平和的なブログ

ゲームのことばっかり話してます。たまに映画とか。

ドラゴンクエスト ユアストーリーを見た感想

 注意:この記事は龍騎兵団ダンザルブとドラゴンクエストユアストーリーとゼルダの伝説夢をみる島他いろいろなゲームソフトのネタバレに踏み込んでいます。



 龍騎兵団ダンザルブ」という作品をご存知でしょうか。元はスーパーファミコンでユタカが発売、開発はパンドラボックスの近未来的世界観のRPGです。パンドラボックス……というとぴんとこないでしょうが、ようするに「四八」で悪名を高めてしまった飯島多紀哉氏が作り上げたRPGなのです。
 この龍騎兵団ダンザルブ、精鋭部隊ダンザルブ隊に配属された新人兵士マシューを主人公として、敵対するダマイア軍との戦争を乗り越えていくゲームなのですが、その終盤の展開はすさまじいものがありました。部隊内の裏切り者や、意図がわからなくなりだす上官からの作戦指令、そしてマシュー自身の出生の謎。それと並行してこの戦争のおかしさを指摘する謎の人物の登場となり、マシューたちは真実を探すようになりはじめます。
 そして判明する真実。実はダマイア軍の作戦指示を出している上官と、ダンザルブ隊の上官とが同一人物であることがわかります。戦争自体がニセものの戦争であり脚本通りであり、至るところに隠されていたカメラによって録画されていた動画は映画として、ドラマとして、リアルな戦争モノとして大人気作品となっているというもの。しかもそれが小説にもゲームにもなっている、と。
 この戦争を生み出し、マシューを戦わせていた張本人である上官を打倒し、開放されたマシュー。彼はゲームの支配下から逃れることができ、最後に隠しカメラに向かってこう言います。



  今、君はテレビを見ているのかい?
  もしテレビの出来事だと思って簡単に片付けたらそれはいつか現実になる…
  君達が戦争を遊びだと考えていたら知らないうちに戦争に参加することになるかもしれない…

  これから僕達は君達の世界に行くよ
  いつかどこかであえるかもしれないね…
  それが戦場でないことを祈って…



 このセリフでこのゲームは終わります。スタッフロールすらありません。ゲームの中のキャラクターが現実のプレイヤーに対して語りかけ、そしてそちらの世界に向かうことを示しながら、架空の世界は終わりを告げるのです。
 ゲームがゲーム自身の枠を超えて、現実に干渉する、プレイヤーに問いかけるという手法は珍しいものではありません。マザー2のラストバトルでは主人公ではなく「プレイヤー自身のねがい」が重要なポイントとして存在しますし、ゼルダの伝説夢をみる島においてのマリンの「わたしのこと、わすれないでね !」はリンクとゲームをプレイしているプレイヤー自身の、両方に向けていった言葉です。
 高機動幻想ガンパレード・マーチにおいても二週目をプレイしはじめると、穏やかで理知的だったはずの先生が「…OVERSか。私の生徒に寄生しているな。何の用だ」と明らかにコントローラーを持っているプレイヤー自身にむかっての質問をします。ここで選択肢を間違えると撃たれて即ゲームオーバーになりますが、「龍を倒しに来た」とその場には似つかわしくない返事を返すことでシナリオが進められます。ここから先生は「ゲーム内のキャラクターでありながら、プレイヤーの干渉を知覚し、かつ協力して真のエンディングを目指す」という路線をとることになります。

 ゲームは架空世界を作り上げるコンテンツです。作り手はいかにプレイヤーの感情を揺さぶるか、試行錯誤の歴史を積み重ねてきました。高機動幻想ガンパレード・マーチは2000年の発売で、その前述のダンザルブは1993年発売です。壁を乗り越えて現実にせまりくるメタ手法はこの頃からすでに萌芽していたのです。


 さて、ドラゴンクエスト ユアストーリーなのですが、ラスト10分からの展開が衝撃でした。今までの流れをすべて捨てた超展開です。私が衝撃を受けたのは「捨てただけで何も拾ってない」ということなのです。

 「実はこの世界はVRで、お前はただのプレイヤーだ」と言い張る流れ自体は構いません。そういう展開もありでしょう。しかしそれを言い張るウィルスを倒したのは、すでに用意されているロトの剣の姿をしたワクチンソフトなのです。ゲーム内のキャラでも、遊んでいるプレイヤー自身の努力でもありません。それでカタルシスが生まれるか、というと、まぁ全く生まれなかったとしかいいようがありません。本人の資質や歩んできた流れと無関係に用意されたアイテムで難局を打破して「お前こそ真の勇者だ」とはならないでしょう。これはドラゴンクエストなのですから。とってもラッキーマンだったら話は別ですが。


 「この世界は作り物だけど、俺は愛しているし絶対に守ってみせるんだ!」としてウィルスを自力で倒す展開なら、「私たちじゃあのウィルスを倒せない! でも唯一この世界の住民ではない貴方ならウィルスを倒せる! そして……その貴方を、私たちは助けることならできる!」みたいな仲間たちのバックアップが生まれる流れなら、カタルシスはあったんですよ。それを全くしていない。水たまりのように底の浅い展開だ、としか評価しようがないのです。


 ゲームという媒体のコンテンツは、いろいろなメタ表現に挑戦してきました。映画でも他の人が多数指摘しているようにいくらでも良質なメタ展開をしたコンテンツがあります。伊丹十三監督が「タンポポ」で映画館に座る男に「そっちも映画館なのね? そっちじゃ何食べてる?」と言わせたのが30年以上昔の話です。2019年、令和に入った時代に見せられるにしては、このユアストーリーはあまりに陳腐でしかないのです。これで「これは貴方の物語です」といわれても。


 1986年に発売された「たけしの挑戦状」ではエンディングを見たあとにさらに隠しメッセージがあります。それは「こんな ゲームに まじになっちゃって どうするの」というもの。……エンディングのスタッフロール後に「こんな えいがに まじになっちゃって どうするの」と流れてきたら、却って許せたかもしれませんね。この映画は捨て方も半端だったのかもしれません。

打倒アクトレイザー! SFC音源に立ち向かった者たち

まえがき

 以前、このようなツイートがありました。

 かの古代祐三氏はSFC初期の名作、アクトレイザーの音楽を担当したことでも有名です。そのアクトレイザーの衝撃は凄まじく、当時ファイナルファンタジーシリーズの音楽を担当し、業界内で高い地位を築いていた植松伸夫氏ですら「あれは業界内で事件だった」「当時では勝てなかった」と語るほどです。

 そんなアクトレイザーはどれほど音楽が優れていたのか、実際に聞いて比較してみましょう。まずはスーパーファミコンのロンチタイトルであるマリオワールドをお聞きください。

 
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 ファミコンとは段違いの音質・音源なのですが、今聞くとどことなく柔らかすぎる音楽のようにも思えます。

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 その発売の一週間後に発売されたサードパーティ製初のゲームソフト、ボンバザルではこのような音源です。マリオワールドのような柔らかい音を使い上手い具合にメロディを流しているのがわかります。ファミコン時代は使える音数も少なく、音質もさほど幅がなかったため、メロディラインで勝負をかけるという作風が広くとられましたが、上記二作はそのような流れを受け継いてるように感じられます。

