平和的なブログ

ゲームのことばっかり話してます。たまに映画とか。

ボンバーガールのガチャがわけわからなくなった話

 アニメBLACK LAGOONにこんな台詞がありました。

「私がこの世で我慢ならんものが二つある。一つは課金ガチャ、そしてロード時間だ」

 何話かは思い出せませんが絶対にあったんです。信じてください。


 とにもかくにもガチャは一般的になりました。今ではソシャゲのみならず、アーケードゲームであるはずのボンバーガールにも実装されている始末です。
 ボンバーガールは4vs4でオンラインで戦いあい相手のタワーをより速く壊したほうが勝ち、というスプラトゥーンボンバーマンを上手く融合したようなゲームです。このゲームにはガチャがあり、100円を入れてプレイした後、試合結果発表の後に一度だけガチャがすることができ、それにより新規キャラの参入や、追加のチャットボイス、ボンバーガール達の衣装を手に入れることができて、さらにその後100円を追加することによりプレイせず二回ガチャが回せるような仕様になっています。


 ここで弁護するをするならば、「決してガンガンガチャを回したプレイヤーが優位に立つわけではない」というゲームデザインが施されていることでしょうか。特にパラメータを強化する要素はガチャにはなく、新規キャラも特段優位になるようなスキルを保持しているのではなく、あくまで「プレイヤーの戦略に幅が広がる」程度のもので、それも上手く呼吸をあわせて動いてくれる仲間がいるほうが大事です。自分が何をしたいかを伝えるのと同時に、仲間が何を考えているのかも読み取る必要があるのがこのボンバーガールというゲームの肝です。攻撃だけでは勝てず、守備だけでも勝てません。



 それにしたってこのゲーム、ガチャへの動線が露骨すぎ。



 細かく解説しますと、試合結果が発表されたあとそこそこ長いロードがかかります。その後「無料ガチャ」という表示が現れ、決定キーでそれを押すと筐体真ん中にある起爆ボタンが物理的に盛り上がるので、それを叩きます。そうすると画面の中で演出が始まり、しばらく時間がかかってからガチャ結果として何が手に入れることができたか表示されます。その後ロード時間を挟んで「ガチャを回しますか?」という選択肢が現れます。当然私はガチャを回すわけがないのでNoを選択して決定キーを押します。再びロード時間を挟んでようやくコンティニュー画面になり、そこでNoを選ぶことでようやく完全にゲーム終了です。Yesを選択すれば再度ゲームをプレイすることができます。(後ろに大きなお友だちがいた場合は変わってあげましょう)


 試合終了からゲーム終了までおそらく1分以上はかかっています。アインシュタイン博士が提唱した特殊相対性理論によれば、このときのロード時間も相まって体感時間は5時間を超えると言われています。はっきりいって長すぎます。
 これが毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回やらされるんです。苦痛です。ボンバーガール自体は非常に良く出来ているゲームなんです。ガチャをしたい人は多分ガンガン試合終了後に100円を投下しまくっているんでしょう。それはそれでかまいません。好きな人は好きなだけ回してください。だから、だから、オプションで「ガチャ演出をスキップ」と「ガチャへの選択肢を表示させない」を実装してください!


 試合終了後にさっと席を立たせてください! これがそこまで出過ぎた望みだとは私にはどうしても思えないんですよ。頼みますよコナミアミューズメントさん(もうすく祝三周年)。

特別編 「KONAMIの社長はゲーム嫌い」という伝説

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 タイトルのような話を皆さんは一度聞いたことがあるのではないでしょうか?
 実はこういう話には珍しく、全くの大デマ…というわけではなく、たどりにたどればソースらしき逸話に到達することが可能です。
www.nikkei.com

 有料記事ではありますが、登録することで月10本無料で読むことができる記事なので、その一部を引用致します。
>「(ゲームの)イメージが良くなく子供にも自分の職業が言えなかった」。上月は99年、創業当時を振り返ってこう語っている。
(中略)
>「上月さんは『所詮はゲーム』という世間の風潮を気にして、『ゲーム屋』と呼ばれるのを嫌っていた」。経営会議に立ち会ったOBはこう打ち明ける。

 以上の箇所が各地に転載され、「コナミの社長はゲーム嫌いで、ゲームを止めたがっているのだ」という風説が広がりました。

 私は一時それに対して「この文章はそういう意味ではない。99年といえばコナミ音ゲーをヒットさせ、コンシューマーにも意欲作を出していた。今ではその子供が後を継いでいる。つまり『昔はそう思っていたが、今はゲームが好きだ』という意味なのだ」と説明していた時期がありました。

 その解釈は大間違いというわけではなかったのですが、いささか考察が甘かったのです。
 
 そもそも何故このような風説が流れてしまうのか、というと、原因の一つとしてコナミ創設者上月景正氏は表に出てくることがほとんどない」というのが挙げられます。99年に受けたインタビューは今はもう直接確認できない上、私がネット上で確認できるインタビューはわずか一件のみでした。
 その一件のインタビューをご覧になれば、「イメージが良くなく子供にも自分の職業が言えなかった」「ゲーム屋と呼ばれるのを嫌っていた」の本当の意味がわかるかと思います。
 
kigyoka.com


 2005年、起業家倶楽部のコナミ特集の際、当時の上月元社長(今はコナミホールディングスの会長となり、第一線を退いています)へインタビューを行ったものです。ぜひ全文を読んでもらいたいのですが、特に注目すべき点を引用します。

 
>問 まずはゲーム業界に入ったきっかけ、創業のいきさつを聞かせていただけますか。

>上月 昭和四十年代の頃、私はたまたまレコード会社に勤めており、ジュークボックスという機械が出てきて、それを担当することになったのです。飲食店など人の集まるところにジュークボックスを置いて、それにお客さんが十円、二十円入れて好きな曲を聴くというものです。



 コナミの創業当時は、ジュークボックスを扱う会社として設立されたということです。


>問 アメリカ系の会社がレンタルビジネスをしている中で、上月さんの会社は売りきりでやっていたのですね。

>上月 そうです。われわれは失敗して撤退しました。その一方で、米軍基地の周辺には歓楽街ができ、そこに軍の中の機械が広がっていく。それがゲームセンターの走りになりました。だからジュークボックスがゲーム業界のすべての原点なんです。



 そしてジュークボックスの販売に失敗し、そこからゲームセンターへと転換することになりました。



問 一九八一年、社員が三十人程度だった御社は一気に三十六人の新卒を採用した。なぜそれだけ思い切ったことをしたのですか。


>上月 当時、新聞広告だけではいい人が来なかったんです。職安もしかりでした。思い切ってと言いますが、仕事はいくらでもあったのにそれをこなす社員がいなかったということなのです。仕事があり、将来性もあるのに、それをやれる人がいない。新聞広告で採用しても意欲はない、能力はないということで、それではどうにもならないので、真っ白な新卒を採用して会社を築いていこうと思ったのです。

