名作はジャンルに変わる -メトロイドヴァニア GBA悪魔城ドラキュラ三部作レビュー-
私にとって悪魔城ドラキュラとは「友達や近くのお兄さん家に遊びにいくと置いてあって、楽しくは遊べるのだけれど高難易度で必ずクリア前に止めてしまう」アクションゲームでした。ジャンプの制動や攻撃の後の硬直具合といったきっちりとした操作性と、絶妙にダメージを受けるように計算された敵の配置は、子供の私にとって『やりがいがあるけれど友達の家で夢中になってやってるといずれ帰宅時間がくる』という結果を招くようになっていたのです(似たような系譜でロックマンシリーズも)。ファミコン版、MSX版、GB版ドラキュラ伝説などをプレイしたことがありますが、実際に私が購入し、クリアまで至ったのはそれよりもだいぶシリーズが進んだPCエンジン版「悪魔城ドラキュラX 血の輪廻」だったりします。
この血の輪廻、歴代のシリーズよりも確実に難易度が抑えられていて、かつ主人公リヒター・ベルモンドがサブウェポンの名手であるという設定があり超必殺技にあたるアイテムクラッシュを実装していて、苦手なところのゴリ押し、ボス戦の撃破を可能にしています。さらには二段ジャンプ・高速スライディング・ぶっ壊れ大ダメージ必殺技実装というチート性能を有しているもうひとりのプレイヤーキャラ、マリアもいるため、クリア自体は容易です。
バリバリ動くアニメのオープニング、CD音源を活かした高音質生再生BGM、そしてはじめてクリアすることができた悪魔城シリーズということで、非常に思い入れが深い作品となりました。スマブラSPにてシモンとリヒターが参戦したのは感謝以外ありません。ありがとうございます関係者各位の皆様。
さて、この悪魔城ドラキュラシリーズ、この後メガドライブの「バンパイアキラー」や血の輪廻のSFCへの移植版「悪魔城ドラキュラXX」を経て、突然変異を起こします。PS1で発売された「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」。アクションゲームである悪魔城ドラキュラはここにきてアクションRPGに変わりました(厳密にいえばディスクシステムにて発売されたドラキュラⅡがアクションRPGではありますが)。主人公アルカードを操作し、敵を攻撃すると数字でダメージが表示され、レベルアップと装備の概念があり、広く展開する悪魔城の中を探索して、ボスを撃破し次のフロアへと進む。今までになかった要素で作り上げられたこの月下の夜想曲は今までのシリーズファンのみならず広く衝撃を与えました。夢中になって皆が悪魔城の探索へと向かったのです。新しい装備を見つけ、お金を溜めて回復アイテムを買い、次なるフロアで手に入れた新能力で今まで行けなかった場所に到達し、そして最後のボスを撃破した……と思わせておいて、そのあとの衝撃の展開に目を見開きました。非の打ち所がない名作です。
その名作具合を象徴する言葉があります。「メトロイドヴァニア」。任天堂の探索アクション、メトロイドと、悪魔城ドラキュラの英題キャッスルヴァニアを組み合わせた造語です。探索し自らの能力を向上させ、さらに探索可能箇所を広げる2Dアクションのゲームのジャンルをそう呼ぶようになりました。月下の夜想曲は、一つのジャンルになったのです。
そしてそのメトロイドヴァニアの系譜は舞台をゲームボーイアドバンスへと移しました。アドバンスで悪魔城ドラキュラは三作発売され、その後ニンテンドーDSにて三作発売、系7作が正統なメトロイドヴァニア系譜の悪魔城ドラキュラとなります。
今回紹介するのはゲームボーイアドバンスで発売された三作です。これらは現在WiiUのバーチャルコンソールで購入することが可能です。というか買いました。そのまま積んでいたのを今回崩したので、「果たして現在の視点からも遊べる出来を持っているかどうか?」という切り口でレビューを行いたいと思います。最初はGBA悪魔城ドラキュラ第一作、悪魔城ドラキュラ サークル オブ ザ ムーンです!
