平和的なブログ

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竜退治の先にあったドラゴンクエスト -メタルマックス2-

注意! このレビューではメタルマックスシリーズと、ドラゴンクエストシリーズのネタバレを多分に含んでいます。

 

はじめに -メタルマックスとは-

 かつてのファミコン時代『竜退治はもう飽きた』というキャッチコピーで売り出せたゲームがありました。今のゲームを振り返ってみると、ハンターは竜退治をし、竜を倒す冒険のナンバリングは11を迎え、吹き出る温水に乗って雪山の山頂付近に着地し秘境を見つけた後には名を冠するドラゴンが舞い降りてくるのです。

 

 ようするにみんな竜退治が大好きなのです。これはどうしようもありません。王道は褪せることがないからこそ王道なのです。しかし同時に、それに対して刃向かってしまいたくなるのも、これも人の性か、と神がいうほどありふれた行為でもあるのです。

 

 話をもどしましょう。『竜退治はもう飽きた』と銘打ったゲームは『メタルマックス』。文明が崩壊し、荒れ果てた荒野に賞金首モンスターを狩るためハンターたちが戦車に乗り込み疾走する……そんな近未来と西部劇が合体したような、火薬と鉄の匂いが似合う一風違う世界観のRPGは、ファミコン時代後期、剣と魔法の世界観のゲームがボコボコと溢れた後に登場しました。

 

 刺激的なキャッチコピーは明確にこのゲームがアンチ・ドラゴンクエストであると示しています。しかし同時にこのゲームは『自分たちなりのドラゴンクエストを作ってやろう!』という気概に溢れた作品でもありました。なぜなら、これを作った人たちは元々ドラゴンクエストを作ったスタッフだったのですから。

 

 詳細はこのインタビューにて語られているので是非読んで頂きたいのですが、メタルマックスの主要スタッフはかつてドラゴンクエストの1から3までの開発に参加していたことがあったのです。

 しかしシナリオライター堀井雄二との方向性との違いにより彼らは独立、そして己のセンスを注ぎ込んだメタルマックスを作り上げることになりました。

 

 根強いファンが出来、舞台をスーパーファミコンに移し改めて作り上げたのが今回紹介するソフトメタルマックス2になります。高品質なグラフィックのみならず、進化とお遊びをふんだんに取り入れた上にゲームバランスも素晴らしくよくできているという出来栄えです。 前作の反省点を活かし、短所を潰し長所を伸ばした結果といえるでしょう。

 

 さてこのメタルマックス2ですが、このソフトは如何にドラゴンクエストと違うのか、そして如何に根源が同じなのか、というところに重みを置いて、ドラゴンクエストとの比較を行いながらレビューを行いたいと思います。

 

 

魔王という発明品 -目的の明示-

 

 ドラゴンクエストにおいて(というか多数の中世ファンタジーRPGにおいて)、旅に出る理由付けは「魔王退治」であります。1作目は竜王が、2作目は大神官ハーゴンが、3作目にはバラモスが「理由を抜きにして魔物を引き連れ人間たちを襲ってくるので、倒さねばならない理解不能な相手」として存在する状況に追いやられています。これはプレイヤーにとって非常に説明しやすく、また感情移入しやすい状況に最短距離で持っていく発明といえるでしょう(発明したのはドラゴンクエストではないでしょうが)。

 

 しかしメタルマックスは中世ファンタジーRPGではありません。近未来の世界に魔王はいないのです。しかしモンスターや賞金首は出さねばなりません。

 

 これを解決したのが「スーパーコンピュータ・ノア」です。かつての人類が作り上げた地球環境の汚染を救済するための打開策を見出すための超AI。しかしノアは「人類がいるかぎり地球の環境汚染は改善されない」という答えを出してしまい、文明を滅ぼすために各地にミサイルを打ち込み、文明を破壊したあともモンスターや自律殺戮兵器を生み続け、人類の滅亡を企み続ける存在。メタルマックス1のラスボスはこの超AIとなりました。メタルマックス1は魔王退治ではなく、ノアを打倒し世界を救うハンターの話なのです。

 

 ちなみにメタルマックス1の主人公はただの修理屋の倅だったのですが、ゲーム開始直後に父親にモンスターハンターになるんだ!」と啖呵を切ってしまったために勘当され、流れ流されてハンターになるという物語展開を迎えています。それが最終的には世界を救うハンターとなった……という面白みがあるんですね。

 

 さて、今作メタルマックス2「魔王役」はどうなったのでしょうか。1と2は世界観が非常に似通っていますが、共通と明言されていません。ノアを続投させても良かったのでしょうが、今作では「バイアス・グラップラーという組織が主人公を旅に向かわせる敵として確立しています。

 

