平和的なブログ

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「めでたしめでたし」の先のお話と、ロマンシング サ・ガ2について

 桃太郎の最後は「鬼退治を終えた桃太郎はおじいさんとおばあさんの元へと帰りました。めでたしめでたし」です。
 一寸法師の最後も「鬼退治を終えた一寸法師は打ち出の小槌で大きくなり、娘と結婚して暮らしました。めでたしめでたし」です。
 ドラゴンクエスト1のエンドも、2のエンドも、「魔王は打倒され世界に平和が戻りました。めでたしめでたし」です。ドラゴンクエスト3ではラスボスであるゾーマが次なる魔王の復活を示唆することを最後に言い残しながら死ぬけれども、主人公たちが1の主人公の祖先、ロトであることがわかり、「たとえ次なる魔王が現れても、子孫が戦い勝利する」物語であるとわかって完結するというもの。
 私のブログの読者なら「そんな教科書レベルで知られている事柄を並べていったいどうしたんだ?」と思うだろうけれど、さて皆さん、2のラストのあと、邪神シドーを打倒したあとの話はご存知ですか? そこそこ知られている事実ですが、実はGBA用ソフト「ドラゴンクエストモンスターズ キャラバンハート」にて描かれています。2の数百年後の世界が舞台のこのゲームでは、なんと2で登場しているロトの子孫の国、ローレシアサマルトリアムーンブルクの三国は全て滅んでいます。ローレシアサマルトリアの王子二人はシドー討伐後、しばらくで行方不明になっており、ムーンブルクも再建されたものの、再度滅亡してることがわかります。
 なぜこのような事態になってしまったのか? それを補足している作品があります。ドラゴンクエストモンスターズプラスという漫画にてこれらについて詳しく描写されてます。
 2のラストにて、復活したバズズが世界に不信をばらまいた。「破壊神が倒されたということは、それよりもさらに力を持ったものが生まれたのではないか?」というもの。おかげで人々から恐れられ孤立するローレシアの王子。「破壊神を破壊した男」という名を与えられ、そして自分から姿を消した……というもの。この漫画自体最高に面白いので、ぜひ皆さん読んでみてください。
 物語のラストは「めでたしめでたし」。けれど、果たしてその物語の先は、ハッピーエンドが続くのでしょうか? 「めでたしめでたし」で終わっていいのか? この疑問に対してすでに一つの答えを提示した作品があります。1993年にスーパーファミコンにて発売された名作RPG、「ロマンシング サ・ガ2」です!

 名作RPGとして名高いこのゲームですが、その肝は戦略性の高いバトルシステムと、どのイベントをスタートさせてもよいフリーシナリオシステム、そして個性豊かな七英雄といった要素であり、ストーリーはどちらかといったら、そのゲームプレイの彩りをつけるフレーバー的な扱いをされることが多いかと思います。(発売当初にはかなり賛否両論だったそうで)それもそのはず、このゲームのストーリーは、表面上は「かつてモンスターを退けた七英雄が復活したけれど、人間も襲ってきたので皇帝が伝承法(皇帝の記憶と能力を、次代の皇帝にそのまま引き継ぎさせる術)を使って強くなって反撃する」というものでしかないのです。これはフリーシナリオシステムを採用しているため、従来の一本道RPGのような大きな起承転結で構成されるストーリーは作りようがないためでしょう。
 そのかわり、七英雄のキャラクター性は強く押し出され、各地のイベントが物語を盛り上げるための起承転結を構成しています。その結果、「七英雄を打ち倒すまでの歴代の皇帝と帝国の激しい攻防記」というストーリーが出来上がっていくのです。
 そして最後、見事強敵七英雄を倒した最終皇帝は、退位し、帝国は共和制へと移行し、最終皇帝は次第に忘れ去られ、詩人が歌う唄の中の存在へと変わっていくのでした。しかし一人寂しく酒場に佇む元皇帝の元に、かつての仲間たちは訪れるのでした。そう、人々は忘れていても、仲間たちは決して皇帝のことを忘れてはいないのです。めでたしめでたし……。
 ロマンシング サ・ガ2はこのようなエンディングを迎えます。ちょっとお待ち下さい。貴方は不思議に思いませんでしたか? 「なぜ最終皇帝は退位せねばならなかったのか?」。それを読み解くには、すこしばかり苦労します。実はこのゲーム、七英雄の背景をかき集めると、同じエンディングなのに違った顔を見せるようになります。そもそもなぜ、かつての英雄たちは人間たちを襲うようになったのでしょうか?

