるのだが、まぁそれはエンディングで匂わせるだけなので知識としては不要だ。このゲームは自機「パワードギア」と呼ばれる大型人型ロボットを操作して、敵を撃破していくのだが、RPG要素も組み込まれていて、敵を倒すたびに金がもらえ、その金で自機を改造し、ジャンプ力を上げ、ダッシュスピードを上げ、動きのレスポンスを向上させていくことができる。こういうゲームには欠かせない自機の乗り換えイベントもあったりするし、ボス戦後や章の合間には気合の入ったムービーパートも存在する。
 驚くのがその自機の動きだ。ダッシュする際には「キュイィィィン!」という効果音とともに後ろに砂埃をあげ、ビームソードを振るう時には踏み込みをし、スラスターを吹かせばちゃんと自機の重さを感じさせつつもホバリングを行える。最初こそは重さが鈍さにつながる動きしかできなかった自機が、改造を重ねるに連れ機敏になっていき、思い通りの動きを見せるようになっていく。強い敵に遭遇した場合、レベル上げに相当する「改造資金稼ぎ」を行う必要が出てくるが、このゲームにおいては自機を動かすアクション自体が楽しいためにさほど苦にならない。

 武器の仕様も面白く、接近武器であるビームソード系以外の銃火器は弾数制の使い捨てだ。8方向に自由自在に振り回せるハンドガンや、左右上下のみで威力はそこそこのライフル、左右限定だが高威力のバズーカといった具合に、使い勝手の良さと威力は反比例にある。ショップで買えたりするが、このゲームにおいては銃火器は敵から奪うものだ。ビームソードで敵をぶん殴り、倒した敵からバズーカを奪い、出てくる巨大兵器にありったけのバズーカの弾を打ち込んでいく! また迫り来る壁のような機動兵器からバックダッシュで逃げつつライフルを打ち込みまくり破壊する。こういうのは君は大好きだろう? 残弾を気にするのが嫌になってきた頃には、残弾無制限のビームライフルが手に入るぞ(といっても代わりにHPが減っていくが)。

 そういった上質のアクションの後ろで展開されるのは、王道直球ストーリー。悪の皇帝が支配する帝国の弾圧に反旗を翻すレジスタンスたち。その一員で新型パワードギア「ガーズハルト」を完成させた博士たちの元に、帝国軍の奇襲が! 博士は死亡してしまい、新型のガーズハルトも奪われてしまう。生き残りである博士の助手は唯一残っていたパワードギア「Vジーク」に乗り込み、パワードギアと人間をつなぐ機械「アームズ」を、博士の息子であり主人公であるアレフの元に運び、事切れた。アレフは父の死を聞かされ、帝国軍への怒りを静かに燃やしながら、アームズを手にしそのVジークへと乗り込むのだった…というもの。どこかで聞いたことがありそうなほど、王道でありふれたストーリー。しかしこれがCD-ROMによる大容量を下地に展開するため、声優が熱演し、ムービーが盛り上げていく。


 このゲームは古臭いロボットモノアニメであるコテコテ要素をこれでもか、とつぎ込んである。実は顔と名前を変えて生きていた父、そしてその父が実はレジスタンスのリーダー、破壊されてしまったパワードギアの代わりとなる新型パワードギア、そしてその新型も戦いの果て次第に限界が近づき、ガーズハルト奪還作戦が成功した後は仲間に譲られ、後方支援として活用されることになる(ちゃんと背景で戦ってるのが見える)などなど。

 そしてストーリーの展開は盛り上がりを重視するため、辻褄はあとまわしだ。ライバルとして幾度となく主人公の前に現れる帝国の騎士は実は主人公の兄だったり、皇帝が「本当の黒幕はお前の父親だ」みたいなことを言い出したり、アームズの正体がなんかやばめな代物だったり。風呂敷はどんどん広がっていくものの、最後にすべての伏線が明らかになる……というわけではない。それはそれ。大事なのは盛り上げだ。細かなところの突っ込みはゲームカタログあたりに任せておけばよい。そしてこのゲームは盛り上げることにはちゃんと成功している。下手に盛り上がらない展開よりも、はるかに良い。エンディング後に「そういやアレなにかおかしくないか?」と思い直すことになったとしても、そんな考え込む暇があるなら二週目をプレイすべきなのだ。ゴジラvsキングギドラタイムパラドックスについて熟考するよりも何も考えず見たほうが楽しめるのと一緒だ。


