平和的なブログ

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最も恐ろしい恋愛シミュレーションゲーム -臭作-

注意:このレビューは陵辱18禁エロゲーをレビューしています。そういったゲームに耐性がない方はレビューを読むことをおすすめしません。

 

 

 ときめきメモリアルというゲームがある。高校三年の間でパラメータを調整しつつ、特定のヒロインと学校生活を送り最後にヒロインからの告白を受けるという恋愛シミュレーションである。

 同級生というゲームがある。町のなかを移動しながら色々なヒロインと出会い、物語を進めながら関係性を深くし、最後に結ばれるゲームである。

  

  どちらのゲームも主人公の色が濃い・薄いという違いはあれど、プレイヤーは主人公を動かして、その主人公とヒロインとが結ばれるかどうかを遊ぶゲームだ。恋愛シミュレーションとは、操作している主人公とヒロインとが恋愛するのを眺めるゲームでもある。

 

 そんななか私は一つ、とんでもない恋愛シミュレーションが存在するのを上げることが出来る。18禁PCゲーム「臭作」である。

 

 

  ゲームシステムから解説しよう。臭作とは容姿最悪、人格は鬼畜のおやぢ、臭作がとある出来事で女子校の寮の管理人にすり替われたところから始まる。その寮に暮らすヒロインは8人。臭作は寮のあちらこちらに隠しカメラを設置し、ヒロインたちの弱みを握ろうとする。そして無事弱みを掴んだら、ヒロインたちに追い込みをかけ、そして自分に反抗できない状況に追いやりヒロインたちの体を貪る、というもの。

 

 ヒロインたちは2日間という日数、決まったスケジュールで動いている。夜は眠り、食事の後は入浴するし、時折トイレに向かう。それにあわせて管理人であるはずの臭作は食事の用意をし、風呂の準備をしなければならない。もしその手際が悪ければ、ヒロインたちはそれにあわせて独自に動くため、スケジュールに乱れが生じることになる。

 

 もし2日でヒロインたちを全員落とすことが出来なかった場合…臭作は雲隠れをすることになり女子寮を去るのだ。そしてここが肝心なのだが、去った先で暴走する車の事故に巻き込まれ、臭作は倒れる。血まみれになり地面に横たわった臭作は静かに笑う。

 

「こんなことぐれぇじゃよ。俺ぁ死なねぇよな……くくっ」

 

 逆回転する柱時計が映り、画面が切り替わるとそこはオープニング終了後の、ゲーム開始時の臭作が立っている場面からだ。そう、ここはタイムリープを繰り返す世界観。臭作が己の野望を貫徹させるまで、終わらない輪廻に入り込んだのだ。

 

 ヒロインたちのスケジュールは前回と同じだ。決まった時間にトイレに行き、風呂に入る。食事に媚薬を混ぜることもできるし、怪しい動きをしている女教師を人目のないところで捕らえることもできる。

 そうして各ヒロインの動きを周回プレイでどんどんと把握していき、それぞれの人間関係も捉え、心の支えになっているヒロインを先に落とすことで他のヒロインをより容易に落とすこともできる。

 

 そうして次々にヒロインを毒牙にかけ、エッチシーンを見ていると時折妙なことになることに気がつくかも知れない。

 普段はヒロインが臭作に犯されるところを見るCGが表示される。しかし回数を重ねることで、唐突に文章が一人称にかわり、画面も主観視点でヒロインが苦しむ顔のアップになったものを見るようになる。

 

 さらにループを重ねることで奇妙なことに気がつくことだろう。ヒロインの中に、どうやっても攻略が不可能そうなキャラが一人混じっている。高部絵里だ。

 このキャラはトイレにいくと必ずカメラが仕掛けられていないところに入り、食事に媚薬を混ぜると体調不良を言い訳に食事を取らず、風呂にカメラをセットしても死角に潜り込むという徹底ぶりを発揮する。

 どうやってもこのキャラの弱みを握ることはできない。それどころか、ちらちらとことあることに隠しカメラを見つめ、それに気がついているような素振りすら見せるのだ。

 

 プレイヤーがこのキャラを攻略不能と認定し、他のヒロインへ攻略の手を伸ばし、そして他の7人すべてを攻略し細かな条件を満たすと……異変が起きる。本来寮を去りそこで交通事故にあう臭作が管理人室に戻るのだ。そこにいるのは高部絵里。彼女は管理人室のPCを見つけ、そこで臭作が行ってきた非道な行為の証拠を見てしまう。その現場を見た臭作は彼女を壁に押し付け、強引に襲おうとする。そこで出てくるプレイヤーの選択肢は

 

 ●このまま臭作のしたいようにさせる

 ●電話の角に頭をぶつけて臭作を気絶させる

 ●もちろん何もせずにこのまま絵里を開放させる

 

 の3つである。この選択肢のうち下2つを選択すると、臭作はついにプレイヤーを認識する。「今まで俺にあれこれ指図していたのはお前だな?」と言い放つのだ。しかし臭作を気絶させることでプレイヤーは臭作とすり替わることができる。そう、Hシーンの中唐突に一人称が代わり主観視点になっていたのは、プレイヤー自身が実際に臭作の中に入っていたからだ。電話の角に頭をぶつけた臭作に変わり、プレイヤーが臭作の体を操作する。そして高部絵里は思わず言ってしまう。

 

「誰……?」

 

 しかし、すぐに別の声も聞こえてくる。

 