 主人公はまだ半人前のハンター。幼い頃に孤児だった彼を拾い育ててきた女ソルジャー、マリアは彼を連れて依頼を受けたマドの町へとやってきます。この町はバイアス・グラップラーと呼ばれる人間狩り集団に狙われていて、それを守るためにマリア他、名うての用心棒たちが集まり迎え撃った……という導入からゲームは始まります。

 やがて人間狩りははじまり、グラップラーたちが町を襲撃するのですが、それをマリアや用心棒たちが軽く一蹴します。しかしグラップラー四天王」の一人である「テッド・ブロイラー」が姿を表わし圧倒的なパワーで用心棒たちを焼き尽くします。残ったのはマリアと主人公のみ。マリアは最後の最後まで主人公をかばい続けるのですが、やがて事切れ主人公も炎の中に焼かれていきます……。

 

 主人公が目を覚ますと、そこはベッドの上。主人公は酷い火傷を負っていたものの、唯一生き残っていたのでした。マドの町の人たちもその大勢を人間狩りで攫われてしまったものの、隠れて生き延びた人たちがいたのです。そのうちの一人の少女が主人公を助けてくれたのでした。

 動けるようになった主人公はバイアス・グラップラーに、テッド・ブロイラーに復讐するために旅立つことを決めたのでした……。

 

 このような導入部を迎え、ゲームは始まります。どことなく、ドラゴンクエスト4の第5章を彷彿とする展開(主人公が隠れ住む山奥の村に、魔王が魔物を引き連れ襲ってきて、幼馴染の少女の犠牲の上に主人公が唯一助かる)ではありませんか? 村が焼かれる、大事な人を失う、といったイベントから物語が始まるのは王道です。メタルマックス2においては「文明崩壊後という特殊な世界観」「倒すべき敵の明示」「主人公への感情移入」といった複数の宿題を、この王道イベントを通すことで一気にやり遂げたのです。まさしくこれこそ「自分たちなりのドラゴンクエストではないでしょうか。

 メタルマックスの主要スタッフはあくまでドラゴンクエスト1-3までのスタッフであり、4以降は関わっていません。それなのに似たイベントで始まるのに面白さを感じませんか?

 

目的地の指示と、探索の報酬

 

 さて、そんな劇的なスタートを切った導入部が終わり、いよいよ旅をすることが可能になりましたが、実はメタルマックス2においては「どこどこへいけ」「何々をしろ」と明確に指示させることはそこまで多くはありません。いわゆるフリーシナリオに近く、重要な箇所でのイベントを除けば多数がスキップ可能です。16体いるうちの賞金首モンスターのうち、倒さねばならない敵はわずか5体で、その他で倒さねばならない中ボスは数体です。 

 

 序盤で貰えるヒントも「主人公を助けた女の子のおじいさんがエルニニョの町へ言った」「エルニニョの町は東の砂漠を超えたところにある」「エルニニョの町は今グラップラーが支配していてやばいことになってる」くらいで、危険さを匂わせつつも主人公にはっきりとは「そこへいけ」とは言いません。直接的な指示を忌避するのはドラゴンクエストでも同じです。

 

 メタルマックス2の面白いところはそれに付属して「探索の楽しみ」も感じられるようなマップデザインを施してあるところにあります。エルニニョの町は東にあります。では、西にいくとどうなるのでしょうか? すると山脈の行き止まりの手前に一軒家があり、そこには飲んだくれの男が住んでいました。話しかけると、「エルニニョの町は反対方向だ」と教えてくれます。そして家から出ようとすると、その男が「どうして妻は出ていってしまったんだよぉ」と泣く声が聞こえてくるイベントが発生します。……ストーリーとは直接的に絡むことではありませんが、つまりプレイヤーに対して「目的地は逆だけど、この世界にはこういう風にいろんなところにいろんなイベントがあるんだよ。是非探してみてね」というメッセージを送っているのです。

 

 では素直にエルニニョの町を探して東に行った場合はどうなるでしょうか? 東にいくと、谷間にある小さな施設を発見しました。そこは名もない酒場。補給することと、エルニニョの町の情報を得ることができました。

 今度は北に砂漠を超えることで、ついにエルニニョの町を見つけることができるのですが、その町は破壊されたビル群の中にぽつんとあるのです。この世界が文明崩壊後にあることを改めて確認できるようになっています。

 

 このゲームの主人公は、最初の時点で未完成のマップを有しています。移動のたびにマップがアンロックされていってどんどん詳細になっていくようになっているわけですが、「探索すればかならず何かがある」というデザインと絡み、隅々まで探してやろう! という気にさせてくれるものに仕上がっています。

 物悲しいストーリーが背景で流れていたとしても、探索はプレイヤーにとって楽しいものでなくてはならない。これはドラゴンクエストとの共通点ですね。

 