 さて、ここまで褒めちぎっておいてなんだが、この問題について触れなければならない。「ではどうしてこの作品は埋もれてしまったのか?」という問題だ。94年というPCエンジンの晩年期に出てしまったためか? それもあるだろう。しかし私の思う最大の問題点は「この翌年95年に、こともあろうか初代フロントミッションが発売されてしまった」ということである。なにしろマシンガンの薬莢が弾け飛ぶ! ダッシュパンチの慣性がついている! ミサイルがあたったときにはキノコ雲が立ち上がる! 恐ろしく書き込まれた機動兵器ヴァンツァーの動きと、展開するのはハードで重いストーリーSLGと横スクロールアクションという違いはあれど、「作り込まれたロボット兵器の動き」という面でフロントミッションの輝きの前に完全に飲まれてしまっていた。

 そしてさらに翌年、「フロントミッションガンハザード」が発売された。あろうことか、横スクロールアクションである。ダッシュするときには前屈態勢を取り、パンチをするときには踏み込むどころか全身の体重を乗せて放つ。シールドを出す時には重さを感じさせ、ジャンプや着地のときには全身をバネのように使い、そういった動きを駆使して超巨大兵器に立ち向かう熱い展開が広げられる。もはや二年前にPCエンジンで発売された古臭いロボットアクションゲームのことなど、誰も覚えていなかったのだ。


 ブラッドギアは間違いなく面白い。名作だ。しかしそう主張する私ですら、フロントミッションガンハザードとの比較は「なぜそんな残酷な真似ができるのか?」と言わざるを得なくなる。「もしかしたら、埋もれたままでいたほうが良いのかもしれない」、そう思った人が多数いたからこそ、このゲームは埋もれてしまったのではないだろうか。
 
 ブラッドギアはWiiバーチャルコンソールで配信されているタイトルだ(新たに入金することは出来ないが、残高が残っているなら購入は1月末まではできる)。しかしだからといって再評価された、という話は聞かない。埋もれた名作は埋もれたままだったのだ。しかし誰もが忘れたまま、というのはあまりに寂しい。ここに備忘録として、ネットの海に漂う記事の一つとして書き記しておくことにする。埋もれさせたままでいるというのは、やはり寂しいものなのだから。

メタルギアサヴァイブの真髄を知らないままレビューを書いてしまった懺悔をする

 概ね一年前、このような記事を書いた。当時めちゃくちゃに叩かれていたメタルギアサヴァイブを肯定的に書いたレビューで、そこそこの反響と評価を頂けた。ほんの少しではあるものの、メタルギアサヴァイブの汚名を雪げたと思っている。発売からもうすぐ一周年になろうとしているこのタイミングで、再度メタルギアサヴァイブの記事を書かねばならないという信念を震わせることとなった。

 その理由を説明するために、私は一度このBlog、上記記事を読んでくださった皆様に謝罪をしなければならない。

 私はメタルギアサヴァイブの真髄を知らないまま、あの記事を書いてしまった。

 本当に申し訳ない。私はメタルギアサヴァイブの表層部分をなぞって面白いと思ってレビューを書いていた。それは間違いだった。メタルギアサヴァイブの真の面白さは、もっともっと奥深いところにあったのだ。それがようやくわかった。今回の記事はそれを解説することに尽力する。メタルギアサヴァイブがどのようなゲームであるのか、少しでも理解して頂ければこれに勝る喜びはない。