 そしてその直後発売された、アクトレイザーの音源を実際にお聞きください。

 
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 今までのファミコンの延長線上にあるものではなく、全く新しいオーケストラ調で広がる音が繰り広げられるのがわかるかと思います。古代祐三氏もねとらぼのインタビューにて「音源のプログラミングに関しては当初からかなり高度なことをやっていましたので、音響的な面でこの迫力を超えられるものは数年は現れないだろう、と思っていましたね(笑)」「それまでFM音源ばかりやっていましたので、それでは実現が難しい、生々しいストリングスやドラムセットの音が鳴らせたときはとても興奮しました。当時のゲーム音楽の最先端であった、アーケードゲームでもここまでのスペックの音源は無かったかと思います」などと、自分の腕前を誇ると同時に、SFC音源のスペックの高さを褒め称えています。(余談になりますが、このSFC音源SPC700の開発者はかのプレイステーションの父、久夛良木健氏であり、PS1、PS2にはこのSFC音源の後継機が搭載されています)

 非常にハイスペックであるこの音源は、しかしながら「扱うのが難しい」という難点がありました。アクトレイザーはその成功例として有名ですが、では、失敗してしまった場合はどんな音になるのでしょうか? スーパーファミコン発売から半年たった頃に発売されたこのソフトの音楽をお聞きください。
 
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 イースⅢは他機種にて広く展開し、音楽に特に定評のあるタイトルです。ですがスーパーファミコン版はその音の力の抜け方に、逆の評価がついてしまったのです。なおファミコン版の同じ曲はこのような具合です。聴き比べていただくと、如何にSFC音源の扱いが難しかったか、想像できるかもしれません。

 そんな暴れ馬のようなスペックのSFC音源が、四年後鳴らした音色。光田康典氏がクロノトリガーで鳴らした音楽はアクトレイザーのそれをついに上回りました。

 
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 音の透明感と臨場感は、聞き飽きることも色褪せることもさせません。古代祐三氏が白旗を上げるのも無理はないでしょう。4年という月日でついにトップが入れ替わったのです。


 ……のですが、はたしてこの4年の間、他の作曲家は黙ってみていたのでしょうか? いえ、違います。彼らは己の力を振り絞り、全力でSFC音源へと立ち向かい、打倒アクトレイザーに燃えていたのです。
 今回の企画は、アクトレイザークロノトリガーの間で発売された、良質なサウンドを実装したスーパーファミコンソフトを紹介していくものです。それでは早速参りましょう!

カプコン

 
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 トップバッターはカプコンロックマンXです。「そっちがオーケストラならこっちはロックじゃ!」と言わんばかりの力強い音色をバリバリと奏でてくれています。
 このロックマンX、作曲陣は入社1-2年目の新人を中心に集めており、このオープニングステージの作曲者である山本節生氏は(このロックマンXの中の曲の半分を作曲担当)現在もカプコンに在籍しておられますが、作曲はせずにサウンドマネージャーとしてマネジメントを中心に行っているとのこと。
 ロックマンXについてはこのインタビューでいろいろと語っておられるのですが、ロックについての思い入れをガンガンと語って下さっています。(なお、関係ないですが当時のカプコンでは先輩がガンガンやめていき三年目で中堅になったという世知辛い状況になったことについても語っています)

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 カプコンといえばSFC時代、ストリートファイター2で大いに盛り上がった会社です。アーケードで発売されたスト2を、SFC上でほぼ完全再現したことで大ヒットを飛ばしました。音楽についてもほぼ同じ音を再現できております。
 なお、ストリートファイター2のメイン作曲者下村陽子氏がカプコンに在籍されていたのは93年までになります。その後、スクウェア(現スクウェア・エニックス)に移籍することになりますが、そこで彼女は……。

 

スクウェア

 
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 名作ライブ・ア・ライブの作曲を担当することになりました。光田康典氏以外の作曲家も存分に力を発揮できるスクウェアの自力の強さを伺えしれます。
 そんなスクウェア作品の中でもう一つ注目したいソフトがあります。

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 作曲者はすぎやまこういち。そう、ドラゴンクエストの作曲者であるすぎやまこういち氏は合併前のスクウェアでも作曲担当をしていたのです。……というか、この半熟英雄 ああっ、世界よ半熟なれ」は、すぎやまこういち氏が企画をスクウェアに持ち込んだことからスタートしたという逸話があるのです。ファミコン半熟英雄にハマったすぎやまこういち氏がスクウェアに続編を作ってくれ、と頼んだという。ドラゴンクエストの作曲担当も、もともと「森田和郎の将棋」のアンケートハガキをすぎやまこういち氏がエニックス社に出したことを発端としているので……どんだけゲームやってるんでしょうか、この方。
 ちなみに作曲者はすぎやまこういち氏ですが、サウンドプログラマーはなんと光田康典氏なのです。1992年の時点でその才能の片鱗を見せつけていたのでした。(もともと作曲志望で入社したのに作曲させてもらえない状態だったそうな)

 

富樫則彦編

 古代祐三すぎやまこういちといった方々はこのときにすでに知名度を有していました。下村陽子光田康典といった作曲家はこの時点から有名になりつつありました。彼らに対する知名度には一歩劣りますが、それでもこの時代から根強いファンがいた作曲家に富樫則彦氏がいます。
 
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 機動戦士ガンダムF91 フォーミュラー戦記0122」アクトレイザーから半年後、1991年7月に発売されたソフトです。力強いドラムとキラキラしたメロディが印象的で、ゲームとしての評価はそれほどでもないですが、音楽的な評価は反対に高評価を受けています。

 
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 発売元が違いますが、このサンドラの大冒険は翌年の1992年、ガンダムF91フォーミュラー戦記0122と同じ開発会社ノバがつくりあげ、富樫氏がサウンドを担当したものです。ガンダムではまだ若干音数の少なさが気になるのですが、さすがに一年間という時間を与えられたあとは完成度を急激にあげてきたのがわかります。

 富樫氏は現在「nori」名義でJ-POPユニット「nj」を結成し、今も活動を続けています。公式サイトから飛べるページで視聴も可能なので是非聞いてみてください。


禎清宏編

 
 現代でも第一線で働いていて、かつ当時でも最前線にいた作曲家をもうひとりあげましょう。禎清宏氏はファミコン時代はコナミに所属し、ファミコン魂斗羅のBGM担当をしていた作曲家ですが、SFC時代はナツメに移籍し音楽を担当しています。

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 「反省ザル ジローくんの大冒険」はその気の抜けたタイトル(当時人気者だった猿のジローくんを主人公にしたパズル色強めのアクションゲームです)とは裏腹に、非常にスタイリッシュな音楽が評価されています。1991年の発売ですが、その後1993年に禎氏は独立、音楽作成専門会社「ピュアサウンドを設立し、他社からの音楽制作依頼を請け負っています。

www.puresound-net.co.jp

 今ではサモンナイト6」「幻影異聞録♯FE」「メタルマックス4といった有名コンシューマゲームの音楽に携わっています。なお、サウンドギャラリーにてサンプル曲を聞くことができますので、是非皆さん耳を通してみてください。


多和田吏編

 もうひとりピックアップしたい作曲家がいます。多和田吏氏はかつてジャレコに所属し、そのジャレコから独立したヘクトに移籍した作曲家です。ダンジョンマスターSFC版)、じゃじゃ丸の大冒険といった作品のサウンドを担当しておりましたが、93年に発売された「イーハトーヴォ物語」が彼の評価を急上昇させました。