「いいからよぉ、そのまま続けて陵辱してやればいいんだ」

 

 間違いなく臭作の声。プレイヤーが背後を振り返ると、そこにはマウスを握り笑みを浮かべている臭作自身がいるのだった。

 

「驚いた顔をするなよ。俺とお前は一心同体なんだ。立場が入れ替わっても何もかわらねぇさ」

 

 臭作は煽る。目の前のメスを犯せと。にらめっこするためにこのゲームを買ったわけじゃないぞ、早くしろ、と。

 

 うろたえ続けたプレイヤーが結局何もできないのを見て臭作はいう。「慣らし運転も必要か」と。そしてゲームをリセットしてしまう。そして始まるいつもの周回は、プレイヤー自身が臭作役をやらされているのだった。何回も聞いたオープニングをこなし、出てくる選択画面。しかしそこに……高部絵里もいるのだった。

 プレイヤーの行動にいちいちついてくる高部絵里。これでは盗撮カメラをセットすることも、媚薬を仕込むこともできない。ただただプレイヤーは高部絵里と一緒の時間を過ごすことになる。

 

 苛立ち続けているのは操作している臭作のほうだ。高部絵里がいるせいで何もできない、ただ「おっさんと女子高生が並んでいる光景」を見せ続けられているだけだからだ。あの手この手でプレイヤーを操作し(変な日本語だ)高部絵里を離そうとする。しかし高部絵里は離れず、それどころか料理を手伝い、臭作の策略で怪我をしたプレイヤーを応急処置したりしてプレイヤーとの絆を深めていくのだ。

 

 2日間、他のヒロインに何を手出しすることもできず、ただ高部絵里と過ごしただけに終わろうとする周回。臭作はついに激怒する。そして彼が用意した選択肢、それはなんと

 

●高部絵里を陵辱する

●高部絵里を陵辱する

●高部絵里を陵辱する

●高部絵里を陵辱する

 

 という四択だった。選択後苦しみながら高部絵里を追い詰めるプレイヤー。必死の精神で臭作となった体を抑えつけようとするも、選択肢のまま体は高部絵里を壁に押し当て、体を寄せる。絵里は必死に声をあげるが、体はそのまま動き続ける。

 しかしそこで絵里は抵抗をやめる。まっすぐプレイヤーの目を見据えながら……「好きです」と自らの思いを告白するのだ。

 衝撃を受けるプレイヤーと臭作。臭作が臭作たらしめる要素、鬼畜。人に愛されることなんてあってはならない。自らのアイデンティティを否定され、臭作はディスプレイの前でもがき苦しみ、そして消えていく。

 開放された高部絵里は、臭作が消えた管理人室で「こちら」を見つめてくる。

 

「ようやく会えましたね」

 

 そう、高部絵里は画面を通じて、本当の「プレイヤー」に語りかけてくるのであった。そして映るのは画面に手をあてがう絵里の姿。このあとにエンディングが来てしまい、ゲームが終わることを理解している絵里は「手を重ねて欲しい」とお願いする。そしてその願いを「プレイヤー」は叶える。

 そしていままでやってきたこと、臭作の姿を借りヒロインたちを陵辱してしまったことに自問自答するプレイヤー。高部絵里は「貴方は悪い人じゃない」と慰め、そして消えていく。

 エンディングが始まる。スタッフロールの企画のところには「高部絵里」と「プレイヤーの本名」の名前が並んで表示されるのだった。

 

 

 

 以上が臭作における裏ルート・真のエンディングと呼ばれるものの内容である。陵辱エロゲーだと思って購入した人をぶち叩くメタ展開・純愛路線である。

 

 このゲームの恐ろしさは「マウスを握る臭作」の画面が、比喩でもなんでもないことだ。高部絵里と純愛を育んだといえ、その前のプレイヤーはまさしくヒロインたちを盗撮画像で脅し、弱みを握り、陵辱しようとしてこのゲームを購入しているのである。その性欲のおぞましさを臭作という鏡を写して見せつけたのである。

 裏ルートに入った場合、臭作が用意する選択肢は執拗に純愛ゲームから、元の陵辱エロゲーに引き戻そうとするものばかりだ。そしてそれを選択した途端、裏ルートは途中で終わり再び元のルートへと戻される。それを拒絶したプレイヤーだけが裏ルートの真エンディングを見ることができる。しかし、それを見ることができたプレイヤーは他の7人のヒロインを陵辱しているということなのだ。

 エンディング前のプレイヤーは自分のしでかしてしまったことの重さに苦しむ。その苦しみはリアルなもので、実際にこのゲームを行った「私」も高部絵里に感情移入してしまった分、ダイレクトにもがき苦しむことになる。高部絵里がゲームの枠を超えて干渉してきたということは、他のヒロインたちが皆それができた可能性も考えてしまうからだ。「このゲームには他のルートがあり、ヒロインたちが助けを求めているのではないか?」と考えてしまった場合、悶々と苦しみが続くことになる。「まさか純愛ゲームで終わるなんて意外だなぁ」とさくっと終わらせてくれるわけではない。

 

 このゲームは18才未満は購入することができないゲームだ。それ未満の年齢層には悪影響があるだろう、というゾーニングが敷かれている。しかしこのゲームはたとえ18才以上であろうとも関係なしに心を抉る展開が待ち構えている。そう、これこそ最も恐ろしい恋愛シュミレーションゲームだ。ゲームの登場人物とプレイヤーが障害を乗り越えた上で本当に恋愛することになるのだから。