 メタルギアサヴァイブは大きく2つのモードが存在する。一人用のシングルプレイモードと、オンラインで協力するCoopモードだ。両方ともセーブデータは共通で、シングルで素材を集めたりレベルをあげてCoopに挑戦というスタイルが一般的だ。Coopで高得点を獲得すれば新しい武器や防具、ガジェットのレシピが手に入る。難易度はイージー、ノーマル、ハード、エクストリームの四段階で、エクストリームの難易度は尋常ではない。最高レベルに上げたキャラクターでも立ち回りを間違えたら、あっという間に敵ゾンビの餌になること必至である。

 Coopモードで協力する場合、防衛拠点を次々に現れる敵ゾンビから制限時間の間必死で守るゲームになるのだが、これをシングルプレイで確保した有刺鉄線のフェンスや、自動で敵を屠るマシンガンタレットを設置していくこととなる。敵ゾンビは制限時間内でどんどんと現れるが、そのまま守るだけでは最高ランクを獲得することはできない。防衛拠点で「加速」を行うことでようやく最高ランクを狙えるようになるが、加速をすると敵ゾンビがでてくる上限が増える。さらには一発でも拠点が攻撃されるとその加速はリセットされてしまう。再度加速を行うには、敵ゾンビを倒したときに出てくるエナジーを消費する必要がある。このエナジーは加速の他、弾薬の補充、防衛拠点装備の召喚、そして一発逆転メタルギアRAYの召喚にも使うことができる。メタルギアRAYを召喚した場合、マップを埋め尽かさんばかりにいたゾンビ共を水圧カッターでなぎ倒す雄姿を見ることができる。無駄遣いは厳禁だ。

 イージーやノーマルでプレイする場合は話はさほど難しいものではない。敵が現れるから手持ちの武器で倒し、別ルートで現れる敵はフェンスなどのガジェットで食い止めておく。エナジーが溜まったタイミングで採掘の加速をかけ、場合によってはメタルギアRAYを呼んでその雄姿を愉しめばよい。一人でも良いが、クイックマッチやフレンドで集まった複数人プレイならわちゃわちゃしているだけでも楽しめるはずだ。

 そして難易度ハードもマッチングして上級者と一緒にプレイすることができれば、そこまで難しいことはない。足手まといにならないようにできる範囲で敵を倒し、フェンスを張っておけばSランククリアは目前だ。
 そう、Sランククリアは可能なのだ。マッチングすれば。

 私が完全に見落としていたのはこの点だった。私が今までプレイしてきたメタルギアサヴァイブの殆どは、クイックマッチやフレンドの招待を使った複数人によるCoopモードだったのだ。そして何の気なしに、一人でこのCoopモードのハードをプレイしたところ、衝撃を覚えた。

 このゲーム、Coopモードのハードを一人でプレイした時全く別のゲームに変わるのだ。それは頼れるものは己自身のみ。厳しく険しい「サヴァイブ」の世界だった。敵の出現箇所を予測し、食い止める箇所を見定めガジェットを設置しなければならない。そのガジェットもただフェンスを置いただけではすぐに破られてしまう。フレイムトラップと組み合わせることでフェンスを攻撃するゾンビたちを焼き尽くしたり、フェンスの向こうにマシンガンタレットを設置してなぎ倒すのも良いだろう。デコイを用意して敵の気を反らすのも有効だし、強敵が出てくる場所には予め可燃性ドラム缶を設置しておき、出現と同時にハンドガンで撃つのもよい。C4を相手めがけて投擲してもよい。それらのガジェットはすべて有限だ。如何にどれをどこに設置するか考え抜かなければならない。思慮なしに置いても現れる敵ゾンビたちを食い止めることは不可能だ。

 そう、メタルギアサヴァイブは如何にガジェットの性能を発揮しうるか、考え、事前準備で装備を整え、実戦ではリアルタイムで状況を動かしていくゲームなのだ。エリアによって有効な戦略は変わっていく。仲間なしで一人で対処するためには絶対にガジェットを使わざるを得ない。さあ頭を使え。手持ちのガジェットの組み合わせの有効利用を探すのだ。ダンボールフェンスは敵の移動方向を変える。ならば崖に誘導したら? その崖の下にフレイムトラップを仕掛けたら? 空気砲は相手を吹き飛ばすがノーダメージだ。ならばその吹き飛ばす先にスパイクボールを設置したら? ガジェットには耐久力が設定してあり、ゾンビの攻勢とともに減っていく。マップを駆け回りながらどのガジェットが壊れそうか見極める必要がある。

