平和的なブログ

ゲームのことばっかり話してます。たまに映画とか。

男の意地と魂の物語 -龍が如く0-

 ダイナマイト刑事というアーケードゲームがかつてありました。3D見下ろし画面のアクションで、自機である刑事主人公を操作し、敵をぶん殴り蹴り飛ばし、そこらにある棒きれや鉄パイプを持ってぶん殴り、敵の銃を殴って落とさせてそれを拾い撃ちまくり、どのご家庭でも必ずおいてある冷凍マグロ(一本物)を拾って敵をぶん殴りその耐久力がなくなってバラバラになったらそれを拾って食べて体力回復というやってて声が出るほど笑えるバカゲーです。
 道中、いきなり敵が現れ攻撃してくるイベントカットシーンが差し込まれます。そこで表示されているボタンを的確に押せば敵を華麗にカウンターでぶっ飛ばします。今ではQTEといわれ私が死ぬほど忌み嫌っている要素ですが、この頃は頻度としてはさほど多くもなく(前半ステージなら1つか2つ程度)演出も凝っていたのでむしろ好きでした。


 このゲームを作ったところは書かなくてもわかるような気がしますが、もちろんセガ。現セガ・インタラクティブです。そして今回レビューする龍が如く0を作ったところであります。


 レビューにあたって予め明言しておかなければならないのですが、私はこの龍が如くシリーズを一本もやったことがありません。真島吾朗というキャラがいる、くらいの知識でどのような展開をするのか全く知らない状態です。今回はそんなレベルでしかシリーズを知らない奴がいきなり前日譚である龍が如く0をプレイしたらどう思ったか、くらいの内容のレビューです。私と同じ用に龍が如くシリーズを全く知らない人が「いきなり0からプレイしたらどうなるのかな」と思っている人、もしくは龍が如くシリーズをやり尽くしている人が「初見から0をプレイするとこうなるのか」といった視点から読んでもらうような内容になっています。お含みおきくださいませ。

 
 この龍が如く0,総評としてはとても上質なゲームだと思います。
 東京の桐生一馬と、大阪の真島吾朗というそれぞれ別の背景を持った男たち。一方はヤクザを辞めざるを得なくなり、もう一方はヤクザに戻るがために足掻いている。そんな彼らに降り掛かった災難、というストーリーは、いったいどこでこの二人の運命が交差するのだろうか? という疑問をプレイヤーに抱かせます。先の展開が予期できないものの、二人の話が進むたびに次第に薄ぼんやりと全体像が見えてくると「もしやこれは」というプレイヤーのハラハラ感が湧き上がります。「もしや」「まさか」に変わり、そして確信に至り物語は急転直下。衝撃の後、男たちが決着とけじめをつけた爽快感が残るエンディングが待っています。
 こういった骨太のメインストーリーの脇で、町を自由に駆け回ることができ、勝手にサブストーリーも展開します。男たちの意地と執着がぶつかり合うメインストーリーとは打って変わって気の抜けた笑える展開が多いのがこのサブストーリーです。ゲームの行列に並んでようやく新作ゲームを買えた小学生がカツアゲにあってしまい、カツアゲしたゲームを取り返しに不良高校生のところへ向かうと、その高校生も別のチンピラにすでにゲームをカツアゲされていた…というものや(このサブストーリーの落ちは是非確認してみてください)、消費税導入に関わった官僚が酔っ払いに絡まれていたのを助けると(このゲームの部隊は消費税導入の頃の1988年です)お礼に税金講座が始まり、その応対で官僚が「消費税はもっと上げられる……?」「ガソリンやタバコの税金をもっとあげても文句はでにくい……?」といった怖い発言を漏らしたりとするというブラックジョークがキレているものだったりします。