>問 しかし、よく三十六人も採用できましたね。

>上月 ですから当時、初任給十二万円が相場のところを十四万円にしたのです。

>問 当時は二万円の差は大きかったですよね。

>上月 だから採れたんです。




 ゲームをつくる転換にあたって、大量の人員が必要となりそこで給料を上げ人を呼び込み一気に確保したことが語られています。重要なのが次です。




>問 学生を集めるために、その他にも工夫しましたか。

>上月 ゲーム関連の職業は忌み嫌われる時代でしたから、電子応用機器の製造会社として募集しました。実際に電子応用機器という産業項目があり、間違いはないでしょう。電子応用機器で初任給は十四万円、オフィスは写真の通り、ということで募集した(笑)。けれど、会社に来たら実態がわかってしまうから、ホテルで面接をしました。来てくれるだけでうれしいのですから、筆記試験はやっていません。



 ここで語られるのが「ゲームで募集をかけると人は来ない」ということなのです。この点は重要で、コナミが上場する際にも語られています



>問 上場はスムーズにできたのですか。

>上月 最初、上場できますかと会計士に相談したら「とんでもない、無理です」と言われました。「組織もなければ、内部監査制度もない、取締役会の員数もそろっていない。なんにもないではないですか。だいたい就業規定はあるんですか」と。それで急きょ、そういうものを取り揃えてやりました。ゲームという分野では上場できなかったので、電子応用機器の会社として上場しました。電子応用機器がゲーム産業で使われているという位置づけですね。それで当社が上場すると、同業他社が「こんな産業でも上場できるのか」と驚いて、みんなが当社に勉強にきました。またうちの主幹事はN証券だったのですが、競合他社を聞かれてS社、N社、T社と答えると、N証券がみんなそこに「上場しませんか」と回り始めたんですね。それど、みんなが当社の後に続いて上場していったのです。



 なんと「ゲームという分野では上場できない」という当時の事情が語られています。社長の意識と関係なしに、ゲームという娯楽が如何に低く見られていたのかわかるかと思います。
 そしてインタビューはスポーツクラブ買収の件に踏み込みます。



>問 御社は二〇〇一年にピープル(現コナミスポーツ)を買収し、スポーツ事業を始められた。これは大きな転機になりましたが、そのいきさつは。

>上月 それ以前に、当社はダイエットができるゲームをつくっていた。音楽を聴きながら体を動かすだけでダイエットできるというものです。その時に、ピープルからカロリー計算などのノウハウをもらって、共同開発したのです。そのうち役員会で、リハビリできるゲームはどうかという案が出た。そういう方面も面白いねという議論をしていた中でどうせやるなら、病気にならないゲームの方がいいねといった話をしていたのです。そうした中で、たまたまマイカルが業績不振でピープルを売るという話が出てきた。健康産業はこれからの産業だし、何よりも世の中に受け入れてもらえる業種であることが魅力でした。住民から近くにはつくらないでくれと言われていたジュークボックスの時代から考えると、どこにも反対されないフィットネスクラブは大変な魅力でした。



 ダイエットできるゲームとはダンスダンスレボリューションのことで、フィットネスクラブにダンスダンスレボリューションを置かせようと営業活動に出たところで接点が出来た、ということが別記事にて書かれています。ここで重要なのは「ジュークボックスの時代には住民から反対運動の声すら出ていた」ということです。


 これらの話をまとめると、別の解釈ができるようになります。つまり上月元社長は「ゲームという娯楽が周囲から低く見られていた時代を、なんとかゲームという表現から逃れることでゲーム会社としてコナミを大きくしていった」ということなのです。
 「イメージが良くなく子供にも自分の職業が言えなかった」のは事実でしょう。ゲームの会社だと知られたら、子供が虐められたかもしれません。「ゲーム屋と呼ばれるのを嫌っていた」のもまた事実でしょう。「ゲーム屋」では会社を大きくすることができなかったのですから。

 これらの時代背景を踏まえて上月元社長のやってきたことを見れば、私はとても「この社長はゲーム嫌いだ! ゲームを嫌がるだなんて許さん!」などと非難することはできないのです。そして同時に「今ではゲームが好きだ」という浅いレベルの解釈のままいるのもできません。上月社長がどれだけゲームという娯楽に全力を注いで来たかは、好きや嫌いといったもので済ますにはいかないと理解できるでしょう。


 上月元社長はもう80手前の高齢です。亡くなってしまうのもおかしくない年齢です。そんな状態でありながら、「コナミの社長がゲーム嫌い」という風説が広がったままでは、流石にゲーム業界に貢献をしてきた大先輩に申し訳がないのではないか……そう思い、ブログの記事としました。少しでも風説が晴れることを願って。

特別編 ゲームとレーティングと表現規制あれこれ

 

まえがき

 祝! Switch版スーパーリアル麻雀PV発売! そして即配信停止!
 配信開始から「光から何かがこぼれて見えている」という話題が聞こえてきた時点で、こうなる未来は皆様大体予期していたものかと思います。
 このSwitch版スーパーリアル麻雀PVは元々セガサターンにて発売されていた移植版を、再度移植した作品になります。そうなると「あれ? なんでかつて発売されていた作品がそのまま移植ができなくなるんだ?」という疑問が生まれ出るかもしれません。そんなわけで今回の記事はゲームの中の表現規制問題の話です。こういう話、お好きでしょ? 私は嫌いですけど。

ファミリーコンピュータの誕生

 日本においての家庭用ゲーム機はファミコンが起源というわけではありません。ありませんが、このゲーム機によって日本の据え置き型ゲームの爆発的普及が始まったは事実なのでここから始めることにします。
 任天堂はそもそも当初、他社にファミコンソフトの開発を許す方針ではなかったとされています。その後方針転換を行い他社に開発を開放することとなったのですが、とにかく厳しいチェックを行ったことで有名です。いわゆる任天堂チェック」というものですね。まず「エロ厳禁」です。ファミコンゲームの中では性的な描写はほとんど許されませんでした。ギリギリを攻めたもので……ゴルゴ13の女性の下着姿とベッドシーンの影くらい? これはゲーム機というものがまだ身近になかった頃の時代、明確に「子供向けのおもちゃ」であるということをアピールするために必要だったのではないでしょうか。また残酷な描写も規制していたらしく、「東方見文録」では途中で主人公の一人が「死ぬ」のではなく、「いなくなる」という表現をしています(ただしこのゲーム、別方向でぶっとんでいて今では発売できないなんて話になっています)。

PCエンジンの場合

 ファミコンの登場後も様々なゲーム機が現れたのですが、ユニークな経緯を辿ったものでNECホームエレクトロニクスが発売したPCエンジンがあります。このPCエンジンは当初から他社の参入を強く促していたらしく、ナムコが登場時力を入れていたハードです。そんなハードなのですが、実は表現規制を敷いていなかったという証言があります。当時ハドソンにてPCエンジンに触れていた開発者岩崎氏は同人誌内にて、「全くそういうことを考えておらず、脱衣麻雀『麻雀学園』が発売されてからまずいことに気がついた」という話を伝え聞いたと話しています。その「麻雀学園-東間宗四郎登場-」は女の子が服をブラまで脱いでしまい、はっきり乳首まで描写されていました(しかしあくまで当時のゲーム機なりの性能のものでしかありませんが)。これが問題となり、再生産分は「麻雀学園マイルド」としてグラフィックを手直しされたものとして発売されました。