 眼の前の敵ゾンビを手持ちの武器でなぎ倒していくのは楽しい。しかしそれに夢中になって、他のルートから侵攻されているか、マップを常時確認しておかなければならない。フェンスが突破された? 予備のフェンスはあるか? なければ手持ちの素材でつくることはできるか? そもそも貼り直す余裕はあるか? とっておきのフレイム弾を込めたショットガンでなぎ倒したほうがいいか? 秒の判断が戦いの行方を左右する。もしその判断に失敗して拠点を攻撃されてしまった場合……あえて採掘中止に割り切ったほうが、高ランクを維持したまま終わることもある。耐久力がゼロになってしまったら、どんなに良いところに行ってたとしてもDランクだ。今まで消耗した素材とガジェットと弾薬は帰ってこない。まるきりの無駄だ。撤退してBランクを維持できれば、そこそこの貴重素材が獲得できて黒字になる可能性が高い。撤退は恥ではない。

 もし自分の編み出した戦術がすべてうまく行き……思うがままに戦場がコントロールできてSランクが取れた時、その喜びは形容し難い。私は未だ途上で、エクストリームソロは手も足も出ない。最上位ランクのエピック装備を持っているが、このゲームは武器・防具を揃えたところで勝てるゲームではない。とにかくガジェットの利用方法の最適化を突き詰めるゲームなのだ。

 ここまで到達するにはそもそもシングルプレイのクリアと、その後の隠しボス退治、ベースキャンプ採掘の掘り進みとかなり長い道のりとなる。気軽に「是非プレイして欲しい」といえるプレイ時間の長さではない(まっすぐ進んでも概ね40-50時間と、リアル日数2週間ほどが必要になるはず)。その上で言わせてもらいたい。「このゲームは是非プレイして貰いたい」。

 もし貴方がこの領域に到達する前にくじけそうになってしまったら、迷わず他の人を頼ってほしい。このゲームには貴方に手を差し伸べる「キャプテン」たちがいるのだから。

ウルトラマン・ニュージェネレーションシリーズレビュー

ウルトラマン」というコンテンツが世に現れて、50年以上が過ぎました。未だに新作が作られ、私たちに提供されているということは非常に喜ばしいことです。きっと息子氏が大人になった頃でも、新作ウルトラマンは作られ続けていることでしょう。
 今回のブログ記事は「なんとなくウルトラマンに興味はなくはないんだけど、何から見たらいいのかわからない人向けに紹介する、という体で、現行のウルトラマンシリーズのレビューを行う」という内容です。内容に踏み込むため、「ネタバレ」にはあまり配慮を行っておりません。お含み起きくださいませ。それではさっそく行ってみましょう!

ウルトラマンギンガ

 6年ぶりの地上波復活となった新作ウルトラマンですが、びっくりするほどチャチです。なんせメインの舞台は学校で、主戦場はその裏山。防衛隊は存在すらしませんし、舞台の狭さといったら尋常ではありません。拭いきれない低予算感が丸出しです。が、でてくる怪獣も今までウルトラマンシリーズで出てきた人気怪獣を復活させたもので、かつ「主人公がその怪獣に変身して敵怪獣と戦う」というびっくり新基軸を打ち出しています。さらには新ウルトラマンであるギンガのデザインはめちゃくちゃ格好よく、光る胸と頭部がとても印象的。メインテーマの「アーアーアーアーアー……」というコーラスが流れてからのバトルは演出が極まっていて最高以外の何者でもありません。最終決戦は今までの低予算感を一気に吹き飛ばし、「ラスボスと月にまで行って鍔迫り合いしながらグルグルと回って戦い続けて決着をつける」という流れはテレビの前で歓声をあげざるを得ないほど。演出の妙です。
 本編の話の主軸としては「黒幕が登場人物にまぎれている」や「ギンガはいったい何者なのか?(ウルトラマンタロウが知らないウルトラマンであるため)」といったものですが、それらに加え主人公たちの学生が将来のことで悩んだり立ち上がったりとするもので、上手いこと纏めてあるなぁと思わせてくれます。そんなわけで、ウルトラマンギンガ、オススメです。