 町を自由に駆け回ることができますが、同時にいつ戦闘になってもおかしくありません。チンピラや酔っぱらいは主人公たちの姿をみると自動的に喧嘩を打ってきます。シームレスに戦闘へと移行するのですが、その戦いがまさしくダイナマイト刑事を彷彿とさせる代物でした!
 ちかくに自転車があればそれを持ってぶん回す! パイロンがあれば投げる! 石像があれば壊れるまでそれでぶん殴る! そうして敵をぶっ飛ばしてヒートゲージを溜めたあとは極ボタンでトドメです。ボタン一発で自転車ごと敵を粉砕! 石像で押し潰してノックアウト! 演出が凝りに凝ってて見飽きません。真島吾朗のフルスイングもキレイでホームランです。
 メインストーリーの戦闘をすすめると合間合間に唐突にQTEが入ります。それも的確にボタンを押せば桐生一馬は華麗に敵の攻撃を避けカウンターを食らわします。ダイナマイト刑事の進化系がこの龍が如く0で見ることができました。


 しかし(ここで逆説の接続詞をつけなければならないのが本当に心苦しい)、進化系といえるのは演出部のみであったな、というのが私の感想です。


 このゲーム、戦闘のアクション部分の根幹は恐ろしく大雑把です。操作は通常攻撃、大攻撃、掴み、回避の4つで他にロックオンとガードがありますが、攻撃している最中は回避やガードには移行できません。かつ、途中で攻撃をキャンセルすることもできません。そのため一度攻撃を出したらできる限りスムースに他の敵を巻き込んでスタンさせるのを狙うのが定石になりますが、これがなかなかうまく行きません。相手の攻撃モーションが見えたとたん「あっ、これ攻撃食らうわ」とわかるのが結構なストレスになります。


 ストーリーをクリアしておいてあれなのですが、途中の銃を持っている相手複数体の対処は結局最善手がわからずじまいでした。銃で打たれると強制的にスタン状態になりかつAボタン連打をしないと立ち上がれない仕様なので、何が何でも銃を持っている相手を即潰しにいかないといけないのですが、複数人銃を持っている敵がいると困難を超えて不可能になります。そのうち一人を叩きのめしている間にもう一方が発砲 → 攻撃モーションに移っている真島吾朗は打たれてスタン → 殴ってた相手も復帰して撃たれる という極悪コンボが完成します。ちかくに武器となるものが落ちていれば範囲攻撃で巻き込むこともできますが、それをしている最中で撃たれればスタンになりかつ武器は手放してしまいます。


 こちらも銃を用意して即撃つということもできますが、このゲーム、銃は残弾制で即弾切れになります。基本殴るゲームなのに、この仕様は如何ともし難いものになっています。もしかしたら巧い立ち回りがあるのかもしれませんが、それをプレイヤーに周知できる流れになっていないのは減点対象でしょう。バットマンアーカムシリーズやベヨネッタのようなアクションゲームは巧いこと回避と攻撃を入り混ぜたゲームデザインに仕上げています。なんとかそこまで到達してほしかったと願わずにはいられません。


 そして、そして最大の問題なのですが、このゲームエンディングのスタッフロール後で人物紹介とともに今までのシリーズのネタバレをやってくれるんですよ! 
 私、シリーズやったことないんですってば!!! 好きになったメインキャラの死に様をさくっとしたテキストで知りたくなかったですよ!!! 
 いや、これは前日譚から始めた私が全般的に悪いんですけど、私のような目にあわないためにも、はじめて龍が如くシリーズをやってみようという方はご注意ください。めちゃくちゃビックリしましたから。


 難点を上げてはいますが、そのアクション部分も難易度をイージーに落とし、かつ回復アイテムを多めに用意すれば、アクションが下手な人でもクリア自体は困難ではないゲームだと思います。男たちのドラマであるメインストーリーは是非プレイして涙してもらいたい(とくに幼馴染である錦山との絡みは涙と燃えが止まりません)と思います。


 最後に、このゲームを私はXBOX GAMEPASSにてプレイしました。このサービス凄すぎます。