 
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 その結果、なんとすぎやまこういち氏に才能を見出されドラゴンクエストシリーズサウンドデザインを担当し、ドラゴンクエスト6サウンドドライバ作成に携わることになったのです。その後は任天堂のセカンド会社ジニアス・ソノリティの設立に携わり、取締役に就任(2007年退任)。ポケモンコロシアムシリーズに携わることになったりと広く活動し、いまでもフリーとして活動しつづけている作曲家です。
 

崎元仁

 またこの時代にすでに活躍していた作曲家といえば、崎元仁氏も忘れてはならないでしょう。

 
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 伝説のオウガバトルは複数の作曲家との共同作品なのですが、この有名な「サンダー・おおえど・Aチームのマーチ」(いったいどういう曲名なんだ)崎元仁氏作曲です。
 また変わったところでは、版権モノのゲームである「スーパー・バック・トゥ・ザ・フューチャー2」の作曲を担当しています。

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 特徴的なバック・トゥ・ザ・フューチャーのあのテーマを見事にSFC音源に落とし込んでBGMに仕立てることに成功しています。この時期の崎元仁氏はフリーの作曲家として広く活動し、ドラゴンクエスト6やリメイク版3の編曲にも携わっていましたが、オウガバトルスタッフがスクウェアに移籍したことをきっかけにファイナルファンタジータクティクスに携わり、さらにはファイナルファンタジーⅫの作曲すべてを担当するにまで至り、つまりドラゴンクエストシリーズファイナルファンタジーシリーズの両方に関わった作曲家ということになります。
 現在ではアニメ音楽も手がける一流の作曲家として名高い地位に到達しています。



任天堂

 さて、ここで焦点を任天堂に戻しましょう。ロンチタイトルのマリオワールド以後、任天堂もいろいろなアプローチをSFC音源に仕掛けています。

 
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 有名所ではマザー2において(開発はHAL研究所であり、音楽もマザー1から引き続いて前作スタッフが作っていますが)、サンプリング音源を多用することで本来の性能を超えた音楽を再生することに成功しています。多様しすぎたその結果、総容量の三分の一が音源という状態だそうな。

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 またレア社が開発した「スーパードンキーコング」はその驚異的なグラフィックも評判になりましたが、同時にBGMも完成度の高さから当時から話題になっていました。
 これらは任天堂自身ではなく、あくまで関連会社のHAL研究所レア社が手掛けたものです。任天堂自身がつくった作品はマリオワールド他にスーパーメトロイドスターフォックスなどがあげられます。それらはその作品の世界観にあわせた独特な音源を作ることで作品の雰囲気を盛り上げることに成功しています。

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コナミ

 「世界観に合わせて音楽を作る」ということにおいて当時から比類ないレベルの高みに登っていたメーカーがあります。コナミです。後に音ゲーBEMANIブランドを展開することになるコナミは、すでにこの時から評価を確立していました。ファミコン時代ではゲームカセットの自社生産を許可されていたため、拡張音源を載せたりと好き放題にしていたコナミですが、SFCでもその力を存分に奮っています。

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 この「魍魎戦記MADARA2」はいわゆる「異世界へ迷い込んだ現代の少年の物語」なのですが、その異世界の世界観と、この民族音楽風BGMががっちりと組み合っていて浸れるようになっています。というか、当時このBGMをずっとテレビからかけ流しにして聞いていました。他にも名曲ぞろいでピックアップするのに悩みに悩んだので、他の曲も是非聞いてみてください。

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 その方向性とは真逆に突っ走ったソフトに魂斗羅スピリッツがあります。汗と弾丸で構成される暑苦しい画面、群がるエイリアン共を筋肉ムキムキの主人公たちがバリバリとマシンガンで吹き飛ばすゲームは、ノリのいいBGMでテンションをガンガンに上げにきます。このBGMが流れるステージでは主人公が無数に飛び交うミサイルの間を飛び回りながら超巨大航空戦艦をぶちのめしにいきます

ティム・フォリン編

 今までずっと国内メーカー・国内の作曲家を紹介して参りました。最後にここで海外からの最強の刺客を紹介しましょう。ティム・フォリン。15才でデビューしたという海外の作曲家は、NES「シルバーサーファー」のBGMを担当したことで知られています。8bitの限界を突破した音楽の手腕はSFCでも健在です。

 
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 ハーモニカの音色がハーモニカ!! この「PLOK!」というゲームはアクティビジョンから発売されたのですが、当時のアクティビジョンは日本国内では無名もいいところでした。「よくわからない海外のゲーム」という枠に収まってしまい、評価はされていなかった覚えがあります。なにせこのゲームの特集を読んだことがあるはずの私ですら「記憶にないことが記憶に残っている」という状態です。(ファミリーコンピューターマガジンで紹介されていたような…)当時、プレイしていないゲームのBGMを聞くのはほとんど不可能でした。私は紹介するゲームの中でこの作品だけはリアルタイムでプレイしたことがありません。その上プレイした話題ですら触れたことがないレベルですが、ネットの興隆とともに評価されてきた作品と思います。

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 その一方でリアルタイムでも日本で評価されたタイトルを一つあげられます。この「ロックンロールレーシング」ナムコから発売され、そこそこの知名度を持っていました。私も知人が持っていたので、当時プレイしたことがあります。聞き覚えのある音楽がアレンジ込みでスーパーファミコンから流れてきたことに驚きをうけました。当時すでにCD-ROM媒体による生演奏収録を実現したPCエンジンCD-ROM2が存在しましたが、それでも衝撃を広げることに成功しました。今もなお語り草になるほど、高評価タイトルです。なおゲーム自体もマリオカートを別方向に進化させたようなはちゃめちゃレースゲームで(ミサイルや地雷で敵車を粉砕できる)、とっても楽しいですよ。

おわりに

 アクトレイザーは音楽面で比類なき評価を受けた作品であり、クロノ・トリガーはそれを超えたと称されていい作品です。しかし、他にもいろんな作品がスーパーファミコンというプラットフォームにはありました。それらは今の時点で評価されているものもあれば、見逃されているものもあります。一度立ち止まっていろんな作品の音楽に触れてみてください。そこには、強敵に立ち向かいながらもどんな音を出そうか苦心した作曲家たちの血と汗が染み込んでいるのです。以上をもって、SFC音源に立ち向かった作品の紹介を終わります。皆様ここまで、お疲れ様でした。

コナミデジタルエンタテインメントの社員数推移から過去を推察

5538
5453
5048
4578
4606


 この数字の羅列が何なのか、わかる方はおられるでしょうか? これは2013年から2017年までの、コナミの各セグメントの社員の合計数の推移です。2014年で一時期最高数を誇っているものの、そこから二年でなんと1000人近い社員がやめたことになります。比率でいえば1/5。買収された後に大量リストラを行ったシャープよりもさらに多いという具合です。
 これだけを見るとなにかとんでもないことがコナミに起こったように感じられます。しかしコナミはスポーツクラブやカジノ、アーケードゲームに家庭用・ソーシャルゲームと、多方面に展開する企業です。今回の記事は有価証券報告書を元に、一体どこで、何が起こっていたのかを探ろうとする内容です。あくまで表に出ているだけの数字・資料を元にしており、後は私の「こうなのではないか?」という予測を多分に含んだ記事内容になっていることは間違いありません。あくまでその点をお忘れなきようお願いいたします。