ウルトラマンギンガS

 ウルトラマンギンガの正式な続編です。予算が増えたのか防衛隊ができました! 主人公ヒカルは第一話で防衛隊に入ることになり、ウルトラマンギンガに再会し、再び現れだした怪獣たちに立ち向かう……というもの。また、地底世界の存在が明らかになり、そこに住む地底人の、もうひとりの主人公ショウがウルトラマンビクトリーとして登場しました。地底人ビクトリアンとの接触といざこざ、ショウとヒカルの衝突と和解、悪性宇宙人の侵略、そして主人から棄てられてしまったアンドロイド……。本編のストーリーはすごし強引さが残ってる感じがありますが、出来栄え自体はよくできています。そしてバトルの練度はぐっと上がりました。演出は強化された上に、「お互い2分づつ戦ってあいつを足止めしよう」と、ギンガとビクトリーが交互に変身して戦う、なんて「思いつきはするけれど公式がそれを撮ろうなんて思わないだろ」といいたげな展開が出てきます。劇場版ではついに歴代のウルトラマン含め10人出演という豪華なものになりました。ウルトラマンギンガS、最高に面白いのでオススメです。

ウルトラマンX

 ギンガとは別世界の話になりました。怪獣との戦闘中に主人公「大地」がウルトラマンエックスと共に戦うことになる、という非常にウルトラマンチックな導入ではありますが、さらにいろいろと新基軸が入っています。それは大地とエックスは完全に別人格で、エックスが普通にぺらぺら喋るということです。そのため神秘性に包まれた謎の超人、というよりは「正義感あるエージェント」的存在へとなり、良き相棒、頼れる仲間、といった要素に変わっていきました。

 また、ギンガSとの比較ではなくとも、特撮のレベルが恐ろしく上がっています。エックスが怪獣に吹き飛ばされビルに叩きつけられる! 破壊されるビル! その砕けたなかに、窓枠やコピー用紙が見えるのです! ローアングルから見上げる視点のおかげでエックスと怪獣の巨大感はビシビシと伝わってきて、ザナディウム光線を放つ際の足の動きにあわせて地面が光る演出は素晴らしいの一言。さらには最終決戦、エックスが自らの正体を明かし、各国の防衛隊が総力をあげて宇宙からの侵略者へと立ち向かう……という展開はまさしく息を呑むもの。最高以外の形容詞が見つかりません。

 特撮のレベルが飛躍的に伸びた一方、メインストーリーは……イマイチ、パッとしませんでした。大地の両親は謎の失踪を遂げているのですが、その謎は明らかになるものの、「う、ううん……?」と少し首を傾げてしまうもの。エックスと人間との絆を表すために、エックス用のアーマーを開発したりするわけですが、新アーマーがどんどん現れ、かつ「ピンチになったときに新アーマー登場!」という演出を多用してしまったため、「素のエックスはそこまで強くないんじゃないのか?」と思わされてしまう流れになってしまいました。後半、エックスは強化体へと進化するのですが、あろうことか強化体登場の次の回が、前作ギンガSとのコラボ回! 「お前は自分の力を使いこなせていない!」と、ショウに特訓される展開が待っていました。そんなこともあり、「イマイチ強くない、発展途上のウルトラマン」的な印象になっています。

