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現代神長豊節学概論 -ゼロヨンチャンプRR-

 えー、皆さんは見事、倍率0.15倍を勝ち抜き、この国立AMD大学に合格されたわけですけれども、これから学びますのは小中高と今まで触れたことのない教科、現代神長豊節学概論です。それを受け持ちますのは私、非常勤講師の黒沢ソートンです、よろしくおねがいします。さて、この現代神長豊節学概論、学問としては非常に日が浅く、つまりは非常に発展の余地が目覚ましい教科と言えるのではないでしょうか。神長豊節とはどういうことであるのか、実例をあげて触れていくことにより、皆さんに学んでいってもらいたいと思います。

 本日教材として使いますのは、はい、このスーパーファミコン用ゲームソフト、『ゼロヨンチャンプRR』です。ゼロヨンチャンプシリーズとして三作目にあたるものですね。ストーリーを解説しますと、受験に失敗して浪人生になってしまった主人公の赤沢くん。その上彼女だと思っていた女性からは一方的に別れを伝えられ見事に彼女いない歴18年の記録を更新中というどん底の中、ようやく普通車免許を取ることが出来たという明るい話題をもとに、車を買う前にスポーツカーイベントに行っていろいろ実車を見てみようとします。そのスポーツカーイベントにて、頭を何度も下げて日本ゼロヨン(400m直線オンリーのカーレース)のチャンプに教えを請おうとしている青年を見つけます。思わず「なんだありゃ、みっともねぇ」とつぶやいてしまいますが、なんとそれが青年に聞こえてしまいました。青年は「お前みたいなうす汚いやつにみっともないと言われる筋合いはない!」と売り言葉に買い言葉。お互いがヒートアップし、ゼロヨンで土下座をかけた勝負をつけることになりました。
「ここにある車は全部親父の会社のものだ、好きな車を選べ」と自身のボンボンぶりをアピールしたあと、なんと青年が選んだ車はスターレット(お手軽価格スポーツカー)。お前をゼロヨンでぶっ千切るにはこれで十分だ、といわんばかりの青年に対し、赤沢が選んだ車はスープラRZ(280馬力の化物スポーツカー)。車のパワーは段違い。このゼロヨンの勝敗は……なんとスープラRZ(赤沢)の敗北でした。自身の敗北にショックを受けながらも、土下座をする赤沢。高笑いしながら去っていく青年の後ろ姿を見ながら、赤沢は受験に失敗したときよりも、彼女にフラれたときよりも強い悔しさを胸に秘め、決意を決めます。「ゼロヨンで、絶対あいつを叩きのめしてやる!」 あの青年、藤原大輔に対する復讐を機に、赤沢はゼロヨンの世界に足を踏み入れるのでした。

 さてこの藤原大輔くんなのですが、徹底的に嫌味で高飛車なキャラクターとして描かれています。先程の勝負でスターレットに勝てたのも、実はゼロヨン用にチューンナップしていたスターレットだったと判明します(ゼロヨン用にチューンされた車には、ノーマル車では絶対に勝てません)。ゼロヨンライセンスを取り、大会に出ると、そのトーナメントの決勝戦に必ず当たるようにプロモーターの父親に頼んでいたことがわかります。そして実際に決勝戦で当たると……激速で絶対に勝てません!(いわゆる負けイベントです) ゼロヨンのランキングシステムはEランクからAランクの5ランク制になっていますが、このうちEランクからBランクの4戦、すべてが負けイベント! そのたびに藤原に嘲笑られ、うっぷんを溜めていく羽目になります。裏技で手に入れることができる、瞬間的に512kmに加速するジェットエンジンを使ったとしても、奴には勝てません、ムキィィィィ!! そして負けるたびに「はっはっは! これにこりたらゼロヨンはもうやめたらどうだ?」と言い放ち、プレイヤーに対しても「こいつ絶対にぎゃふんと言わせてやる」度を高めていきます。 しかも奇跡的にナンパに成功した女の子のために良いところを見せてやろうとサーキットにつれていけば、圧勝する藤原のファンになってしまう始末! 赤沢くんの精神が心配になる展開です。