 この後「理由のない脱衣は駄目」「だけど理由がある脱衣によるサービスシーン自体は許容する」といったふんわりとした規制がNECにより敷かれ、以後に発売されたPCエンジンスーパーリアル麻雀P4カスタム」においては「エアコンが壊れているので主人公が勝つと室温があがり仕方なく女の子が脱いでいく」というぶっ飛んだ理由付けがされています! しかもこのゲームでは、女の子は下着を脱いだ下に下着を履いており、どんなに頑張っても裸を見ることが出来ません。あくまで下着のみです。開発者インタビューにおいてNEC-HEさんの方から『麻雀に勝って脱がすという要素だけはなんとかして削ってください』と言われた」なんて発言もあります。……が、その他のゲームを振り返ると、「ゼロヨンチャンプ2」では裏技で女性の裸を見ることができますし、「コズミックファンタジーシリーズ」では「お約束」としてヒロインがシャワーシーンを覗かれたり着替えを見られたりするのが必ず(!)入っていましたし、後年の日本物産発売の「セクシーアイドル麻雀・野球拳の詩」あたりでは「AV女優の出演作から上半身アップを切り取って動画再生」なんてこともしていました……。書いてて思ったんですが、これ正気ですかね? 日本物産もさることながら、NEC-HEの判断基準もよくわかりません。流石にこの頃となると「子供が無条件で脱衣麻雀買えるのはおかしくないか?」という反応に応えたのか、自主規制として「18才以上推奨」「15才以上推奨」といったレーティングが作られることになりました。セクシーアイドル麻雀・野球拳の詩も、18才以上推奨です。

圧政任天堂スーパーファミコン

 さて、PCエンジンから少し経って発売されたスーパーファミコンですが、「無法地帯」といえなくもないPCエンジンとは対象的に、こちらはファミコンから引き続き任天堂チェックがガッチガチです。『着替えは許すが脱衣は許さん』とばかりに、麻雀ゲームは水着が限界で下着も許してくれません。そのため「美少女雀士スーチーパイでは勝利をしても水着で終わり、前述のスーパーリアル麻雀P4」が移植された際は「勝利をすると女の子とデートができる」という内容に変わっています。一応海にいって水着姿を見せてくれますが。
 また、メタルマックス2では焼死体はそもそもまっ黒焦げのキャラとして表現されるはずが、任天堂チェックによりエビフライのような天ぷらに変えられています。


 この頃になると、任天堂チェックは『スーパーマリオクラブ』という組織により行われるようになり、表現規制のみならずゲーム自体の点数付け、売上予測もされるようになりました。(メタルマックス2は売上予測で40万本という評価を受けていたのに、資金問題で初回10万本しか出荷できなかったと語っています)
 後期、PCエンジンが年齢制限レーティングを設定したのとは対象的に、スーパーファミコンでは結局そういうゲームは全て弾かれてしまったため、全年齢向けソフトしか発売されておりません。ジーコサーカー除く。

32bit機戦争

 スーパーファミコンの発売後期では、3DOセガサターンプレイステーションPC-FXといった32bit次世代機が次々に発売されました。表現力が向上した分、よりリアルに描写できてしまう……という問題もありますし、PCエンジンがやり過ぎたこともありますし、各社自主規制でソフトに対して様々なレーティングを貼るようになりました。


 3DOですとスーパーリアル麻雀P4+相性診断」では、PCエンジンでは不可能だった上半身の裸体を描写できるようになりました。セガサターンも負けじと展開し、スーパーリアル麻雀PV」はアーケード版の完全移植です。PC-FXでもスーパーリアル麻雀PV」は発売され、セガサターン版とほぼ同等の内容となっています。
 なぜこんなことができるかというと、レーティングがしっかり区分けされていれば、エッチなゲームが存在しても良いだろうという判断があったものと推測できます。
 3DOはE(一般向け)、16(16才未満不適格。過激な暴力描写がある場合、軽いお色気シーンがある場合)、AO(成人向け。18歳未満に販売不可。アダルトゲーム)の三種類のレーティングが用意されました。


 セガサターンは全年齢、18推(18才以上推奨)、X指定(18才未満販売禁止)の三種類。18推とX指定の差はなんなのか、というと過激かそうではないかの違いになるんですが、具体的にいうと「胸がでているかでてないか」になると思います。X指定の「ファイナルロマンスR」ではアーケード版の移植となっていてちゃんと上半身の裸体を見ることが出来ますが、後年に18推として発売された「ファイナルロマンス4」では完全な脱衣をすることなく、PCエンジン版のスーパーリアル麻雀P4のような下着描写でとどまっています。『だったら4もX指定で出せばよかったのでは?』と思われるかもしれません。実はセガは96年を最後にX指定のゲームを認可する方針を転換し、『最低でも18推』という方針を定めました。そのためそれ以後でた脱衣麻雀ゲームは下着描写まで、となってしまっています。しかし発売当初はこの定義もあやふやだったらしく、『18推なのに胸がばっちりでてる麻雀同級生SPECIAL』『MA18というよくわからないレーティングになってるアイドル雀士スーチーパイSpecial』といったソフトもセガの審査をくぐり抜けて発売されております。


 PC-FXも全年齢、18推奨、18禁の三種類のレーティングです。PC-FXの特徴としては、セガのように途中で日和って制限をかけたのではなく、「途中から18禁を解禁したこと」にあります。……まぁこれも事情があって、NECと実質ファーストのハドソン除くと、他社製ゲームソフトが5本(うち1本はお得なセットパック)という壊滅的事情があったからでしょうか。18禁ソフトを排除すると、なんと他社製ゲームソフトは二本だけになります。そんな理由もあってPC-FXを最後にNECはゲームハード事業から撤退します。お疲れ様でした。


 ソニーがPS1で初参入したとき、セガNECのような年齢制限ソフトを許可しておりませんでした。かなり厳しく審査をし、いわゆるお色気要素は特に厳しく弾かれたのです。『よいこのプレイステーション』だからでしょうか。コナミ悪魔城ドラキュラX月下の夜想曲においては、敵キャラのサキュバスを描いたデザイナーがそのことをしらず、そのまま胸を露出しているように描いたところ、NGを食らってリテイクしたという逸話もあります。タカラの「ゆうわくオフィス恋愛課」は「PSの限界に挑戦した」と営業が息巻いたという恋愛SLGなのですが、キスしてベッドシーンに倒れ込むような情事を匂わせるレベルで止まっています。初期のサターンかPC-FXならばっちり描写したことでしょう。そんなに厳しいPS1なのですが、これも初期ではいまいち方針が定まっていたなかったらしく、「宝魔ハンターライム」では変身シーンでヒロインのライムが裸になりお尻がばっちり写っています。また中期以降「ヒロインのパンチラすら許さん!」という方針が定まったようなのですが、自社のダブルキャスト内でヒロインをパンチラさせてしまっています。ここらへんはいまいちよくわかりません。