 2013年時点でコナミのセグメントは以下のようになっています。遊戯王ソーシャルゲーム・家庭用ゲーム・アーケードゲームを取り扱う部門の「デジタルエンタテインメント」。スポーツクラブの「健康サービス」。カジノ関連の「ゲーミング&システム」アーケードゲームの筐体の製造を取り扱う「遊技」。このうちの遊技部門は2017年に、遊技部門の下請け会社である高砂販売を買収した後、デジタルエンタテインメントのアーケードゲーム部門を移転させ新たにアミューズメント」部門を創設しました。そのためデジタルエンタテインメント部門の社員が多数アミューズメント部門へと移り、一気に社員数が激減しています。
 なのでカジノ部門や健康サービス部門を除いた、デジタルエンタテインメントとアミューズメントの社員数(アルバイト除く)の合計の推移を見てみましょう。それらは有価証券報告書で見ることができます(興味のある方は是非こちらから実ソースを見てください)。以下の通りになります



     DE AM 合計
2013年 3002 468 3470
2014年 2903 515 3418
2015年 2510 451 2961
2016年 2161 314 2475
2017年 1659 807 2466(←アミューズメント部門新設)



 驚くべき数字の推移になっているとわかるかと思います。とにかく2015年、2016年の社員数の減り方が異様に思えます。いったいどんな事情があったのでしょうか。外からは伺うことができませんが、その原因の一端を転職サイトの口コミから見ることができます。2010年ごろから契約社員へと移行する動きが見られ、1年ごとの契約更新をするように体制を変え、そして2015年、2016年に大量に契約打ち切りを行いそれが社員数の大幅減少に繋がりました。(ちなみに2015年に「経営悪化を理由に契約更新を見送られた」という口コミもあったのですが、今再確認できない状況になっています)



 このあたりのデジタルエンタテインメント自体の動きを家庭用ゲームの発売履歴から見てみることにしましょう。3DSの発売タイトルは2014年3月のNewラブプラス+から、2016年12月のパワプロヒーローズまでありません。PS4では毎年出ているウイニングイレブン、二年おきにでることになったパワプロの他は、2014年3月のMGSG:GZ、2015年9月のMGSV:TPPのみ、という状況です(メタルギアシリーズのスピンオフとして発売されたメタルギアサヴァイブは2018年2月発売です)。
 ここで大切なのは、「ゲームソフトはすぐに発売することはできない」ということです。2014年の大量の人員が契約打ち切りを受けた背後では、「新規のゲーム制作立ち上げが進んでいなかった」ことが推察できます。3DSのソフトや、ウイイレパワプロ・MGSといったコナミの王道IP以外のゲームはここで凍結されたことが伺えます。


 理解が難しいのですが、ここでMGSブランドの流れを見てみましょう。当時メタルギアシリーズを作っていた小島プロダクションはデジタルエンタテインメントの中のさらに一部門的存在です。2013年にはロサンゼルススタジオを新設するくらいの優遇ぶりです。2014年には小島監督がエグゼクティブコンテンツオフィサーとして執行役員副社長(現場でのトップ)にまで就任しています。このときはまだ小島プロダクションを優遇し、家庭用市場に意欲的だったであろうコナミも、2015年のMGSV:TPPを発売するころには小島プロダクションを統合してしまい、社員のリストラに及んだ……。そういうことになります。


 コナミデジタルエンタテインメント社長は2014年7月まで田中富美明(創業者上月景正会長の娘婿にあたります)でした。小島監督が2014年7月に副社長に就任する際、上月拓也(上月会長の実子です)氏が社長に就任します。そして間をおかず2015年4月に早川英樹現社長にかわり、同時に小島監督は副社長から降りています。
 田中社長がロサンゼルススタジオ新設などの采配を振るい、小島監督を優遇する流れを作った後、上月社長時代になにかがあり、小島監督の優遇をやめ一部門に戻すことを決めてしまい、早川社長に変わった、のでしょうか? しかし小島監督当人からは「新人時代は別として、会社から何かをしろと言われたことはありません。あくまで自分からの提案で、こういう狙いで、こういう時期に、このくらいの人材で、こういう未来を見据えて、こういう作品を作らせてくださいと言えばやらせてもらえた。在籍した最後までそうでした。それがあったからこそ今の自分があります。」と、コナミへの非難どころか、感謝の言葉がでているという具合です。この言葉を信用する限りは副社長を降りたあともきちんと作らせてもらえていたように思えます。(それどころか円満退社に見えます)
 

 大まかにいうなれば、2013年からはウイイレパワプロ以外の新規のゲーム制作立ち上げをしないかわりに小島プロダクションへ全力投球、人員集中……をしていたはずなのに、2015年には小島プロダクションを統合(この時小島監督自身も副社長から降りています)してしまい、さらにリストラも進めてしまい、小島監督自身もコナミを退社する、というかなり不味い流れになってしまったというのがわかります。



 コナミ有価証券報告書にはこのような文言があります。デジタルエンタテインメントへの収益性の向上と成長分野での経営資源投入の欄で、「多様性・グローバル化が求められる中、より選択と集中を行い最適な経営資源の投入を図ってまいります」というものです。この文面自体は2009年(第37期)から書かれてありますが、コナミデジタルエンタテインメントはこれに失敗していたのではないか、と思います。以下の画像を御覧ください。(元ソースはこちらからどうぞ)

f:id:amd-ryzen:20190630062036p:plainf:id:amd-ryzen:20190630062113p:plain

 2011年からのコナミHDの売上と純利益の推移です。これらにはスポーツクラブ・カジノの売上も入っているのですが、デジタルエンタテインメントとアミューズメントの売上で概ね7割を越えるので、そう印象とずれることはありません。2012年をピークにぐっと下がっていることがわかります。そのまま低迷がしばらく続くなか、ふらふらとした選択と集中を行っていったのではないか。私はそう思います。

 経営的な視点では取締役ではない、執行役員の一人である小島監督には責任がありません。当時の取締役が何を思って判断を下したのかはわかりかねます。ですが結果だけを見たらそれは失敗(しかも大がつく方の)だったのではないか、そう思えてなりません。



 
 2015年に早川社長の就任、小島監督の退社という大きな転機を迎えたコナミデジタルエンタテインメント。苦境に陥ったこの会社の改革はIPリブートから始まりました。ボンバーマンZ.O.E ANUBIS桃太郎電鉄(仲介役として任天堂がいますが)3DSパワプロパワポケではありませんが)をリブート、その他派生としてボンバーガー(部門はアミューズメント側)ときめきアイドルを生み出し、その他武装神姫ラブプラスハイパーオリンピックシリーズ、悪魔城ドラキュラ(アニメとスマホ版)を開発中な上、先日のE3では魂斗羅新作と、PCエンジンミニを発表しました。
 個別のタイトルを上げるほか、社員数の推移を確認しても変容がかわってきます。2017年には2466人だった社員数は