ドラゴンクエストがやらなかった「探索」と金属探知機

  

  さて、そんな共通点があるメタルマックス2ですが、明確にドラゴンクエストにはなかった要素が存在します。それは「フィールド上にアイテムが落ちている」ということです。PS2時代に進み、3Dフィールドを実装したドラゴンクエスト8ではフィールド上の宝箱が実装されていますが、この時代のドラゴンクエストには「フィールド上を調べても落ちているアイテムは存在しない」というのがありました。これは仕様としては当然かもしれません。一マスごとに移動して「しらべる」を繰り返すのはさすがに労力です。かわりに(4以降は)町や洞窟のなかで、あやしげな場所にちいさなメダルがおかれているようになりました。

 

 メタルマックス2においてはダンジョンや町の中に宝箱変わりの「木箱」がおかれているのですが、そのほかに普通にフィールド上に強力な武器・アイテムがおかれています。そしてその場所はノーヒントです。これでは場所を探すだけで大変な労力なのでは? 

 これをメタルマックス2は金属探知機というアイテムで一気に解決に導きました。中盤のイベントで手に入れるこのアイテムは、使用すると主人公の周囲を自動で探し、怪しいところを見つけ出してくれます。そして同時に「このイベントだけではなく、フィールドのあちらこちらにアイテムが落ちている」ことも教えてくれます。

 

 そうなるとどうでしょうか? 今まで歩いてきたフィールドも戻って金属探知機で探してみたくなりませんか? するとなんと、本当に強力なアイテムがあちらこちらに落ちていることに気が付くのです! 進みすぎて時代遅れになってしまった武器も、売り飛ばして改造費用にすることが可能です。今まで何の気なしに進んでいたフィールドが一転し、宝箱に変わったのです。探索済みの場所を再度探索する喜びを、プレイヤーに与えることに成功しているんですね。

 

 ドラゴンクエスト1において、ロトのつるぎ竜王の城の最深部ではなく、途中に置かれている理由はご存知でしょうか? それは強い武器を存分に味わってもらうため、なのです。最深部においてしまっては、それを味わい切る前にラスボスである竜王との戦いに赴いてしまうわけです。

 メタルマックス2のフィールド上に置かれた強力なアイテムは、まさしくこれに相当します。探索で手に入れた装備は、強い敵、次なる賞金首モンスターに効果的なダメージを与えることができ、思う存分その強さに酔いしれることが出来ます。

 

 ドラゴンクエストはあえてしなかったことを、メタルマックス2は金属探知機というアイデアで乗り越えて実装し、成功したといえるでしょう。(なお、ドラゴンクエスト6以降はレミラーマという呪文が追加され、「アイテムがある場所を光らせる」というアイデアを実装しています)

 

旅は辞めることができる。しかし辞めることは出来ない

 

 メタルマックスシリーズの恒例イベントですが、ラスボスを撃破する以外にエンディングを迎えることが可能です。それは結婚し、ハンターを引退するというものです。メタルマックス2でも命の恩人である娘と結婚し、「引退しその後も慎まやかだが幸せな生活を送った」というエンディングを見ることが中盤以降ならいつでも可能なのです。プレイヤーはつまり、ラスボス撃破以外の好きなタイミングで己の物語にピリオドを撃つことができる権利を与えられているのです。

 

 メタルマックス2の巧妙なところはそのような選択肢を上げておきながら、決してプレイヤーに引退エンドで終わらせて満足させようとはしないストーリー展開を繰り広げることです。

 主人公の目的はマリアの敵、テッド・ブロイラーを倒すことにあります。その旅の中で仲間に出会い、戦車を手に入れ、強くなり、次第に敵組織グラップラーの存在理由を知っていくこととなります。

 

 文明が崩壊する前、一人の天才科学者が己の難病に絶望し、研究所の一室にこもりっきりになった。己の病気を、なんとかして治すために。死から逃れるために。しかしその後文明崩壊の日が訪れ、研究所と共に埋もれて姿を消した……。しかし彼はその意識をスーパーコンピュータに移植することに成功していたのです。そのコンピュータは己が破壊されること、つまり死を恐れました。そのためコンピュータの現状維持と、防衛システムの再構築、さらなる究極生命体の創造……。各地で暴れていた賞金首モンスターは、このコンピュータが作り出したものでした。そしてグラップラーは、実験を続けるための生体細胞を手に入れるために人間狩りを行うために作られた私設武装集団だったのです。

 