 ニンテンドウ64に関してはレーティング云々がなく、相変わらずの任天堂チェックです。というかいまだにROMカードリッジ採用の機体なので、わざわざそういうゲームを出そうとする会社もなく……あっ! 「ワンダープロジェクトJ2」でパンチラがあった! まぁそんなくらいです。


そしてCERO設立へ

 時代が進み2000年を超えた頃、『プラットフォーマーで審査基準がバラバラのため、マルチソフトでレーティングが違う』なんてことも起こりえたそうです。そのため2002年、コンピュータエンターテインメントレーティング機構CEROが設立されました。これにより統一基準でレーティングを定めることができるうえ、何かゲーム業界に批判が起きた時に「うちはちゃんと自浄作用をもって審査しています」と言い張れる盾を用意したわけですね。……それが実際に効果を有しているのかは、確認しようがありませんが。

 さてこれでドリームキャストPS2ゲームキューブXBOX上でマルチソフトはすべて同じ表現で発売できるように……なりませんでした! これはなぜかといいますと、任天堂セガマイクロソフトが「CEROを通しているならOKです」というスタンスを取っていたのに対して、ソニーのみ「うちはCEROよりもさらに厳しい基準を設けます」としていたからです。例えばPS2GCで発売された「Killer7」はヒロイン、サマンサと性交っぽいことをするシーンが存在しますが、PS2版ではなぜか爆音で音楽を聞いているだけのシーンに差し替えられています。CERO的には両方とも18才未満販売禁止であるZ指定であるはずなのに。
 つまりこの時代からついに「任天堂よりもソニーの方が規制が厳しい」という状態になったと言えます。任天堂任天堂チェックを止めたのです。


 この傾向は世代が進み、PSP、DS、PS3Wiiとなった頃でも変わりません。(ただしPSPにはUMD-PGというエロビデオ的なものもOKな規格があります。まぁPS2がエロDVDも見れたことと同じでしょう)
 この時代のソニーの厳しさを象徴するようなソフトが二例存在します。一つはWiiPS2で発売された「お掃除戦隊くりーんきーぱー」。最初Wiiで発売されましたが、後日PS2で発売された際は「ヒロインのお風呂シーンで明らかに湯気が増えていて露出が減っている」「リボンを体に巻いていたシーンが水着に変更」と、変更点が存在しています(なお、両方共CEROはCで同じです)。もう一つはPS3Xbox360で発売された「Xブレード」。こっちがPS3のパッケージ。こちらがXbox360のパッケージです。見比べてみてください。……わかりますね? なんとパッケージのヒロインの下着面積が違うのです! PS3フルバック、360はTバックです。


 こんな感じで独自規制を敷いていたソニーなのですが、なんとPS3の中期以降はだんだんと寛容になってきます。独自規制が敷かれるようなソフトの話が少なくなってきて、マルチソフトの場合は他機種と同程度の露出になってくるようになりました。「CEROを通していればまぁ別にいいよ」ということですね。
 このCERO時代の問題点としては、CEROは結局の所「過剰な自主規制の団体」でしかないというところでしょうか。例えば裸の露出も乳首の描写は許されませんし、最高のZ指定でもグロ描写に定評がある「モータルコンバット」は日本で発売できる見込みがたちません。コレに対してのCERO側の言い分がこちらのインタビューに非常によくまとまっていますので、ぜひ皆様暇な時間にご一読ください。


光の到来

 さて、今では各社独自規制を止めてCERO任せになったんだね……で、この記事が終わればいいのですが、昨年大事件が起きました。ソニーが再び独自規制を敷いてきたのです。「のらトト」というゲームがそれをまともにうけました。Vita、PS4、PC、Switchとで発売されたこの美少女ゲームは、不可思議なことにPS4版のみ大量の光が降り注いで素肌が隠れているという状態でした。
Vita版とSwitch版はほぼ同内容なのにもかかわらず、なのです。つまりPS4版のみ、修正をするようにソニーが指導したわけですね。その他、美少女ゲーム「ネコぱら」においては「Switch版には胸の揺れ方がオプションで決められるのに、PS4ではそのオプションがない(揺れることは揺れる)」などという不可解な仕様に変えられています。それに関しては詳細にIGNが記事にしています
 IGNはもっと厳密に踏み込んで比較した考察を行っていますが……ソニーから公式に「このような方針を取りました」と明確に発表したことがないため、いまいち外部からはどのようなことが起きているのか、わかりにくい状況となっています。


 わかりにくさに拍車をかけているのは、全てのゲームが同じ規制を受けているというわけではない、ということです。「花咲ワークスプリング」はPS4、VITAのマルチタイトルではありますが、PS4に独自の光や湯気の追加といったものはなく、VITAと同じになっています。なぜこのような仕様で通ったのか、よくわかりません。また、コーエーDEAD OR ALIVEXtreme3Scarlettあたりは「何をどう頑張っても無理なんじゃないの?」と思われるゲーム内容だったりするんですが、金のうちわ、やわらかスキンケアの要素を削除しつつも概ねのゲーム性を維持し発売可能となっています。
 

今に至る


 ゲームの表現規制の歴史を大雑把に言い表すとこのようになっています。Switch版スーパーリアル麻雀PVがそのまま移植ができなかったのは、CEROが設立される前の基準と、されたあとの基準とが違うからなんですね。
 プラットフォーマーは自分のところで発売できるソフトを指定することが出来ます。ファミコン発売時の任天堂のように「うちは健全な遊具を発売しているんだ」とばかり、厳しいチェックをするのも自由ですし、それと似たようなことをソニーが行うのもまた自由です。
 しかしインターネットにて海外の作品に容易に触れられるようになった現代、レーティングさえしっかりとしていれば裸もベッドシーンも描写OKの映画や海外ドラマが流れてくる一方、ゲームではどんなにレーティングが上でも乳首の描写も許されない、という状況に私は首を傾げざるを得ません。
 しかしCEROは果たして批判からゲーム業界を守る盾なのか、はたまた表現規制の敵なのか、それに結論を出すことはまだ私には無理なのです。この問題は他の要因が多く、複雑怪奇すぎるので。

 
 上記の流れはあくまで大雑把なものでしかありません。サターン以前のセガコンシューマ機や、ワンダースワンネオジオポケットといった機種は私自身がそこまで詳しくないのでかけません。もしそれらについて知りたいと思ったら……私のフォロワーなら知ってるはずなので、その人達に聞いてみてください。それではお疲れ様でした。またどこかでおあいしましょう。