     DE AM 合計
2018年 1749 793 2542
2019年 1853 831 2684

 と、あきらかに上昇傾向にあります。売上・利益も過去最高をこの二年で連続達成しています。早川社長のリブート策はうまくいったように思えます。しかし細かなソフトの様相を見ると、発売日時点でバグが多く残ったまま(ボンバーマンRはゲームエンジン側の問題ですが)だったり、発売日未定のまま音沙汰がなかったり、明らかに開発リソースが足りていない状況です。
 コナミデジタルエンタテインメントは改善傾向にあります。ですが1コナミファンとしては、より開発力の強化をお願いする他ありません。2018年にコナミデジタルエンタテインメント開発スタジオが新設しました。このまま是非とも開発力の強化を続けていってほしいと願ってやみません。


 最後にこの言葉をもってこの記事を締めたいと思います。PCエンジンミニの発売、本当にありがとうございます。
 

名作映画は人生を変えた -12人の優しい日本人-

 貴方は「人生を変えた映画を一本挙げよ」と言われたとき、どれを挙げますか? きっと悩みに悩み、今まで出会った映画作品の中から一つを選ぶことでしょう。
 私の場合、あげるとしたら間違いなく12人の優しい日本人です。これは1991年に公開された日本映画で、「もし日本に陪審制度があったら」をテーマにしたコメディ寄りの法廷もの映画です。まぁ今現在、日本に陪審制度があるんですけどね。



 もともと米国映画の名作十二人の怒れる男というものがあり、陪審員らが顔を突き合わす会議室の中だけで物語が展開するという流れで映画が進むのですが、本作もそのスタンスを踏襲しています。舞台は会議室だけ。登場人物は12人の陪審員と、守衛と、ちょい役のピザの配達員のみという非常にシンプルな構成。
 しかも視聴者はどのような映画なのか、どのような裁判だったのか、そもそもどんな事件だったのかを把握する間もなく、会議室に集められた陪審員たちが一斉に「無罪」に手をあげて、無罪判決で決まるというスタートからこの映画は始まります。残りの時間どうやって映画は進むのか。そんな不安を抱いていると、陪審員の一人が声を上げます。「これでいいんでしょうか?」と。もう少し話し合いたい、皆の意見を聞きたい、ということであえて彼は無罪から有罪に変えます。解散ムードだった会議室が慌ただしくなり、取り急ぎ事件の様子から話し合うことになります。

 そこで各自無罪だと思う理由を述べていってこの有罪の陪審員の意見を変えようとするわけですが、細かなところを突き詰めていくと皆が「あれっ?」と思ってしまう箇所があったりします。違う視点から同じ事象を眺めてみると、ものの見方が変わってきて、全く怪しいところがなかった被告人がだんだんと怪しい動きをしているように見えてきてしまう……。視聴者もそれにあわせて次第に無罪と有罪の間をふらふらと動くようになっていきます。
 そうした議論の合間にも、そもそも裁判を終えてさっさと帰りたい人、意見を変えすぎてしまう人、反面まったく変える気配すらない人、陪審員長でもないのにしきっちゃう人、アル中、メモ魔、などなど「いかにも日本人っぽい個性」を各自が発揮していて見ていて飽きがきません。

 物語が盛り上がり、有罪論と無罪論が半分に別れ、いったいどちらに決着がつくのかわからなくなった頃には、視聴者はまず間違いなく有罪論に心象が傾いているはずです。有罪論は理論的で、動機、計画性、殺害方法を述べているからです。反して無罪論は感覚的で、心象でしか述べられていません。

 そしてこの映画の妙は、そこから一転とある陪審員が本領発揮するのです。それ以降は今まで張られていた伏線を一気に回収しながら話が集約していきます。視聴者も「そういうことだったのか!」と驚きながらラストの展開へと突き進むことになります。そして訪れるエンディングの結末に、拍手せざるを得なくなるでしょう。



 元ネタである十二人の怒れる男陪審制度の恐ろしさ、人が人を裁くことの難しさを浮かび上がらせ(この映画では逆に皆が有罪だと思っている中、一人だけ無罪を主張するところからスタートする)、皆に有罪を出すことの重みを実感させようとした結果、事件の真相というものが描かれなかったことに対して、この『優しい日本人』では真相らしきものに到達しています。その真相に納得した後、視聴者はものの見方を変えなかったらどうなっていただろうか…? とぞっとする構成になっています。そしてもう一度この映画を最初から見直すと、各所に散りばめられた伏線の見事さに感嘆するようになっています。

 陪審制度と人間の不確かさを描いた十二人の怒れる男、それと同じテーマを根底に敷きながらも面白おかしく見事に描いたこの12人の優しい日本人、間違いなく名作です。ぜひ皆さんレンタルDVDでかまいませんので見てください。



 えっ? ああ、なんでこれが「人生を変えた映画」なのか、って? 別段これを見て私が法律家を目指したとかそういうことではありません。
 大学時代、友人のAくんが試験前でもがき苦しんでいた時、差し入れの夕食と一緒にこれを見たのですが、Aくんは見事に大ハマリし、そこから自分でビデオを借りてきて一週間ほど延々と繰り返しビデオを見続けて、見事必修科目を落として留年することになりました。
 間違いなくAくんの人生を変えた(あまり良くない方に)作品です。見せたことを後悔しました。

名作はジャンルに変わる -メトロイドヴァニア GBA悪魔城ドラキュラ三部作レビュー-

 私にとって悪魔城ドラキュラとは「友達や近くのお兄さん家に遊びにいくと置いてあって、楽しくは遊べるのだけれど高難易度で必ずクリア前に止めてしまう」アクションゲームでした。ジャンプの制動や攻撃の後の硬直具合といったきっちりとした操作性と、絶妙にダメージを受けるように計算された敵の配置は、子供の私にとって『やりがいがあるけれど友達の家で夢中になってやってるといずれ帰宅時間がくる』という結果を招くようになっていたのです(似たような系譜でロックマンシリーズも)。ファミコン版、MSX版、GB版ドラキュラ伝説などをプレイしたことがありますが、実際に私が購入し、クリアまで至ったのはそれよりもだいぶシリーズが進んだPCエンジン悪魔城ドラキュラX 血の輪廻だったりします。


 この血の輪廻、歴代のシリーズよりも確実に難易度が抑えられていて、かつ主人公リヒター・ベルモンドがサブウェポンの名手であるという設定があり超必殺技にあたるアイテムクラッシュを実装していて、苦手なところのゴリ押し、ボス戦の撃破を可能にしています。さらには二段ジャンプ・高速スライディング・ぶっ壊れ大ダメージ必殺技実装というチート性能を有しているもうひとりのプレイヤーキャラ、マリアもいるため、クリア自体は容易です。

 バリバリ動くアニメのオープニング、CD音源を活かした高音質生再生BGM、そしてはじめてクリアすることができた悪魔城シリーズということで、非常に思い入れが深い作品となりました。スマブラSPにてシモンとリヒターが参戦したのは感謝以外ありません。ありがとうございます関係者各位の皆様。

 
 さて、この悪魔城ドラキュラシリーズ、この後メガドライブバンパイアキラーや血の輪廻のSFCへの移植版悪魔城ドラキュラXXを経て、突然変異を起こします。PS1で発売された悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲。アクションゲームである悪魔城ドラキュラはここにきてアクションRPGに変わりました(厳密にいえばディスクシステムにて発売されたドラキュラⅡがアクションRPGではありますが)。主人公アルカードを操作し、敵を攻撃すると数字でダメージが表示され、レベルアップと装備の概念があり、広く展開する悪魔城の中を探索して、ボスを撃破し次のフロアへと進む。今までになかった要素で作り上げられたこの月下の夜想曲は今までのシリーズファンのみならず広く衝撃を与えました。夢中になって皆が悪魔城の探索へと向かったのです。新しい装備を見つけ、お金を溜めて回復アイテムを買い、次なるフロアで手に入れた新能力で今まで行けなかった場所に到達し、そして最後のボスを撃破した……と思わせておいて、そのあとの衝撃の展開に目を見開きました。非の打ち所がない名作です。