悪魔城ドラキュラ サークル オブ ザ ムーン
ゲームボーイアドバンスのロンチタイトルとして登場したこの作品。主なシステムは月下の夜想曲をベースにしているものの、GBAのゲームらしく簡略化が施され、ショップの概念がなくなっています。敵を倒してドロップする防具や回復薬を集めつつ探索をし、特定の敵を倒して自らの力にして、さらにその組み合わせてさらなるスキルを発揮するデュアルセットアップシステムが今作の売りです。レベルの概念もあるため、たとえ道に迷ったとしても雑魚をぺちぺち倒していくのは無駄にはなりませんし、そんな中偶然新しいスキルを手に入れることもあり、普通に嬉しく苦になりません。
操作性は月下のアルカードのように身軽ではなく、主人公ネイサンはやや重さが感じられ、攻撃のときの隙が強く、移動速度も遅い…というもの。移動速度はすぐにダッシュという操作スキルを手に入れることができるから大丈夫…と思わせておいて、そのダッシュの操作方法は方向キー二連続押しというもの。つまりダッシュして敵に近寄り攻撃してまた距離を取る、ということをしたい場合、右二連続→攻撃!→すぐさま左二連続、という操作を余儀なくされます。もちろんこれを毎度毎度要求され、ミスするとダメージを受けることになります。
それに合わせてボスキャラの攻撃は非常に激しく一つ一つのダメージも大きめに設定されています。回復アイテムを使用するゴリ押しに頼りたくなりますが、今回はショップがありません。そのためゴリ押ししたあとは特定の敵を延々と倒し回復薬をドロップするまで待つ必要が生じます。
中盤まではギリギリ楽しめる高難易度に調整されていると思います。しかし後半のインフレに私はついていくことができませんでした。「せめて操作性がもう少し軽いか、ボスの動きが手加減されているものであったならば……!」と思わずにはいられません。おそらく学生の時であったなら延々とレベル上げとドロップまちをしてゴリ推してクリアしていたものと思いますが、今の私にはそこまでの根気と体力はないのです。無念。
そんなわけでサークルオブザムーン、この三部作において唯一未クリア状態でのレビューであることをご容赦ください。
キャッスルヴァニア 白夜の協奏曲
続いて二作目、なぜか悪魔城ドラキュラではなく英題であるキャッスルヴァニアに変わっています。
なくなっていたショップの概念が復活した上、主人公ジュスト・ベルモンドの機動力がかなり高まっています。なにせ初期状態でLRボタンで左右ダッシュを実装しており、敵の懐にダッシュで飛び込み、攻撃してあたった直後にモーションキャンセルバックダッシュで敵の攻撃を避ける! という流れを簡単に行えるのです。その上さらに追加されたスキルでスライディングによる高速移動が可能となっていて、敵をなぎ払いつつ疾走し、ワープゾーンを飛びつつ目的地に飛び込んでいくことが可能になりました。移動によるストレスは低減した上に、サブウェポンがハートを消費する攻撃と、MPを消費するスペルフュージョンとに別れました。これがとにかく強力です。ボス戦にいたってはMPを一旦スペルフュージョンで使い切るまで当てて、その後MPが回復するまでハート消費のサブウェポン攻撃でしのぎ、回復しきったあとは再びスペルフュージョンで攻撃するという流れも可能です。二段ジャンプとダッシュの組み合わせでボスの攻撃もガンガン避けることが可能です。
そんな良好な操作性ではありますが、一つ問題が生じました。それは全体的にボスの攻撃が単調であったり、避け易すぎるものしかしてこなかったりする場合があるのです。レベル差もあるのでしょうが、初プレイでもボスが本格的な攻撃パターンを始める前に倒してしまった例もありました。前作サークルオブザムーンがボスの攻撃が激しすぎた傾向があったのと対象的に、今作はボスの攻撃は大人しすぎる傾向にあるのです。欲をいうならば、今作の操作性で前作のボスと戦いたかった……!