反発心から見える作家性 -新桃太郎伝説-

 30年ほど前のかつて少年ジャンプの巻末ページには読者投稿ページがありました。様々なコーナーがあり読者は頭を捻っていろんなネタを競い合って投函し、編集者は何千枚とくるはがきを確認しながらキラリと光るものを拾い上げそれをまとめあげたのです。
 SNSがまだなくテレビが一方的な情報発信装置として圧倒的な力を誇っていた時代、読者のなかには読者であるだけで満足できずに発信しかえそうとする猛者が生まれてきたのです。
 そしてそんな中、こんなコーナーがありました。「評論家をぶっとばせ!」。テレビや雑誌にあふれる評論家を評論しかえしてやろう、というもの。「お前は偉そうにゴタゴタいうけれどどんだけ詳しいんだよ!? お前がやれよ!」的なでした。当時盛り上がっていたファミコンブームの中で、「ファミコン評論家」というものが現れはじめたのです。……が、この時はまだ評論家をぶっとばせ!コーナー内でファイナルファンタジーを持ち上げて、ドラゴンクエストを落とせば通ぶれると思っている」などと読者から指摘されてしまうほどのものでした。つまり、あんまりゲームに詳しくない人がゲーム評論家を名乗ってそれっぽいことを言っていて、それにたいしてみんなが内心不満を持っていた…なんて状況だったわけです。
 「いったいなぜ桃太郎伝説の記事にそんなこと言いだすんだ?」と思う人が出始めるだろう頃なので、話を本題にもっていきましょう。今回の記事は「新桃太郎伝説の話です。


 桃太郎伝説? 桃太郎電鉄じゃなくて?」と思う人もいるかもしれません。桃太郎伝説とはドラゴンクエスト1が売れ、日本でJRPGというものが芽生え始めた頃、ハドソンによって発売された日本の昔話をベースにしたファミリーコンピュータRPGです。桃太郎電鉄のほうはこの後にスピンオフのテーブルゲームとして生まれたんですね。
 桃太郎伝説は桃太郎が主人公で、人に迷惑をかける鬼たちをこらしめるために旅をし、鬼と1対1で戦い進む、まさしくドラゴンクエスト1そっくりな代物なのですが、特色としてはコメディチックでギャグが詰め込まれていて、かつ世界観が和風でおおらかで適当といったものです。たとえば敵は「あかオニ」「あおオニ」といったオーソドックスなものから「べんきょうのおに」「またあおオニ(またあおオニ、といって逃げ出すことがある)」といった適当なものが混ざっていたり、「ジャキチェーン」という連続攻撃が得意な敵がいたり、道中で話しかけてヒントをもらえるキャラがお地蔵様だったり、オープニングで桃を食べようとするおじいさんがナイフとフォークを握っていたり、畑のなかにう〇ちにしか見えないキャラがいて話しかけると「ぼくはう〇ちだよ!ぷりっ!」というセリフが聞けたりと…。
 こんな感じで一風変わった世界のRPGはヒット作になりました。その後PCエンジンにて移植が行われ「桃太郎伝説ターボ」として発売され、そして直接の続編である「桃太郎伝説2」がPCエンジンにて発売されました。こちらもほんわかといて適当な世界観にパーティバトルへと進化したバトルが搭載された本格的なRPGです。PCエンジンの力を存分に振るい最大20人パーティが組め(といってもそのうち直接戦闘でコマンド入力するのは四人だけで、最大時でもお助けキャラのお地蔵様が10人分、ただのお荷物キャラのう〇ちが3人分なのですが!)、イベントを多数組み込んだ正統派なパワーアップ作品となっております。
 PCエンジンではほかに、コメディタッチで初心者でもクリアできるように調整されたイージーモードを搭載している(当時は結構珍しかったんですよ)桃太郎活劇が発売されています。

 こんな風に桃太郎作品は広く展開されていたわけですが、どれも世界観が独特で、コメディタッチです。ただし根本が「愛と正義」であったため、オニたちはあくまで「こらしめる」であり、死を忌避していたり、改心したオニと村人が一緒に祭りを楽しむさまが描写されていたり、ただふざけるのではなくて締めるところはきちんと締めて真面目にゲームをプレイする子供たちに楽しんでもらおうと思える真摯な姿勢が見れるのです。

 2の後にさらに続編である桃太郎伝説外伝」をはさみ、スーパーファミコンにて初めて桃太郎伝説が展開されたのが今回紹介する「新桃太郎伝説となります。この新桃太郎伝説、話としては1の続編に位置付けられていて、いわば2のリメイク作品になっています。そしてこの作品、桃太郎ファンにとって結構な衝撃をもたらしたものでありました。

 その理由は、作風がいままでのものと違っていたからです。たしかに表面上は今まで桃太郎シリーズとおなじように、昔話ベースで鬼たちと戦いこらしめるものです。しかしそこで展開するのは、シリアスで重厚なストーリー。かつて桃太郎と戦い愛と勇気を知ったエンマ大王は地下に囚われ、鬼の世界を統括するバサラ王が人の世界をも征服しようとダイダ王子を送りつけてきました。異変に気が付き桃太郎もダイダ王子と戦いますが、手も足も出ず敗北。そして今まで持っていた力と技もすべて吹き飛ばされてしまい、いわゆるレベル1の状態に戻されてしまうのです。おじいさんとおばあさんの住む家で寝込んでいた桃太郎が目を覚まし、そんな状態でも再度鬼退治の旅にでる……というもの。各地をめぐり鬼の支配から村を開放し、仲間を集めていくという流れになるのですが、その各地の鬼のやることが笑えないものになっています。
 花咲の村では桜の木は焼かれてしまっているし、金太郎の住む村では子供たちが檻に閉じ込められ、その檻に巨大な岩が今まさに落ちようとしているところを必死に金太郎が一人で岩を支えてこらえているという状態。そんな悪行がシャレにならないレベルの中で特に残忍さ・狡猾さが目立つ鬼がいます。それが初期からお邪魔キャラとしてイベントごとに顔をだしている「カルラ」です。

 カルラはいたるところで桃太郎の邪魔をするのですが、それがえげつない。桃太郎にやられ改心した部下の鬼を殺してしまうのは当たり前、村に毒の雨を降らせて大量虐殺、人魚も大量虐殺(その血のためか人魚たちが住む村に入ると画面が赤く染まる)、そしてライバルキャラであったダイダ王子も殺害し、しかもしかもそれらをすべて桃太郎になすりつけて出世の糧にしているというもの。最終的にはバサラ王を亡き者にし、その後釜を狙おうと暗躍しています。その野望は結局叶うことはないのですが、なんとカルラはヒロインかぐや姫を殺し、世界を崩壊させてしまうのです! 
 わずかに残った大地に生き残った人々が集まり、改心した鬼たちが一生懸命人を救おうとし、鬼ヶ島から食料を持ち出してはいるものの多くの人たちが死んでしまった…。一刻もはやくカルラを、バサラ王を止めなければならい。桃太郎と仲間たちはカルラたちがいる地獄へと向かうのでした。
 