 その名作具合を象徴する言葉があります。メトロイドヴァニア任天堂の探索アクション、メトロイドと、悪魔城ドラキュラの英題キャッスルヴァニアを組み合わせた造語です。探索し自らの能力を向上させ、さらに探索可能箇所を広げる2Dアクションのゲームのジャンルをそう呼ぶようになりました。月下の夜想曲は、一つのジャンルになったのです。


 そしてそのメトロイドヴァニアの系譜は舞台をゲームボーイアドバンスへと移しました。アドバンスで悪魔城ドラキュラは三作発売され、その後ニンテンドーDSにて三作発売、系7作が正統なメトロイドヴァニア系譜の悪魔城ドラキュラとなります。
 今回紹介するのはゲームボーイアドバンスで発売された三作です。これらは現在WiiUバーチャルコンソールで購入することが可能です。というか買いました。そのまま積んでいたのを今回崩したので、「果たして現在の視点からも遊べる出来を持っているかどうか?」という切り口でレビューを行いたいと思います。最初はGBA悪魔城ドラキュラ第一作、悪魔城ドラキュラ サークル オブ ザ ムーンです!



悪魔城ドラキュラ サークル オブ ザ ムーン


 ゲームボーイアドバンスのロンチタイトルとして登場したこの作品。主なシステムは月下の夜想曲をベースにしているものの、GBAのゲームらしく簡略化が施され、ショップの概念がなくなっています。敵を倒してドロップする防具や回復薬を集めつつ探索をし、特定の敵を倒して自らの力にして、さらにその組み合わせてさらなるスキルを発揮するデュアルセットアップシステムが今作の売りです。レベルの概念もあるため、たとえ道に迷ったとしても雑魚をぺちぺち倒していくのは無駄にはなりませんし、そんな中偶然新しいスキルを手に入れることもあり、普通に嬉しく苦になりません。
 操作性は月下のアルカードのように身軽ではなく、主人公ネイサンはやや重さが感じられ、攻撃のときの隙が強く、移動速度も遅い…というもの。移動速度はすぐにダッシュという操作スキルを手に入れることができるから大丈夫…と思わせておいて、そのダッシュの操作方法は方向キー二連続押しというもの。つまりダッシュして敵に近寄り攻撃してまた距離を取る、ということをしたい場合、右二連続→攻撃!→すぐさま左二連続、という操作を余儀なくされます。もちろんこれを毎度毎度要求され、ミスするとダメージを受けることになります。
 それに合わせてボスキャラの攻撃は非常に激しく一つ一つのダメージも大きめに設定されています。回復アイテムを使用するゴリ押しに頼りたくなりますが、今回はショップがありません。そのためゴリ押ししたあとは特定の敵を延々と倒し回復薬をドロップするまで待つ必要が生じます。
 中盤まではギリギリ楽しめる高難易度に調整されていると思います。しかし後半のインフレに私はついていくことができませんでした。「せめて操作性がもう少し軽いか、ボスの動きが手加減されているものであったならば……!」と思わずにはいられません。おそらく学生の時であったなら延々とレベル上げとドロップまちをしてゴリ推してクリアしていたものと思いますが、今の私にはそこまでの根気と体力はないのです。無念。
 そんなわけでサークルオブザムーン、この三部作において唯一未クリア状態でのレビューであることをご容赦ください。


キャッスルヴァニア 白夜の協奏曲


 続いて二作目、なぜか悪魔城ドラキュラではなく英題であるキャッスルヴァニアに変わっています。
 なくなっていたショップの概念が復活した上、主人公ジュスト・ベルモンドの機動力がかなり高まっています。なにせ初期状態でLRボタンで左右ダッシュを実装しており、敵の懐にダッシュで飛び込み、攻撃してあたった直後にモーションキャンセルバックダッシュで敵の攻撃を避ける! という流れを簡単に行えるのです。その上さらに追加されたスキルでスライディングによる高速移動が可能となっていて、敵をなぎ払いつつ疾走し、ワープゾーンを飛びつつ目的地に飛び込んでいくことが可能になりました。移動によるストレスは低減した上に、サブウェポンがハートを消費する攻撃と、MPを消費するスペルフュージョンとに別れました。これがとにかく強力です。ボス戦にいたってはMPを一旦スペルフュージョンで使い切るまで当てて、その後MPが回復するまでハート消費のサブウェポン攻撃でしのぎ、回復しきったあとは再びスペルフュージョンで攻撃するという流れも可能です。二段ジャンプとダッシュの組み合わせでボスの攻撃もガンガン避けることが可能です。
 そんな良好な操作性ではありますが、一つ問題が生じました。それは全体的にボスの攻撃が単調であったり、避け易すぎるものしかしてこなかったりする場合があるのです。レベル差もあるのでしょうが、初プレイでもボスが本格的な攻撃パターンを始める前に倒してしまった例もありました。前作サークルオブザムーンがボスの攻撃が激しすぎた傾向があったのと対象的に、今作はボスの攻撃は大人しすぎる傾向にあるのです。欲をいうならば、今作の操作性で前作のボスと戦いたかった……! 
 またハードがゲームボーイアドバンスということがあり、地図が簡素なものしかありません。そのため「地図はここで途切れているが、単純に強い敵がいるから先に進めなかったのか、特定スキルがないと進めないようになっているのか」という判断をすべて記録しておかないと道に迷うことになる、というのが今の視点からみると非常に不親切にあたります。悪魔城の構造は非常に広く、しかもプレイヤーを驚かせる一つの仕掛けがあるため、プレイヤーはどこに何があったかを正確に記録する必要があります。これは結構大変です。
 そんな問題点もないわけではないのですが、「難易度を控えめにしつつも途中で山場がちゃんとあり自身のプレイスキルの上昇を感じさせることが出来る」という点で立派に及第点を超えており、今現在私のようなかつての悪魔城ドラキュラは思い出深いものの、クリアしたことがないような層にはちょうどよい調整となっているのではないでしょうか。ぜひ皆さんもプレイしていただきたい、おすすめできる作品です。