またハードがゲームボーイアドバンスということがあり、地図が簡素なものしかありません。そのため「地図はここで途切れているが、単純に強い敵がいるから先に進めなかったのか、特定スキルがないと進めないようになっているのか」という判断をすべて記録しておかないと道に迷うことになる、というのが今の視点からみると非常に不親切にあたります。悪魔城の構造は非常に広く、しかもプレイヤーを驚かせる一つの仕掛けがあるため、プレイヤーはどこに何があったかを正確に記録する必要があります。これは結構大変です。
そんな問題点もないわけではないのですが、「難易度を控えめにしつつも途中で山場がちゃんとあり自身のプレイスキルの上昇を感じさせることが出来る」という点で立派に及第点を超えており、今現在私のようなかつての悪魔城ドラキュラは思い出深いものの、クリアしたことがないような層にはちょうどよい調整となっているのではないでしょうか。ぜひ皆さんもプレイしていただきたい、おすすめできる作品です。
キャッスルヴァニア 〜暁月の円舞曲〜
GBA三作目はなんと未来の2035年が舞台です。そしてすでにドラキュラは完全に滅び去った後という展開で、今までの悪魔城ドラキュラではありえなかった設定ですが、やってることは今までのものを踏襲しているので安心です。いつものようにドラキュラ城が復活し、そこに閉じ込められた一般人の高校生の主人公来須蒼真が何故か自らの身体にみなぎる力を駆使して魔物と戦い探索して、幼馴染の少女と一緒に外にでることを目的としています。なんだかなろう小説のあらすじのようですが、そこを彩るサブキャラクターに、何処からどう見てもお前月下の夜想曲のアルカードだよな?としか思えない有角幻也を名乗る男がいたり、軍人のくせに商売を始めるハマーさんがいたりと、蒼真の力の真実を探求するといった探索以外の盛り上がりがちゃんと用意されています。
前作のような超強力な機動力はおとなしめになり、そこそこの機動力を有するだけになりましたが、今作の売りは「タクティカルソウルシステム」。敵を倒すと稀に敵の魂を奪い取り、それを自分のスキルとして活用することができるのです。アックスアーマーを倒せば斧を投げることができ、スケルトンアーチャーを倒せば弓矢が放ち、スケルトンキッカーを倒せばライダーキックを放つことができるのです!
これは良い点でもあり悪い所でもあります。全く意図しないところで偶然得た力がめちゃくちゃ強力だったり(例えばプロセルピナは敵のHPを吸い取ることができたり、ヴァルキリーは攻撃力・攻撃範囲ともに非常に強力です)するとテンションが上がってどんどん進められるようになります。反面、敵のソウルを奪えるかは完全に運であり、狙った敵のソウルを手に入れるために何度も何度も何度も何度も何度も何度も倒し続ける必要があります。全体的にいえることですが、確率に差がかなりあり、すぐに手に入る敵もいれば「こいつ本当にソウルを落とすのか?」くらいに思えるほどの敵もいます。一応確率を底上げしてくれるアイテムがあるにはありますが、非常に高価な上、体験できるほど確率をあげてくれるものではありません。
ソウルシステム以外では、主人公蒼真はボスを倒すたびにそのボスのソウルを手に入れ強力なスキルを有するのですが、これが後半になっていくたびに機動力のインフレをおこします。機動力はおとなしめになったといったな? あれは嘘だ。最終盤の蒼真くんは無限ジャンプとオーバースピードタックルを備えた悪魔城を蹂躙する超機動兵器と化します。これが愉しいのなんの! 今まで行く手を阻んでいた雑魚敵を粉砕しつつ目的地へと一点突破です。
ボスの難易度はちょうどサークルオブザムーンと、白夜の協奏曲の間のあたりで調整されています。ショップもあるのでどうしても苦手なボスがいた場合は回復薬のゴリ押しも可能です。GBA悪魔城の最終作ということもあり、今までのノウハウが詰まっている非常にレベルの高い作品であるといえるでしょう。ぜひ皆さんもプレイしていただきたい、おすすめできる作品です。
なお、DSにプラットフォームを移して直接の続編、悪魔城ドラキュラ 蒼月の十字架(なぜかまた悪魔城ドラキュラへと名前が戻っていますが)が発売されています。主人公蒼真が続投し、タクティカルソウルシステムを引き継いでいる上にDSの二画面を活かした敵パラメータや悪魔城MAPの常時表示が可能になっています。これが最高のインターフェースと絶賛したくなるほど見やすく、心地よいゲームプレイを実現しています。敵ボスをタッチペンで魔法陣を描かないと封印できないシステムさえなければ……!
以上でGBA悪魔城ドラキュラ三部作レビューを終えようと思います。ぜひ皆さん、WiiUのバーチャルコンソールでプレイしてみてくださいね。え? WiiUを持ってない? それはいけませんね。はやくゲーム屋さんに行ってWiiUを買ってくるのです。同時にピクミン3と幻影異聞録♯FEとスプラトゥーンとThe Wonderful101を買ってくるのです! くるのです!!