 バサラ王を改心させ、カルラを打倒し、かぐや姫も復活し崩壊した大地も蘇る。これから人と鬼とが手を取り合い、新しい国を作らなければならないのだ……! エンディングはこういうものです。なんと、甦ったのはあくまでかぐや姫と大地であり、死んでしまった人たちや鬼はそのままという状態なのです。死を忌避していた桃太郎シリーズではありえない、といっていいのではないのでしょうか。


 開発期間がわずか4ヶ月ということもあり、ゲームバランスや一部の処理の重さに甘さが残っていて、そこが評価の減点対象となっているものの、全体を見ると「ハードで重厚なストーリーに豊富な仲間の個性が光る」という点が評価され、名作と呼ばれる扱いを受けている作品なのではないか、と言っていいと思います。

 さて、ここまで読んでいただいて皆様には「なんで新桃太郎伝説はこんなにハードなストーリーになったの?」という疑問が浮かんだかと思います。それを明確に語ったインタビューを私は見つけることができませんでしたが、いくつか思い当たる節がなくはないのです。それを今からご説明いたします。

 はるか昔、新桃太郎伝説が発売される前「ハドソン魔境」というアンソロジーコミックがありました。桃太郎伝説PC原人天外魔境といったハドソンの主力IPをもとにした主に4コマ漫画を中心にしたコミックです。その中に桃太郎シリーズの作者であるさくまあきらや、後にサクラ大戦をつくる広井王子桃鉄のびんぼうがみのモデルとなった榎本一夫らが集まったインタビューが収録されています。(申し訳ないのですが、すでに現物はなく、かなり昔に読んだ記憶を元に記述をしています)
 インタビューの内容は結構開発の現場に踏み込んだもので、ハドソンの社風が「上司に開発の相談しにいったら返事が『やれば?』だった」ですとか「スーパー桃太郎電鉄Ⅱでショック死する人が出るかもしれないから、そのとき新聞で答える内容は考えてある」というものが語られています。その中にこんな記述がありました。
 それはさくまあきら「評論家に腹がたっている」と答えているものです。
 桃太郎シリーズやPC原人はコミカルな雰囲気でゲームに不慣れな子供でもとっつきやすいように調整されています。そのうえでやりごたえがあるように難易度を設定していたはず……なのですが、当時のゲーム評論家に『大人向けではない』と批判されていたことを話していました。そしてその上でさくまあきら「こっちはお子様ランチをつくっているのに、なんでフランス料理じゃないんだって因縁をつけられたようなもの」と語っています。他には桃太郎伝説2の、前述の20人パーティに触れられて『さすがに20人もいると感情移入できない』という評論を見て「やってないなら書くなよ!」と怒った件にも触れています。
 お気づきの方もいるかもしれませんが、ジャンプ放送局「評論家をぶっとばせ!」コーナーが作られたのは、まさしくこういう事情があったからです。さくまあきらは当時の編集員でした。その事にもインタビュー内で触れており「相当な反響があった」と答え、「みんな評論家に対して思うことがあったんだね」、と振り返っています。


 私の想像ですが、結局さくまあきら「評論家をぶっとばせ!」コーナーだけでは溜飲が下がらなかったのではないでしょうか?
 「俺の作っているものはお子様ランチだ!」と言い放った、その上で「俺はフランス料理もつくれるんだぞ!」という反発心。それの結晶が新桃太郎伝説なのではないでしょうか? 新規ipとして新たに大人向けをつくるわけではなく、今まで桃太郎シリーズに触れてきて成長してきた子に対しての大人向けを意識した作品を提供することで、自らの作家性を誇示した……そう思えてならないのです。初代桃太郎伝説ファミコンで発売されたのが87年、新桃太郎伝説の発売が93年です。う○こで喜んでいた小学生低学年が、中学生になるほどの時間がありました。さくまあきらは、その中学生以上の層がこの新桃太郎伝説をストレートに受け止めることができると信じて、イメージチェンジを図ったのではないでしょうか。
 ジャンプ放送局の編集を行い、読者からの意見を吸い上げることに長けていたさくまあきらだからこそ、それを把握することが可能だったのではないのでしょうか。


 新桃太郎伝説の発売から25年が経ちました。作者であるさくまあきらは、2016年に桃太郎電鉄新作をリリースしてから以後、新作の話を出すことはありません。そして今年1月1日に心筋梗塞で緊急入院となりました。現在、退院し無事な姿を見せています。次なる作品は、難しいかもしれません。
 かつて8bit、16bitのゲーム機において子供たちの心を魅了し、そして衝撃を与えたゲームクリエイターさくまあきら。彼が心血注いだ作品である「桃太郎伝説」シリーズを是非プレイしてみてください。

 そしてさくまあきらさんは、お体に気をつけ養生をしてください。私は、あなたが喜びと楽しさと衝撃を与えることに成功した子供の中の一人なのですから。

竜退治の先にあったドラゴンクエスト -メタルマックス2-

注意! このレビューではメタルマックスシリーズと、ドラゴンクエストシリーズのネタバレを多分に含んでいます。

 

はじめに -メタルマックスとは-

 かつてのファミコン時代『竜退治はもう飽きた』というキャッチコピーで売り出せたゲームがありました。今のゲームを振り返ってみると、ハンターは竜退治をし、竜を倒す冒険のナンバリングは11を迎え、吹き出る温水に乗って雪山の山頂付近に着地し秘境を見つけた後には名を冠するドラゴンが舞い降りてくるのです。

 

 ようするにみんな竜退治が大好きなのです。これはどうしようもありません。王道は褪せることがないからこそ王道なのです。しかし同時に、それに対して刃向かってしまいたくなるのも、これも人の性か、と神がいうほどありふれた行為でもあるのです。

 

 話をもどしましょう。『竜退治はもう飽きた』と銘打ったゲームは『メタルマックス』。文明が崩壊し、荒れ果てた荒野に賞金首モンスターを狩るためハンターたちが戦車に乗り込み疾走する……そんな近未来と西部劇が合体したような、火薬と鉄の匂いが似合う一風違う世界観のRPGは、ファミコン時代後期、剣と魔法の世界観のゲームがボコボコと溢れた後に登場しました。

 

 刺激的なキャッチコピーは明確にこのゲームがアンチ・ドラゴンクエストであると示しています。しかし同時にこのゲームは『自分たちなりのドラゴンクエストを作ってやろう!』という気概に溢れた作品でもありました。なぜなら、これを作った人たちは元々ドラゴンクエストを作ったスタッフだったのですから。

 

 詳細はこのインタビューにて語られているので是非読んで頂きたいのですが、メタルマックスの主要スタッフはかつてドラゴンクエストの1から3までの開発に参加していたことがあったのです。

 しかしシナリオライター堀井雄二との方向性との違いにより彼らは独立、そして己のセンスを注ぎ込んだメタルマックスを作り上げることになりました。

 

 根強いファンが出来、舞台をスーパーファミコンに移し改めて作り上げたのが今回紹介するソフトメタルマックス2になります。高品質なグラフィックのみならず、進化とお遊びをふんだんに取り入れた上にゲームバランスも素晴らしくよくできているという出来栄えです。 前作の反省点を活かし、短所を潰し長所を伸ばした結果といえるでしょう。