 皇帝に伝承法を伝えたのは、占い師オアイーブ。しかし伝承法を伝えた数千年後の世界においても、オアイーブはその姿を保ったまま皇帝の前に姿を表します。いったいなぜ? その時、オアイーブは真実の一端を語りだします。

 かつてこの世界は、古代人が支配していました。気象や地形すら自在に操ることができた彼らは、ついに寿命すら克服することに成功した。「同化の法」。自分の魂を他の体に移すことで永遠に生きることが可能になったのだった。そしてそれに使う他の体とは、彼らが奴隷用として使っていた短命種……つまり今の皇帝たち、普通の人間。
 そんな古代人たちが次に恐れたのは、寿命ではなくモンスター。モンスターに襲われればいくら寿命がない彼らでも死が訪れる。そんな中、立ち上がったのが七英雄。彼らは同化の法を改良し、モンスターと融合してその力を吸収することで、より強くなり、モンスターと戦い続ける。七英雄は、本当に英雄だったのです。
 しかし強大になりすぎた力が、倒すべきモンスターを倒しきった時……古代人に向けられてしまったのです。そう、七英雄はまさしく、「モンスターを超えた力を持つ者」になってしまったのです。七英雄を恐れた古代人は、次元の転送装置を作り上げ、それにより七英雄を別の次元へと追いやってしまいました。それと同時に巨大な天変地異が起こることを予期し、古代人の多数はその転送装置にてまた別の次元へと逃げ込みました。オアイーブ含む、少数の古代人一派を残して。
 古代人の多数がいなくなり、かつ天変地異を襲ったことでこの世界の支配者はかつて奴隷であった短命種……皇帝たちの種族に映りました。彼らは別れ、国を作り上げ、それぞれに文化を作り上げました。オアイーブ一派は彼らを飛ばしてしまった責任を感じ、あえて次元を飛ばす、そのまま辺境に静かに隠れ住み、存在を歴史から消そうとしています。いずれ彼らは、この世界へ戻ってくるのだろうから。
 そして世界に、再び七英雄は帰ってきます。次元を超え、自分たちを裏切り、ないがしろにした古代人へ、復讐するために。彼らはもはや英雄ではなく、復讐鬼へと堕ちていました。しかし復讐すべく古代人はすでにこの世界におらず、別の次元に逃げ込んでいました。彼奴らを追いかけるために七英雄は各地に散らばり、情報収集をすることになります。その際、かつての奴隷、短命種に被害が出ようとも関係ありません(それどころかクジンシーやボグオーンあたりは完全に世界征服を企んでいる)。オアイーブはそれを見て決心します。
「今の彼らは7ひきの
モンスターでしかありません。」

「私たちは彼らに殺されても
仕方ありません。」

「しかし、あなた方に罪はありません。」

「あなた方には身を守る
権利があります。
ですから、その手段として
伝承法をお教えしました。」

 数年年の時を超え、オアイーブは初めて自らの真意を皇帝に語ります。自ら七英雄をモンスターにしてしまった罪、それを贖罪する中に、短命種を巻き込んではならない。伝承法はかつて七英雄が自らに施した同化の法の、短命種用へ調整された改良版であったのです。しかしそれにも限界があり、いわゆる「最終皇帝」で、伝承法は最後となります。その最後となった皇帝は、見事七英雄の最後と、彼らの本体を打倒し、七英雄を完全に葬り去ることができました。めでたしめでたし……。そう、ここでようやく上記の話とつながるわけです。七英雄の背景を見たあと、最終皇帝が取った行動をみるととても腑に落ちる動きになっていると思いませんか?

 七英雄はモンスターを超える存在になり、モンスターを打倒したあと……自らがモンスターへとなっていってしまいました。最終皇帝は七英雄を超える存在になってしまい、七英雄を打倒します。最初こそは真の英雄としてもてはやされることでしょう。しかし直に、それは恐怖へと変わることでしょう。……ローレシアの王子を恐れた人々のように。最終皇帝はそれを知っていました。オアイーブの言葉から、戦った七英雄から。自らモンスターとなることを封じるために、彼は皇帝の座を退いたのです。そして民衆の記憶から忘れ去られることを、自ら望んだのです。それが平和を永らえる道だと信じて。
 エンディング、無人の酒場で皇帝は静かに酒を飲みます。思い浮かぶのは今までの皇帝の記憶。彼らと共に戦ってきた仲間たちの幻影。長い長い戦いの歴史を1人抱きしめながら孤独の人生を歩むのです。……いえ、孤独ではありません。かつての仲間たちが皇帝たちの元へ、再び訪れました。そう、人々は忘れていても、仲間たちは決して皇帝のことを忘れてはいないのです。めでたしめでたし……。
 
 最終皇帝が選んだ手段は自己犠牲を含んだものであり、かつかつての七英雄の悲劇の歴史を学んだものであるといえます。一度エンディングを迎えたあとのストーリー。その後に生まれた悲劇を、二度と起こさないように選んだ最善の道でしょう。人は歴史に学びます。たとえそこから悲劇が生まれたとしても、人の記憶はそれを乗り越えることができる……。ロマンシング サ・ガ2のエンディングは、いわば二度目の、真のエンディングと言えることでしょう。そんな自己犠牲をした最終皇帝のもとにも、ちゃんと仲間は集うのですから。
 そう、ドラゴンクエストモンスターズプラスのローレシアの王子も、戦いのはて、かつての仲間と集まり救われることができました。共に戦った仲間がいること。彼らとのつながり、それがあるからこそ「めでたしめでたし」でお話を締めることができるのではないでしょうか。