 脚本のより一層の改善、という宿題を抱えてはいるものの、その特撮レベルは今でも驚くものです。ウルトラマンX、オススメです。

ウルトラマンオーブ

 今回の主人公クレナイ・ガイさんは風来坊です。かつて光の巨人となって強大な敵を打倒したものの、その余波で大事な人をなくし、自らの力を見失ってしまったため変身能力を失ってしまいました。そのため今ではあくまで「他の先輩ウルトラマンの力をお借りして」変身するという新基軸を打ち出しています。変身シーンでは二枚のカードを出してウルトラマンさん! ティガさん! 光の力、お借りします!」と叫んで変身します。カードと変身アイテムを売りたくてたまらないバンナムさんの影がちらつきますが、このガイさんの変身、めちゃくちゃ格好いいんですよ! ガイさんは心に傷を負っているものの、それでも「人を助けること」に躊躇はありません。先輩ウルトラマンに敬意を示しながら、出てくる怪獣を打倒し、人を助けようとするその姿は、まさしくさすらいのヒーローと言えるでしょう。

 宿題だった脚本は一気に改善されました。「人を傷つけてしまう力」「守るべき存在を守れない正義」「ライバルキャラであるジャグラス・ジャグラーヤンデレ具合」といった要素が主軸となって、メインストーリーは展開されます。たとえば、圧倒的なパワーを誇る敵に対抗するため「ウルトラマンベリアル」という、悪のウルトラマンの力を借りなければならない展開になります。その力「サンダーブレスター」は暴力的と言えるほど強力なパワーで敵怪獣を粉砕します。しかしサンダーブレスターが暴れたあとの街は灰燼と帰しています。敵怪獣を倒すためならば周囲のことや、その怪獣に捕らわれている人質のことなど考えず力のままに暴れるようになってしまうのです。倒すのか? 守るのか? ガイさんは苦悩しながら、そして一つの答えにたどり着きます……!

 特撮面でもさらに進化が進みました。第一話では暴風を操る怪獣が暴れるのですが、その暴風に吹き飛ばされる家屋がリアルなこと!(逆さに作ったミニチュア家屋を破壊して、舞う瓦をCGで足す、という低予算で効果的な演出を組み込んでいます!) さらには手前で警官と等身大宇宙人が銃の撃ち合いをしている背後で、巨大怪獣とウルトラマンオーブが戦っているという、2つの戦いが同時進行で進む様を見せるようになります! またサンダーブレスターが暴れる場合は、ビルをへし折って敵怪獣に投げつけます! そして最終決戦ではビル群を吸い込みながら暴れるラスボスに向かって、ガイさんが全力疾走しながらウルトラマンさん! ティガさん! 光の力あぁっ! お借りしまあぁす!!!」と叫び変身すると、そのまま低空飛行するウルトラマンウルトラマンティガが並んで一体化し、ウルトラマンオーブになってラスボスに向かっていくという演出で戦いが始まります。こんなの見せつけられたらテンション激上がりですよ!

 また良エピソードぞろいのこの作品ですが、偽物のウルトラマンとして任務を果たそうとした結果、子供たちに信用されてしまい、そこから子供たちを守るため本物になろうとする下っ端宇宙人を描いた「ニセモノのブルース」、かつて地球侵略の野望を抱いてやってきたものの、今ではすっかりその野望を諦めてしまった宇宙人の哀愁を描いた「地図にないカフェ」の2つは、強くオススメできるエピソードです。今までシリーズを見たことがない人でもさっくり見て理解できるので、いきなりここから見ても問題ありません。ウルトラマンオーブ、オススメです。

ウルトラマンジー

 今回の主人公、朝倉リクは特撮ヒーローに憧れる19歳の青年。両親の存在は不明の孤児で、今は住み込みアルバイト中という身。アルバイトを終わった後は、ボロの自室でカップラーメンをすすりながら大好きな特撮ヒーロー、ドンシャインを見るというちょっとアレな状況。ところが突如として現れた怪獣を前に秘められた力が目覚め、ウルトラカプセルというものを2つ組み合わせるとウルトラマンになれることが判明! 「憧れていたヒーローになれるんだ!」とワックワクで戦いに赴く、という今までになかったパターンで話が進みます。変身中の「ヒア・ウィ・ゴー!」という掛け声をするのは、憧れのドンシャインが言っていたからという有様。しかし彼はなんと(悪のウルトラマンである)ウルトラマンベリアルの息子だったのです! ベリアルはかつてウルトラマンたちと戦い、その戦いの果てに超時空消滅爆弾を起動し地球ごとこの銀河を破壊しようとしました。しかしウルトラマンキングがその身を宇宙と一体化させたため、銀河は元に戻りました。そしてベリアルも深手を負い、次元の向こうに飛ばされたのです。ベリアルは手下のストルム星人を使い、自らの復活のため息子といえるジードを作り上げたのです。ストルム星人は地球で伏井出ケイを名乗り、朝倉リクを監視しながらウルトラマンジードにウルトラカプセルをわざと集めさせようと怪獣を出しつつ誘導するのでした……!