 そんな真実を知った主人公とプレイヤーは、はたしてテッド・ブロイラーを倒したあとでも「ああ仇が打ててよかった。ここで旅を終えよう」と区切り、戻って引退することができるでしょうか? 各地で人間狩りの被害にあい、グラップラーたちに支配され、賞金首モンスターから逃れる人々を今まで散々見てきたのです。主人公はセリフを一言も発することはありません。しかしプレイヤーの意図を汲み行動することができます。彼はプレイヤーの操作のまま、銃を取り、戦車を駆り、暴走するコンピュータへと立ち向かうのです。好きなタイミングで引退することができるという要素を組み込んでおきながら、ラスボスを倒しにいく動線はしっかりと組み込んであるのです。ここで引くことは、ありえないのです。

 

 プレイヤーと主人公の一体化は、ドラゴンクエスト3の終盤でも行われました。父オルテガが生きていたという衝撃の事実。しかしオルテガは息子を息子と認識する前に倒れて事切れてしまいます。その仇となるモンスターを倒したあとも、そのままプレイヤーは奥に進み魔王を倒そうとするのです。そう、暴走するコンピュータ、「バイアス=ブラド」は、まさしくメタルマックス世界の魔王として君臨することに成功したのです。

 

魔王としての存在、バイアス=ブラド

 

 すこしばかりラスボスのバイアス=ブラドについて語りましょう。これが天才科学者の意識を移植したスーパーコンピュータであることは先に述べました。それではその元になった天才科学者ブラド博士のことを補足したいと思います。

 

 生前のブラド博士がどんな人物だったのかは、各地で断片的に語られています。実業家でもあり、世界有数の巨大企業ブラド=コングロマリットの社長であったと。地球の環境汚染にも心を痛めており、化学の力でそれをなんとかしようとした理想家の面もあったと言われています。

 そんな善良な面が強いブラド博士も、難病により人が変わってしまいました。その後の運命は上で語られたとおりです。

 

 しかしメタルマックス2において、とある別荘地に行くことで少し違った視点を得ることができるのです。テニスコートとプールが整備されている保養地のそこは、文明崩壊した今では食用アメーバの養殖池と、ただで旅人を寝泊まりさせている施設になりました。なぜただなのか、というと……そこに幽霊がでるからです。

 

 事実、テニスコートにいくと老人と若い娘がテニスをしている幻覚を見ることができ(近づくと消えて、ボールの音だけが響き続ける)、別荘の中に入って部屋を見回すと老人と若い娘がベッドで寝ているのが見え、話しかけると骸骨と化したあと消えていく……という現象に遭遇します。

 

 そこの作業員たちに話を聞くと、この別荘地がブラド博士のものだったということがわかります。つまり、この亡霊の老人こそがブラド博士なのでしょう(若い娘は恋人か)

 

 実はメタルマックス2世界において、「幽霊」という存在が見えるのはこの別荘地だけだったりします。敵モンスターに幽霊・亡霊的なものはいませんし、賞金首モンスターも皆実体のあるものばかり。死者は、新鮮なものならばドクターミンチの蘇生術で生き返ることもあるのですが、そうでなければ朽ちていくだけの存在として描写されています。

 

 いえ、もう一つだけ幽霊的存在が出てくる場所があります。ラスボスのバイアス=ブラドを倒したあとに、です。コンピュータが破壊されたAIは「バイアス=ブラドという偉大な精神は死すらのりこえたのだ!」と絶叫します。「わしの意識が物質を超越し、純粋エネルギー体になる そのときこそ、わしは不死の存在になる!」と続きながら、そのAIは強烈なエネルギー体「トランス=ブラド」となって襲いかかってくるのでした。

 

 なるほど、これはまさしくブラド博士の精神が死を恐れるがあまりにそれを超えたものとして実体化したものなのだと……解釈したくなります。でも、少しお待ち下さい。

 ブラド博士の幽霊は、いるんです。別荘地に恋人の霊と一緒に。ではいったい、このラスボスは?

 

 ブラド博士が作り出した、ブラド博士に似ているが全く似ていないスーパーコンピュータ。それが自らの死を乗り越えようとして生み出した怨念…。人ならざるものが生み出した、人よりも恐ろしい理解不能な悪意の塊。まさしく「魔王」としか表現できない存在が、最後の最後、ラスボスの最終形態として現れる。アンチ・ドラゴンクエストであるメタルマックス2の最後の敵は、ドラゴンクエストのラスボスと等しい「魔王」だった。私はそう考えます。

 

ドラクエを超えるのはドラクエだけ」

 

 ドラゴンクエスト6のキャッチコピーはご存知でしょうか? 「ドラクエを超えるのは、ドラクエだけ」というものです。RPGを日本に普及させた自負をもつドラゴンクエストだけが言える名キャッチコピーであるといえるでしょう。

 しかし今の視点から見ると、この時もしかして、「ドラクエを超えたドラクエ」はすでに存在していたのかもしれませんね。メタルマックス2というゲームは、それを主張してもいいゲームだと思うのです。