 

 さてこのメタルマックス2ですが、このソフトは如何にドラゴンクエストと違うのか、そして如何に根源が同じなのか、というところに重みを置いて、ドラゴンクエストとの比較を行いながらレビューを行いたいと思います。

 

 

魔王という発明品 -目的の明示-

 

 ドラゴンクエストにおいて(というか多数の中世ファンタジーRPGにおいて)、旅に出る理由付けは「魔王退治」であります。1作目は竜王が、2作目は大神官ハーゴンが、3作目にはバラモスが「理由を抜きにして魔物を引き連れ人間たちを襲ってくるので、倒さねばならない理解不能な相手」として存在する状況に追いやられています。これはプレイヤーにとって非常に説明しやすく、また感情移入しやすい状況に最短距離で持っていく発明といえるでしょう(発明したのはドラゴンクエストではないでしょうが)。

 

 しかしメタルマックスは中世ファンタジーRPGではありません。近未来の世界に魔王はいないのです。しかしモンスターや賞金首は出さねばなりません。

 

 これを解決したのが「スーパーコンピュータ・ノア」です。かつての人類が作り上げた地球環境の汚染を救済するための打開策を見出すための超AI。しかしノアは「人類がいるかぎり地球の環境汚染は改善されない」という答えを出してしまい、文明を滅ぼすために各地にミサイルを打ち込み、文明を破壊したあともモンスターや自律殺戮兵器を生み続け、人類の滅亡を企み続ける存在。メタルマックス1のラスボスはこの超AIとなりました。メタルマックス1は魔王退治ではなく、ノアを打倒し世界を救うハンターの話なのです。

 

 ちなみにメタルマックス1の主人公はただの修理屋の倅だったのですが、ゲーム開始直後に父親にモンスターハンターになるんだ!」と啖呵を切ってしまったために勘当され、流れ流されてハンターになるという物語展開を迎えています。それが最終的には世界を救うハンターとなった……という面白みがあるんですね。

 

 さて、今作メタルマックス2「魔王役」はどうなったのでしょうか。1と2は世界観が非常に似通っていますが、共通と明言されていません。ノアを続投させても良かったのでしょうが、今作では「バイアス・グラップラーという組織が主人公を旅に向かわせる敵として確立しています。

 

 主人公はまだ半人前のハンター。幼い頃に孤児だった彼を拾い育ててきた女ソルジャー、マリアは彼を連れて依頼を受けたマドの町へとやってきます。この町はバイアス・グラップラーと呼ばれる人間狩り集団に狙われていて、それを守るためにマリア他、名うての用心棒たちが集まり迎え撃った……という導入からゲームは始まります。

 やがて人間狩りははじまり、グラップラーたちが町を襲撃するのですが、それをマリアや用心棒たちが軽く一蹴します。しかしグラップラー四天王」の一人である「テッド・ブロイラー」が姿を表わし圧倒的なパワーで用心棒たちを焼き尽くします。残ったのはマリアと主人公のみ。マリアは最後の最後まで主人公をかばい続けるのですが、やがて事切れ主人公も炎の中に焼かれていきます……。

 

 主人公が目を覚ますと、そこはベッドの上。主人公は酷い火傷を負っていたものの、唯一生き残っていたのでした。マドの町の人たちもその大勢を人間狩りで攫われてしまったものの、隠れて生き延びた人たちがいたのです。そのうちの一人の少女が主人公を助けてくれたのでした。

 動けるようになった主人公はバイアス・グラップラーに、テッド・ブロイラーに復讐するために旅立つことを決めたのでした……。

 

 このような導入部を迎え、ゲームは始まります。どことなく、ドラゴンクエスト4の第5章を彷彿とする展開(主人公が隠れ住む山奥の村に、魔王が魔物を引き連れ襲ってきて、幼馴染の少女の犠牲の上に主人公が唯一助かる)ではありませんか? 村が焼かれる、大事な人を失う、といったイベントから物語が始まるのは王道です。メタルマックス2においては「文明崩壊後という特殊な世界観」「倒すべき敵の明示」「主人公への感情移入」といった複数の宿題を、この王道イベントを通すことで一気にやり遂げたのです。まさしくこれこそ「自分たちなりのドラゴンクエストではないでしょうか。

 メタルマックスの主要スタッフはあくまでドラゴンクエスト1-3までのスタッフであり、4以降は関わっていません。それなのに似たイベントで始まるのに面白さを感じませんか?

 

目的地の指示と、探索の報酬

 

 さて、そんな劇的なスタートを切った導入部が終わり、いよいよ旅をすることが可能になりましたが、実はメタルマックス2においては「どこどこへいけ」「何々をしろ」と明確に指示させることはそこまで多くはありません。いわゆるフリーシナリオに近く、重要な箇所でのイベントを除けば多数がスキップ可能です。16体いるうちの賞金首モンスターのうち、倒さねばならない敵はわずか5体で、その他で倒さねばならない中ボスは数体です。 

 

 序盤で貰えるヒントも「主人公を助けた女の子のおじいさんがエルニニョの町へ言った」「エルニニョの町は東の砂漠を超えたところにある」「エルニニョの町は今グラップラーが支配していてやばいことになってる」くらいで、危険さを匂わせつつも主人公にはっきりとは「そこへいけ」とは言いません。直接的な指示を忌避するのはドラゴンクエストでも同じです。

 

 メタルマックス2の面白いところはそれに付属して「探索の楽しみ」も感じられるようなマップデザインを施してあるところにあります。エルニニョの町は東にあります。では、西にいくとどうなるのでしょうか? すると山脈の行き止まりの手前に一軒家があり、そこには飲んだくれの男が住んでいました。話しかけると、「エルニニョの町は反対方向だ」と教えてくれます。そして家から出ようとすると、その男が「どうして妻は出ていってしまったんだよぉ」と泣く声が聞こえてくるイベントが発生します。……ストーリーとは直接的に絡むことではありませんが、つまりプレイヤーに対して「目的地は逆だけど、この世界にはこういう風にいろんなところにいろんなイベントがあるんだよ。是非探してみてね」というメッセージを送っているのです。

 

 では素直にエルニニョの町を探して東に行った場合はどうなるでしょうか? 東にいくと、谷間にある小さな施設を発見しました。そこは名もない酒場。補給することと、エルニニョの町の情報を得ることができました。

 今度は北に砂漠を超えることで、ついにエルニニョの町を見つけることができるのですが、その町は破壊されたビル群の中にぽつんとあるのです。この世界が文明崩壊後にあることを改めて確認できるようになっています。

 

 このゲームの主人公は、最初の時点で未完成のマップを有しています。移動のたびにマップがアンロックされていってどんどん詳細になっていくようになっているわけですが、「探索すればかならず何かがある」というデザインと絡み、隅々まで探してやろう! という気にさせてくれるものに仕上がっています。