 つまり今作の主人公、ウルトラマンジードは「明確なニセモノ・模造品のウルトラマンなのです! そんなウルトラマンがいろんな人と出会い、自らを見つめ直し、ベリアルの息子という宿命を乗り越え、本物のヒーロー・本物のウルトラマンになっていくという展開なのです。オーブで改善された脚本はさらに進化したといえるでしょう。リクのパートナー、宇宙人のペガはめちゃくちゃ愛らしいし、ベリアルのライバル「ウルトラマンゼロ」が入り込んだ地球人「伊賀栗レイト」は、演じる役者さんの演技力の凄さも相成り頼れて格好良くて面白いキャラクターへとなっています。なにせレイトは普通のサラリーマン。変身するたびに有給休暇が一つ減るのです。ヒロイン、ライハは刀を振り回す格闘キャラに仕上がっているため、前作オーブであったような「手前で格闘バトルしている背景で巨大怪獣とウルトラマンが戦っている」演出がさらにド派手になりました。

 特撮面の進化はさらに進んでおり、とにかく演出の格好良さが光ります。ウルトラマンジードの必殺技、「レッキングバースト」は撃つ前の溜め状態で目が光り、カメラが一周し、周囲に瓦礫が浮かび上がって手がスパークするという演出の凝りよう。「これ喰らったらやばいぞ!」感が半端なく、どことなくベリアルの「悪のウルトラマン」的演出の黒さが見れます。形態変化体であるソリッドバーニングになれば鎧の隙間から蒸気が噴出し、アクロスマッシャーになればしなやかな動きで相手を翻弄します。マグニフィセントになれば圧倒的なパワーで立ち向かう感がバリバリに出ますし、ロイヤルメガマスターになれば他のウルトラマンの力を使いまくってねじ伏せることが可能なのです。

 最終決戦に向かうリクは、静かに歩きながらカプセルをセットします。そして「ヒア・ウィ・ゴー」と力強く言い、歩きながらどんどんと巨大化し、ジードになっていくリク! この格好良さは絶対に見てください。ウルトラマンジード、オススメです。

ウルトラマンR/B(ルーブ)

 今度のウルトラマンは兄弟二人です! 兄の湊カツミはウルトラマンロッソ、弟の湊イサミはウルトラマンブルに変身する能力を授かってしまい、現れる怪獣から街や家族を守る戦いに身を投じるはめになったという展開。二人のウルトラマンが同時に戦いますが、まだまだ彼らは未熟なため「二人でようやく一人前に戦えるウルトラマン」的描写となっています。そんな彼らが戦いのなかで成長していき、同時に妹アサヒの本当の姿とは? というストーリーが展開するものとなりました。

 特撮面の進化は半端なくなりました。「飛んでいるウルトラマンのすぐ背後視点のカメラ視点で、飛んで逃げる怪獣を追いかけて空中戦する長回しなんて映画でも見ることがありませんよ! 地面を割って現れる怪獣と、その地割れでひっくり返る車! 怪獣が出現し、逃げ惑う車を追いかけ怪獣が口から火炎放射すると、車が炎上したまま走り続けるだなんてTV放送で可能な予算でできるのか! と思うことになります。怪獣の力強さと被害の酷さ、対するウルトラマンの頑張り具合が光るようになっています。
 ストーリーとしては兄弟の成長記と家族の絆、そして「ウルトラマンとはなんぞや?」という問いかけが結びついて展開するわけですが、ここでルーブはとんでもないキャラを出しました。そう、愛染マコトです。アイゼンテック社長の愛染マコトは、その科学力を使いウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツへと変身するのです!「お店の人にはオーブダークくださいで通じるよ!」 愛染マコトの正体はウルトラマンを好きすぎて地球に来てウルトラマンになる方法を全力で探していたウルトラマンオタク宇宙人」なのです! 口から延々と過去のウルトラマンの名台詞を吐き出し、湊兄弟を「偶然ウルトラマンになっただけ」として絶対に認めない愛染マコト。そのため前半の強敵として立ちふさがるのです!

