平和的なブログ

ゲームのことばっかり話してます。たまに映画とか。

最高のRPGとその戦闘について -ゼノブレイド-

 RPGには戦闘がある。

 戦闘には攻撃と回復がある。

 攻撃ばかりでは強敵には勝てないし、回復だけしていてもいずれはMP(もしくはそれに類する概念)がなくなり回復アイテムが尽きて敗北だ。


 レベルをあげて物理で殴りたおせる場合もあるだろうが、いかにして強敵を倒すか、そこがRPGの戦闘のミソになる。戦術、戦略はプレイヤーが考えなければならない。装備といった事前準備も必要だ。


 さて、もし回復アイテムの概念がなく、MPの概念もなく、回復スキルが使い放題のRPGがあったらそれは面白いだろうか?
 「それじゃ自分の回復量が相手の攻撃力を上回っていたら絶対に勝てちゃうじゃないか。面白くないよ」と思う人がいるかもしれない。


 そこを乗り越えて世紀の傑作に仕上げたゲームがある。当ブログで紹介するのも今更過ぎて恥ずかしくもあるが、10年前にWiiで発売されたゼノブレイドがそうだ。私と、おそらくこれをプレイした多数のプレイヤーがWiiの中の最高傑作ソフト」として挙げるソフトである。任天堂が発売し、モノリスソフトが開発したこのゼノブレイドの戦闘部分を中心に、如何にこれが傑作なのか、語っていきたい。



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 ゼノブレイドは移動と戦闘がシームレスに行われるタイプのJRPGだ。巨大なフィールドをきままに動いていると、そこにはごく当たり前のように敵が生活している。こちらの姿を察知すれば襲ってくる敵もいれば、こちらが攻撃をしかけない限りは襲ってこない敵もいる。また、攻撃意欲盛んな敵もこちらのレベルが上がれば流石に襲ってこなくなる。




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 戦闘に移行しても、メイン攻撃は自動的に行われる。プレイヤーが操作するキャラクターは勝手に剣を振るいダメージを与えていく(これをオートアタックという)。プレイヤーはその他に事前にセットした「アーツ」で攻撃するタイミングを選ぶことができる。アーツには多彩な効果があり回復するアーツも存在する。一度使ったアーツはリキャストという待機時間を挟み、再度使用することができる。MPを消費するといった概念はなく、アイテムという概念もない。ただただオートアタックと、アーツとの組み合わせ(その他オートアタックをすることでチャージが進みそれを完了させて放つ特別な必殺アーツもあるが)で戦闘が成り立っている。しかも戦闘が終わるとHPはものすごい勢いで回復する。



 まさしく「自分のHP回復量が相手の攻撃力を上回っていたら絶対に勝てる」ゲームなのだ。さて、なぜそんなゲームが面白いのだろうか。このゲームの戦闘は奥深いが、何より素晴らしいのはその奥深さに進ませる導線と、奥深く進まなくてもよいという選択肢の両方をきちんと提示していることになる。
 

 詳しく説明していこう。このゲームの敵キャラクターのHPはかなり高めに設定されている。オートアタックだけでは一回の戦闘は非常に長引いてしまう。そのためプレイヤーはアーツの活用を思いつく。MPの消費がないのだから待機時間が終わったら即使ってしまってダメージを加算させればよいとすぐに気がつくはずだ。そのアーツの中に「背面特攻」「側面特攻」という概念があることにも目が行くだろう。敵の横から、後ろからあてれば2倍、3倍にダメージが伸び、もともと高威力なアーツがさらに効果的にあたり、敵のHPが一気に削れていく。それが楽しい。



 そうして高威力のアーツを連発すると、敵の反撃が起きるようになり、こちらを向くようになって思うように背面や側面が取れなくなるだろう。このゲームの戦闘にはヘイトという概念が存在し、敵により大きなダメージを与えたアタッカー、回復力の大きなヒーラーにヘイトが向くようになり、攻撃が集中するようになる。高威力のアーツをあてれば余計にそうだ。アタッカーやヒーラーは打撃に弱いため、盾役であるタンクにかばってもらうことになる。タンクは挑発アーツや範囲攻撃アーツを活用して多くの敵のヘイトを自分に向けさせる。そうして回復量が敵の攻撃力を下回るような事態を防がねばならない。


 タンクのヘイト管理を補助する概念もアーツに組み込まれている。特定のアーツには「崩し」「転倒」「気絶」を敵に与えるものがある。
 まずは「崩し」を付与させ、そこに「転倒」させるアーツをぶつける。そうすると敵は崩れ一定時間攻撃ができなくなる。さらに「気絶」のアーツをあてることで敵の行動不能時間はさらに伸びる。

 
 こちらは3人パーティで、一人を操作しのこり二人がCPU操作となるが、このCPUが非常に優秀だ。こちらが崩しを付与した次の瞬間、即転倒アーツで敵を攻撃してくれる。気絶アーツを持っていれば流れるように気絶にまで向かわせることができる。こうして敵の攻撃不能時間を伸ばすことでHP回復アーツの待機時間を稼ぐことができる。たとえ相手の攻撃力が自分たちのHP回復量を上回っていても戦術でそれをひっくり返すことができるのだ。
 これができるようになっているのがゼノブレイドの戦闘の醍醐味だ。アーツ自身も経験値とは別の概念でレベルアップすることができる。崩しができるアーツを重点的に成長させ待機時間を短くさせることができればその分ダイレクトに相手を転倒、気絶させることができる時間が伸びていく。攻撃力が高いアーツをさらに伸ばすのもいいだろう。アーツの種類は多彩に渡るため、仲間のアーツと組み合わせてどのような効果を狙うか考えるといい。考えれば考える分ダイレクトに戦闘時間が短くなる。
 