キャッスルヴァニア暁月の円舞曲

 GBA三作目はなんと未来の2035年が舞台です。そしてすでにドラキュラは完全に滅び去った後という展開で、今までの悪魔城ドラキュラではありえなかった設定ですが、やってることは今までのものを踏襲しているので安心です。いつものようにドラキュラ城が復活し、そこに閉じ込められた一般人の高校生の主人公来須蒼真が何故か自らの身体にみなぎる力を駆使して魔物と戦い探索して、幼馴染の少女と一緒に外にでることを目的としています。なんだかなろう小説のあらすじのようですが、そこを彩るサブキャラクターに、何処からどう見てもお前月下の夜想曲アルカードだよな?としか思えない有角幻也を名乗る男がいたり、軍人のくせに商売を始めるハマーさんがいたりと、蒼真の力の真実を探求するといった探索以外の盛り上がりがちゃんと用意されています。
 前作のような超強力な機動力はおとなしめになり、そこそこの機動力を有するだけになりましたが、今作の売りは「タクティカルソウルシステム」。敵を倒すと稀に敵の魂を奪い取り、それを自分のスキルとして活用することができるのです。アックスアーマーを倒せば斧を投げることができ、スケルトンアーチャーを倒せば弓矢が放ち、スケルトンキッカーを倒せばライダーキックを放つことができるのです! 
 これは良い点でもあり悪い所でもあります。全く意図しないところで偶然得た力がめちゃくちゃ強力だったり(例えばプロセルピナは敵のHPを吸い取ることができたり、ヴァルキリーは攻撃力・攻撃範囲ともに非常に強力です)するとテンションが上がってどんどん進められるようになります。反面、敵のソウルを奪えるかは完全に運であり、狙った敵のソウルを手に入れるために何度も何度も何度も何度も何度も何度も倒し続ける必要があります。全体的にいえることですが、確率に差がかなりあり、すぐに手に入る敵もいれば「こいつ本当にソウルを落とすのか?」くらいに思えるほどの敵もいます。一応確率を底上げしてくれるアイテムがあるにはありますが、非常に高価な上、体験できるほど確率をあげてくれるものではありません。
 ソウルシステム以外では、主人公蒼真はボスを倒すたびにそのボスのソウルを手に入れ強力なスキルを有するのですが、これが後半になっていくたびに機動力のインフレをおこします。機動力はおとなしめになったといったな? あれは嘘だ。最終盤の蒼真くんは無限ジャンプとオーバースピードタックルを備えた悪魔城を蹂躙する超機動兵器と化します。これが愉しいのなんの! 今まで行く手を阻んでいた雑魚敵を粉砕しつつ目的地へと一点突破です。
 ボスの難易度はちょうどサークルオブザムーンと、白夜の協奏曲の間のあたりで調整されています。ショップもあるのでどうしても苦手なボスがいた場合は回復薬のゴリ押しも可能です。GBA悪魔城の最終作ということもあり、今までのノウハウが詰まっている非常にレベルの高い作品であるといえるでしょう。ぜひ皆さんもプレイしていただきたい、おすすめできる作品です。


 なお、DSにプラットフォームを移して直接の続編、悪魔城ドラキュラ 蒼月の十字架(なぜかまた悪魔城ドラキュラへと名前が戻っていますが)が発売されています。主人公蒼真が続投し、タクティカルソウルシステムを引き継いでいる上にDSの二画面を活かした敵パラメータや悪魔城MAPの常時表示が可能になっています。これが最高のインターフェースと絶賛したくなるほど見やすく、心地よいゲームプレイを実現しています。敵ボスをタッチペンで魔法陣を描かないと封印できないシステムさえなければ……!



 以上でGBA悪魔城ドラキュラ三部作レビューを終えようと思います。ぜひ皆さん、WiiUバーチャルコンソールでプレイしてみてくださいね。え? WiiUを持ってない? それはいけませんね。はやくゲーム屋さんに行ってWiiUを買ってくるのです。同時にピクミン3幻影異聞録♯FEスプラトゥーンとThe Wonderful101を買ってくるのです! くるのです!!

ボンバーガールのガチャがわけわからなくなった話

 アニメBLACK LAGOONにこんな台詞がありました。

「私がこの世で我慢ならんものが二つある。一つは課金ガチャ、そしてロード時間だ」

 何話かは思い出せませんが絶対にあったんです。信じてください。


 とにもかくにもガチャは一般的になりました。今ではソシャゲのみならず、アーケードゲームであるはずのボンバーガールにも実装されている始末です。
 ボンバーガールは4vs4でオンラインで戦いあい相手のタワーをより速く壊したほうが勝ち、というスプラトゥーンボンバーマンを上手く融合したようなゲームです。このゲームにはガチャがあり、100円を入れてプレイした後、試合結果発表の後に一度だけガチャがすることができ、それにより新規キャラの参入や、追加のチャットボイス、ボンバーガール達の衣装を手に入れることができて、さらにその後100円を追加することによりプレイせず二回ガチャが回せるような仕様になっています。


 ここで弁護するをするならば、「決してガンガンガチャを回したプレイヤーが優位に立つわけではない」というゲームデザインが施されていることでしょうか。特にパラメータを強化する要素はガチャにはなく、新規キャラも特段優位になるようなスキルを保持しているのではなく、あくまで「プレイヤーの戦略に幅が広がる」程度のもので、それも上手く呼吸をあわせて動いてくれる仲間がいるほうが大事です。自分が何をしたいかを伝えるのと同時に、仲間が何を考えているのかも読み取る必要があるのがこのボンバーガールというゲームの肝です。攻撃だけでは勝てず、守備だけでも勝てません。



 それにしたってこのゲーム、ガチャへの動線が露骨すぎ。



 細かく解説しますと、試合結果が発表されたあとそこそこ長いロードがかかります。その後「無料ガチャ」という表示が現れ、決定キーでそれを押すと筐体真ん中にある起爆ボタンが物理的に盛り上がるので、それを叩きます。そうすると画面の中で演出が始まり、しばらく時間がかかってからガチャ結果として何が手に入れることができたか表示されます。その後ロード時間を挟んで「ガチャを回しますか?」という選択肢が現れます。当然私はガチャを回すわけがないのでNoを選択して決定キーを押します。再びロード時間を挟んでようやくコンティニュー画面になり、そこでNoを選ぶことでようやく完全にゲーム終了です。Yesを選択すれば再度ゲームをプレイすることができます。(後ろに大きなお友だちがいた場合は変わってあげましょう)


 試合終了からゲーム終了までおそらく1分以上はかかっています。アインシュタイン博士が提唱した特殊相対性理論によれば、このときのロード時間も相まって体感時間は5時間を超えると言われています。はっきりいって長すぎます。
 これが毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回やらされるんです。苦痛です。ボンバーガール自体は非常に良く出来ているゲームなんです。ガチャをしたい人は多分ガンガン試合終了後に100円を投下しまくっているんでしょう。それはそれでかまいません。好きな人は好きなだけ回してください。だから、だから、オプションで「ガチャ演出をスキップ」と「ガチャへの選択肢を表示させない」を実装してください!