 そして並行する話は妹アサヒの存在。前半から次第にその存在の怪しさが強調されていたのですが、話が進むたびにその異様さが浮かび上がってきます。皆の記憶と食い違う過去の写真(なぜかアサヒの姿だけ映っていない)、しまってあった思い出の品を開いてみても、あるのは兄と弟のものだけで妹アサヒの思い出の品は全くありません。はたしてアサヒは、本当に妹なのでしょうか……?

 こんなふうに繰り広がる話なのですが………………………………………………はい、ここから雰囲気を変えていきますよ。正直なところ、ルーブにおいての脚本部分はあまり上出来なものとは言い難くなっています。素材はすごくいいんです。妹アサヒも「記憶はあるが、これがもしかして作られた記憶かもしれない。本当にアサヒを家族・妹と呼ぶことができるのか?」というものはとてもおもしろそうな素材じゃないですか。ところがルーブの兄弟は全く揺らぐことなく「アサヒは妹だ!」という態度を即、取ります。葛藤は父ウシオが一人で起こしているもので、ドラマ性はあまり起きません。これは兄弟が深刻な仲違いをしてしまうと、お子様の反応がよろしくないと考えたためでしょうか? その問題点は別の問題も引き起こしました。兄弟は時折喧嘩をするのですが……その喧嘩の内容がいまいち腑に落ちないのです。兄も弟も強烈なキャラクターを持っているというわけではなく、どことなく没個性的で、キャラ設定上兄は頑張り屋の野球好き、弟は天才肌の大学生、というものが付与されているものの、前作ジードの「ヒーローに憧れる青年」や、前々作オーブの「さすらいの風来坊」といった屈指のキャラ立ちとは遠く、「脚本の都合上動いている」感が否めません。だからこそ兄弟げんかがイマイチしっくりいかないまま上滑りをしてしまっているのです。

 その半面敵である愛染マコトは強烈な個性を発揮して、一度見たら忘れられないキャラへと昇華しているのですが、あろうことかあくまで愛染マコトは前半の敵キャラ。後半になるとあっけなく退場するはめになり、また別の悪役ヒロインが登場するわけですが、その悪役ヒロインも「地球にものすごい怪獣が近寄ってきているので、地球ごと爆破してその怪獣を倒そう」というとんでもキャラ。これはこれでキャラが立ってていいのかもしれませんが、そのものすごい怪獣というのが実際に現れて現れるのは最後の最後だったりするわけで、視聴者的には「いまいちピンとこない理由で地球をぶっ壊そうとしているキャラ」にしか感じられず、物語の広がりにおいてけぼりを食らったような感が否めません。

 あと変身バンクがいくらなんでも長すぎです。前作ジードで約40秒あった変身バンクが、兄弟二人のせいで約一分にまで伸びました! しかもこれにタイプチェンジ時のバンクも存在します。いくら変身アイテム売りたくてもやりすぎですバンナムさん。
 以上により、「特撮面においては比類ないレベルにまで昇華したものの、脚本に問題点を抱えた」作品という評価をせざるを得ません。。どことなくこの評価はウルトラマンXに近いかもしれませんね。しかし脚本に問題点があるにせよ、その特撮技術はスルーするにはあまりにもったいない作品です。ウルトラマンR/B、オススメです。



 以上がウルトラマンの、いわゆるニュージェネレーション作品のレビューになります。ギンガSを除いて、どの作品から入っても大丈夫なものばかりです。気になった作品があったら、是非見てくださいね。