 ここまで負け続けた最後の最後、Aランク到達でのトーナメントで勝利すると(そうなるとランク二位となり、チャンプへの挑戦権を獲得できる)どうなるでしょうか? 今までの鬱憤を晴らすような展開になるのでしょうか?
 藤原に勝利した赤沢は思わず叫びます。「どうだ! 俺の速さがわかったか!?」それに対しての藤原の反応はなんと「ああ、認めるよ。お前は速い」だったのです。戸惑う赤沢、そして同時にサーキットが沸き立ちます。その中心には一人の青年、実は彼こそが一年前、絶大な速さと強さで君臨し続けていたものの、突如姿を消した先代のゼロヨンチャンプだったのです。現チャンプがその帰還に異議を唱え、エキシビションマッチとなり、勝ったほうが新しいチャンプとなるのですが……圧倒的大差で先代チャンプが勝利。先代チャンプは真ゼロヨンチャンプへと返り咲きました。その強さに身震いすら覚えた赤沢。真チャンプと対面したとき、「絶対に貴方に勝ちます!」と宣言します。そう、藤原への復讐心で始めたゼロヨンを、赤沢はそれを達成したあと新しい目標に遭遇しえたのです。絶対に、あの人の元へとたどり着いてみせる、と。そんな赤沢に真チャンプは「チューナーを見つけるんだ」とアドバイスして去っていきました。
 チューナーというのは車のチューンナップを行う専門メカニックのことなのですが、紆余曲折あり、まゆみという凄腕チューナーの女の子がついてくれるようになります。そしてチャンプへの挑戦当日、この対決に異を唱える者がいました。そう、真チャンプとの対決に負けたチャンプ……ああもう面倒くさい、「偽チャンプ」が『ランキング二位は俺だ。お前じゃない!』と言い出しました。言われてみるとなるほど、真チャンプが一位で、それに負けた偽チャンプが二位、赤沢はその下……一理あります。ならば偽チャンプを軽くちぎって、その後チャンプへ挑戦に…としようとしたところ、まゆみちゃんがストップをかけます。「自分のチューンは車の性能を限界まで引き上げるもの。連戦なんてしたら車が壊れちゃう!」。さあ赤沢くん困った!
 そこで声をあげたのがなんと藤原! 彼は偽チャンプに挑戦状を叩きつけます。一度は教えを請おうと頭を下げていたのに、なぜ? 藤原は皆になぜ偽チャンプに失望したのか話し出します。真チャンプが一年前突如姿を消したのは、自分を下したアメリカチャンプを追ってアメリカに行っていたからだったのです。偽チャンプは彼の車を裏ルートで手に入れ、自分で作ったかのようにみせかけ、他のライバルを裏工作で蹴落とし、さらには真チャンプの誹謗中傷をばらまいて、まさしく偽チャンプとして君臨し続けていたのでした! そう、真チャンプはPCエンジン版ゼロヨンチャンプの主人公だったのです! そして行われる藤原vs偽チャンプのエキシビション。その勝者は……藤原でした! 「お前の敗因は車の性能を活かしきれなかったことだ。もっと他人の車だからしかたないがな」 そう言い放ったあとで、藤原は赤沢にこう言います。「赤沢、がんばれよ。チャンプは速い、あの人は本物だ!」。赤沢は藤原に「お前のぶんまで走ってやるぜ!」と返してチャンプへの挑戦に向かいます。それを見ていたまゆみちゃんが「彼、いい人ね」と思わず言いました。それに対して赤沢は「ああ、俺のライバルだからな」と答え、チャンプの元へと向かっていくのでした……。

 以上がゼロヨンチャンプRRにおける赤沢視点のライバル藤原なのですが、いかがでしたでしょう。非常に傲慢で腹がたつキャラが一気に好印象キャラに入れ替える様子がわかりますでしょうか。とにかくムカつかせるように丹念に丹念に描写を織り込んでいきながら、最後に勝利を得るとすぱっと対応が切り替わり、その後にピンチに助けへと駆けつける仲間として見事にキャラを変容させることに成功しています。この藤原くん、続編のゼロヨンチャンプRR-Zにももちろん登場しているのですが、そのときにはお互いの家に普通に行き来しててもう普通の親友です。ゼロヨンはもう引退してしまったのですが、その理由は「どうやっても赤沢には勝てないから」という潔いもの。私が「神長豊節」と提唱している、「ごく短期間にキャラの印象をぐるりと180度反転させる演出」の、まさしく一例です。
 このような優れた技法をゲームと言う媒体で行えうる、という点において、神長豊はもしや、シェイクスピアの生まれ変わりなのではないか? という説を提唱したピーター・ラザエル博士は、残念ながら学会から追放されてしまいましたが、私はそう、ない話ではないな、と考えております。
 ゼロヨンチャンプRRにはもうひとり、「ごく短期間にキャラの印象をぐるりと180度反転させる演出」を行われたキャラがいるのですが、そのキャラの講義はまた後日行います。
 それではここで講義を終えたいと思いますが、次回の講義は「AMDはいかにして神であるか」です。欠席者には単位はあげません。必ず出席するように。