 試合終了後にさっと席を立たせてください! これがそこまで出過ぎた望みだとは私にはどうしても思えないんですよ。頼みますよコナミアミューズメントさん(もうすく祝三周年)。

特別編 「KONAMIの社長はゲーム嫌い」という伝説

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 タイトルのような話を皆さんは一度聞いたことがあるのではないでしょうか?
 実はこういう話には珍しく、全くの大デマ…というわけではなく、たどりにたどればソースらしき逸話に到達することが可能です。
www.nikkei.com

 有料記事ではありますが、登録することで月10本無料で読むことができる記事なので、その一部を引用致します。
>「(ゲームの)イメージが良くなく子供にも自分の職業が言えなかった」。上月は99年、創業当時を振り返ってこう語っている。
(中略)
>「上月さんは『所詮はゲーム』という世間の風潮を気にして、『ゲーム屋』と呼ばれるのを嫌っていた」。経営会議に立ち会ったOBはこう打ち明ける。

 以上の箇所が各地に転載され、「コナミの社長はゲーム嫌いで、ゲームを止めたがっているのだ」という風説が広がりました。

 私は一時それに対して「この文章はそういう意味ではない。99年といえばコナミ音ゲーをヒットさせ、コンシューマーにも意欲作を出していた。今ではその子供が後を継いでいる。つまり『昔はそう思っていたが、今はゲームが好きだ』という意味なのだ」と説明していた時期がありました。

 その解釈は大間違いというわけではなかったのですが、いささか考察が甘かったのです。
 
 そもそも何故このような風説が流れてしまうのか、というと、原因の一つとしてコナミ創設者上月景正氏は表に出てくることがほとんどない」というのが挙げられます。99年に受けたインタビューは今はもう直接確認できない上、私がネット上で確認できるインタビューはわずか一件のみでした。
 その一件のインタビューをご覧になれば、「イメージが良くなく子供にも自分の職業が言えなかった」「ゲーム屋と呼ばれるのを嫌っていた」の本当の意味がわかるかと思います。
 
kigyoka.com


 2005年、起業家倶楽部のコナミ特集の際、当時の上月元社長(今はコナミホールディングスの会長となり、第一線を退いています)へインタビューを行ったものです。ぜひ全文を読んでもらいたいのですが、特に注目すべき点を引用します。

 
>問 まずはゲーム業界に入ったきっかけ、創業のいきさつを聞かせていただけますか。

>上月 昭和四十年代の頃、私はたまたまレコード会社に勤めており、ジュークボックスという機械が出てきて、それを担当することになったのです。飲食店など人の集まるところにジュークボックスを置いて、それにお客さんが十円、二十円入れて好きな曲を聴くというものです。



 コナミの創業当時は、ジュークボックスを扱う会社として設立されたということです。


>問 アメリカ系の会社がレンタルビジネスをしている中で、上月さんの会社は売りきりでやっていたのですね。

>上月 そうです。われわれは失敗して撤退しました。その一方で、米軍基地の周辺には歓楽街ができ、そこに軍の中の機械が広がっていく。それがゲームセンターの走りになりました。だからジュークボックスがゲーム業界のすべての原点なんです。



 そしてジュークボックスの販売に失敗し、そこからゲームセンターへと転換することになりました。



問 一九八一年、社員が三十人程度だった御社は一気に三十六人の新卒を採用した。なぜそれだけ思い切ったことをしたのですか。


>上月 当時、新聞広告だけではいい人が来なかったんです。職安もしかりでした。思い切ってと言いますが、仕事はいくらでもあったのにそれをこなす社員がいなかったということなのです。仕事があり、将来性もあるのに、それをやれる人がいない。新聞広告で採用しても意欲はない、能力はないということで、それではどうにもならないので、真っ白な新卒を採用して会社を築いていこうと思ったのです。

>問 しかし、よく三十六人も採用できましたね。

>上月 ですから当時、初任給十二万円が相場のところを十四万円にしたのです。

>問 当時は二万円の差は大きかったですよね。

>上月 だから採れたんです。




 ゲームをつくる転換にあたって、大量の人員が必要となりそこで給料を上げ人を呼び込み一気に確保したことが語られています。重要なのが次です。




>問 学生を集めるために、その他にも工夫しましたか。

>上月 ゲーム関連の職業は忌み嫌われる時代でしたから、電子応用機器の製造会社として募集しました。実際に電子応用機器という産業項目があり、間違いはないでしょう。電子応用機器で初任給は十四万円、オフィスは写真の通り、ということで募集した(笑)。けれど、会社に来たら実態がわかってしまうから、ホテルで面接をしました。来てくれるだけでうれしいのですから、筆記試験はやっていません。



 ここで語られるのが「ゲームで募集をかけると人は来ない」ということなのです。この点は重要で、コナミが上場する際にも語られています



>問 上場はスムーズにできたのですか。

>上月 最初、上場できますかと会計士に相談したら「とんでもない、無理です」と言われました。「組織もなければ、内部監査制度もない、取締役会の員数もそろっていない。なんにもないではないですか。だいたい就業規定はあるんですか」と。それで急きょ、そういうものを取り揃えてやりました。ゲームという分野では上場できなかったので、電子応用機器の会社として上場しました。電子応用機器がゲーム産業で使われているという位置づけですね。それで当社が上場すると、同業他社が「こんな産業でも上場できるのか」と驚いて、みんなが当社に勉強にきました。またうちの主幹事はN証券だったのですが、競合他社を聞かれてS社、N社、T社と答えると、N証券がみんなそこに「上場しませんか」と回り始めたんですね。それど、みんなが当社の後に続いて上場していったのです。



 なんと「ゲームという分野では上場できない」という当時の事情が語られています。社長の意識と関係なしに、ゲームという娯楽が如何に低く見られていたのかわかるかと思います。
 そしてインタビューはスポーツクラブ買収の件に踏み込みます。



>問 御社は二〇〇一年にピープル(現コナミスポーツ)を買収し、スポーツ事業を始められた。これは大きな転機になりましたが、そのいきさつは。

>上月 それ以前に、当社はダイエットができるゲームをつくっていた。音楽を聴きながら体を動かすだけでダイエットできるというものです。その時に、ピープルからカロリー計算などのノウハウをもらって、共同開発したのです。そのうち役員会で、リハビリできるゲームはどうかという案が出た。そういう方面も面白いねという議論をしていた中でどうせやるなら、病気にならないゲームの方がいいねといった話をしていたのです。そうした中で、たまたまマイカルが業績不振でピープルを売るという話が出てきた。健康産業はこれからの産業だし、何よりも世の中に受け入れてもらえる業種であることが魅力でした。住民から近くにはつくらないでくれと言われていたジュークボックスの時代から考えると、どこにも反対されないフィットネスクラブは大変な魅力でした。



 ダイエットできるゲームとはダンスダンスレボリューションのことで、フィットネスクラブにダンスダンスレボリューションを置かせようと営業活動に出たところで接点が出来た、ということが別記事にて書かれています。ここで重要なのは「ジュークボックスの時代には住民から反対運動の声すら出ていた」ということです。


 これらの話をまとめると、別の解釈ができるようになります。つまり上月元社長は「ゲームという娯楽が周囲から低く見られていた時代を、なんとかゲームという表現から逃れることでゲーム会社としてコナミを大きくしていった」ということなのです。
 「イメージが良くなく子供にも自分の職業が言えなかった」のは事実でしょう。ゲームの会社だと知られたら、子供が虐められたかもしれません。「ゲーム屋と呼ばれるのを嫌っていた」のもまた事実でしょう。「ゲーム屋」では会社を大きくすることができなかったのですから。

 これらの時代背景を踏まえて上月元社長のやってきたことを見れば、私はとても「この社長はゲーム嫌いだ! ゲームを嫌がるだなんて許さん!」などと非難することはできないのです。そして同時に「今ではゲームが好きだ」という浅いレベルの解釈のままいるのもできません。上月社長がどれだけゲームという娯楽に全力を注いで来たかは、好きや嫌いといったもので済ますにはいかないと理解できるでしょう。


 上月元社長はもう80手前の高齢です。亡くなってしまうのもおかしくない年齢です。そんな状態でありながら、「コナミの社長がゲーム嫌い」という風説が広がったままでは、流石にゲーム業界に貢献をしてきた大先輩に申し訳がないのではないか……そう思い、ブログの記事としました。少しでも風説が晴れることを願って。