 

 そしてそれらのアーツは装備品でも変わっていく。装備品には「ジェム」と呼ばれる宝石をセットできるようになっているものが存在し、敵が落とす結晶をジェム化させてそれをセットすることで様々な効果を付与させることができる。
 HP増加は一番わかりやすいジェムだ。素早さアップ、筋力アップもつけた分だけダイレクトに戦闘に作用する。移動速度アップも便利だ。そして中にはヘイトダウンやヘイトアップ、気絶時間増加、炎・氷属性強化というジェムもある。弱点を補うようにつけるのもいいし、攻撃をより伸ばす方向で調整してもよい。貴方が試行錯誤した分、やはり戦闘時間は短くなる。
 


 そしてもう一つ、重要な要素がある。仲間たちは各自それぞれ独特なスキルが用意されていて、それは経験値を獲得するたびに順次解放される。そして仲間同士が強い絆で結ばれるとそのスキルを仲間に分けることができるのだが、これの組み合わせにより戦い方が一変する。


 有名所でいうと回避タンク役であるダンバンの持っているスキル「粋の境地」は防具を一つも装備しないと素早さが大幅にあがる。自分より上位レベルのボスを倒す際、素早さを底上げするのは必須になるため、このスキルは大いに有効だ。そのためパーティメンバー全員がこのスキルを繋げていくと、全員が裸でボスの攻撃を避けまくる事態になる。(終盤になると素早さアップのジェムを体につけきったほうが素早さの伸びは良くなるが)


 また、主人公シュルクのスキルに「チェインアタック(パーティ全員で攻撃する特殊必殺技)終了時全員HP5%回復」というものがある。これをメンバー全員につなげれば効果が重複し15%が回復となる。チェインアタックに必要なゲージは仲間と連携することで溜まるため、シュルク含めたアタッカー二人、タンク一人の構成にするとあっというまにゲージが溜まる。そのためHPが大きく削られる前にチェインアタックを繰り出し、それでHPを回復させるという戦術が生まれる。敵が固くなり始めた中盤以降で活用できる。
 スキルは複数個つなげることもできる。中盤以降、どんな戦術が生まれるか色々と試すのが楽しい。ヒーラー・カルナのエーテル力をアタッカー・メリアにつなげて無敵砲台に仕立てるのもおすすめだ。メリアは自キャラ操作で無限の可能性を秘めているキャラだ。アタッカー・リキの意外な回復力も見逃せない。


 さて、ここまで何度も「試行錯誤した分、戦闘時間は短くなる」と繰り返してきたが、「私、そういうのは苦手です! 戦闘がターン制じゃない時点でもういっぱいいっぱいで」という方もいるはずだ。ゼノブレイドの売りは戦闘だけではない。広い世界、魅力的なキャラクター、そして壮大なストーリーもだ。それらを味わうために難解な戦闘に挑まなければならない、というのが苦痛になってしまう人だっているはずだ。



 ゼノブレイドはそのような人たちに対しても真摯に対応した。



 このゲームの戦闘はレベル差が非常に大事だ。敵と自分とのレベルに一定量の差がつくと、ダメージに急激な補正がつくようになる。自分の攻撃はキモチイイくらい相手に決まり、相手の攻撃は何発くらっても致命傷にならなくなる。さらにレベルに差がつくと負けることのほうが難しいほどである。逆に自分より高レベルの相手に立ち向かう場合には装備やアーツの種類を吟味しないとそもそも攻撃が当たらない。かわりに経験値補正もつくため弱い敵相手に経験値稼ぎをするのは難しいが、強い敵を一体倒しただけでもレベルアップすることもあり得る。


 「弱い敵相手に経験値稼ぎがしにくいのならやっぱり戦闘は大変じゃないか」と思うかもしれない。このゲームの経験値は、戦闘だけで手に入るものではない。広大なマップを探索して重要拠点を見つけたら経験値が入る。人の探しものを見つけた、といったクエストをこなしたら経験値が入る。全滅した、敵を何回倒した、といったリワードを獲得すると経験値が入る……と、ことあることに経験値が入るような仕様になっている。戦闘を避け、マップを隅から隅へと探すだけでどんどんレベルは上がっていくのだ。そしてある程度レベルがあがれば自動的に自分たちのHP回復力が相手の攻撃力を上回るようになってくる。


 
 貴方には2つの方法論が提示されている。一つは試行錯誤を繰り返し、高レベルな敵へと立ち向かい続ける道。そしてもう一つは世界を楽しみ、人々と交流して強くなる道だ。しかもこれらは排他ではなく、両立させることもできる。高レベルな敵に戦いを挑み挫けたあと、寄り道していけばそれは経験値へと繋がりレベルアップとなる。レベルアップ後に再戦を挑んでもそれは恥でもなんでもない。低レベルで進むのも一つのスタイルではあるが、唯一の正解ではないのだから。


 このゲームの戦闘に対するスタイルは最終盤に現れている。ラストダンジョンに向かう前、今まで行ったことがある特定のダンジョンにレベル100超えをする超強敵モンスターが現れるようになる。主人公らのレベルは99で終わりだ。もちろんラスボスよりも遥かに強い。レベル差補正が絶対につく状態で、彼らを打ち砕くことが出来たら……貴方はこのゲームの戦闘を、完全に理解したことになるだろう。



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 彼らはストーリーに全く関係がない。貴方は彼らに挑戦してもいいし、しなくてもいい。ここまで奥深い戦闘システムを構築しておきながら、「戦闘を無理にこなさなくてもいいですよ。このゲームはそれだけではないのですから」と言い放っているのだ。モノリスソフト、恐るべし。