 物悲しいストーリーが背景で流れていたとしても、探索はプレイヤーにとって楽しいものでなくてはならない。これはドラゴンクエストとの共通点ですね。

 

ドラゴンクエストがやらなかった「探索」と金属探知機

  

  さて、そんな共通点があるメタルマックス2ですが、明確にドラゴンクエストにはなかった要素が存在します。それは「フィールド上にアイテムが落ちている」ということです。PS2時代に進み、3Dフィールドを実装したドラゴンクエスト8ではフィールド上の宝箱が実装されていますが、この時代のドラゴンクエストには「フィールド上を調べても落ちているアイテムは存在しない」というのがありました。これは仕様としては当然かもしれません。一マスごとに移動して「しらべる」を繰り返すのはさすがに労力です。かわりに(4以降は)町や洞窟のなかで、あやしげな場所にちいさなメダルがおかれているようになりました。

 

 メタルマックス2においてはダンジョンや町の中に宝箱変わりの「木箱」がおかれているのですが、そのほかに普通にフィールド上に強力な武器・アイテムがおかれています。そしてその場所はノーヒントです。これでは場所を探すだけで大変な労力なのでは? 

 これをメタルマックス2は金属探知機というアイテムで一気に解決に導きました。中盤のイベントで手に入れるこのアイテムは、使用すると主人公の周囲を自動で探し、怪しいところを見つけ出してくれます。そして同時に「このイベントだけではなく、フィールドのあちらこちらにアイテムが落ちている」ことも教えてくれます。

 

 そうなるとどうでしょうか? 今まで歩いてきたフィールドも戻って金属探知機で探してみたくなりませんか? するとなんと、本当に強力なアイテムがあちらこちらに落ちていることに気が付くのです! 進みすぎて時代遅れになってしまった武器も、売り飛ばして改造費用にすることが可能です。今まで何の気なしに進んでいたフィールドが一転し、宝箱に変わったのです。探索済みの場所を再度探索する喜びを、プレイヤーに与えることに成功しているんですね。

 

 ドラゴンクエスト1において、ロトのつるぎ竜王の城の最深部ではなく、途中に置かれている理由はご存知でしょうか? それは強い武器を存分に味わってもらうため、なのです。最深部においてしまっては、それを味わい切る前にラスボスである竜王との戦いに赴いてしまうわけです。

 メタルマックス2のフィールド上に置かれた強力なアイテムは、まさしくこれに相当します。探索で手に入れた装備は、強い敵、次なる賞金首モンスターに効果的なダメージを与えることができ、思う存分その強さに酔いしれることが出来ます。

 

 ドラゴンクエストはあえてしなかったことを、メタルマックス2は金属探知機というアイデアで乗り越えて実装し、成功したといえるでしょう。(なお、ドラゴンクエスト6以降はレミラーマという呪文が追加され、「アイテムがある場所を光らせる」というアイデアを実装しています)

 

旅は辞めることができる。しかし辞めることは出来ない

 

 メタルマックスシリーズの恒例イベントですが、ラスボスを撃破する以外にエンディングを迎えることが可能です。それは結婚し、ハンターを引退するというものです。メタルマックス2でも命の恩人である娘と結婚し、「引退しその後も慎まやかだが幸せな生活を送った」というエンディングを見ることが中盤以降ならいつでも可能なのです。プレイヤーはつまり、ラスボス撃破以外の好きなタイミングで己の物語にピリオドを撃つことができる権利を与えられているのです。

 

 メタルマックス2の巧妙なところはそのような選択肢を上げておきながら、決してプレイヤーに引退エンドで終わらせて満足させようとはしないストーリー展開を繰り広げることです。

 主人公の目的はマリアの敵、テッド・ブロイラーを倒すことにあります。その旅の中で仲間に出会い、戦車を手に入れ、強くなり、次第に敵組織グラップラーの存在理由を知っていくこととなります。

 

 文明が崩壊する前、一人の天才科学者が己の難病に絶望し、研究所の一室にこもりっきりになった。己の病気を、なんとかして治すために。死から逃れるために。しかしその後文明崩壊の日が訪れ、研究所と共に埋もれて姿を消した……。しかし彼はその意識をスーパーコンピュータに移植することに成功していたのです。そのコンピュータは己が破壊されること、つまり死を恐れました。そのためコンピュータの現状維持と、防衛システムの再構築、さらなる究極生命体の創造……。各地で暴れていた賞金首モンスターは、このコンピュータが作り出したものでした。そしてグラップラーは、実験を続けるための生体細胞を手に入れるために人間狩りを行うために作られた私設武装集団だったのです。

 

 そんな真実を知った主人公とプレイヤーは、はたしてテッド・ブロイラーを倒したあとでも「ああ仇が打ててよかった。ここで旅を終えよう」と区切り、戻って引退することができるでしょうか? 各地で人間狩りの被害にあい、グラップラーたちに支配され、賞金首モンスターから逃れる人々を今まで散々見てきたのです。主人公はセリフを一言も発することはありません。しかしプレイヤーの意図を汲み行動することができます。彼はプレイヤーの操作のまま、銃を取り、戦車を駆り、暴走するコンピュータへと立ち向かうのです。好きなタイミングで引退することができるという要素を組み込んでおきながら、ラスボスを倒しにいく動線はしっかりと組み込んであるのです。ここで引くことは、ありえないのです。

 

 プレイヤーと主人公の一体化は、ドラゴンクエスト3の終盤でも行われました。父オルテガが生きていたという衝撃の事実。しかしオルテガは息子を息子と認識する前に倒れて事切れてしまいます。その仇となるモンスターを倒したあとも、そのままプレイヤーは奥に進み魔王を倒そうとするのです。そう、暴走するコンピュータ、「バイアス=ブラド」は、まさしくメタルマックス世界の魔王として君臨することに成功したのです。

 

魔王としての存在、バイアス=ブラド

 

 すこしばかりラスボスのバイアス=ブラドについて語りましょう。これが天才科学者の意識を移植したスーパーコンピュータであることは先に述べました。それではその元になった天才科学者ブラド博士のことを補足したいと思います。

 

 生前のブラド博士がどんな人物だったのかは、各地で断片的に語られています。実業家でもあり、世界有数の巨大企業ブラド=コングロマリットの社長であったと。地球の環境汚染にも心を痛めており、化学の力でそれをなんとかしようとした理想家の面もあったと言われています。

 そんな善良な面が強いブラド博士も、難病により人が変わってしまいました。その後の運命は上で語られたとおりです。

 

 しかしメタルマックス2において、とある別荘地に行くことで少し違った視点を得ることができるのです。テニスコートとプールが整備されている保養地のそこは、文明崩壊した今では食用アメーバの養殖池と、ただで旅人を寝泊まりさせている施設になりました。なぜただなのか、というと……そこに幽霊がでるからです。

 

 事実、テニスコートにいくと老人と若い娘がテニスをしている幻覚を見ることができ(近づくと消えて、ボールの音だけが響き続ける)、別荘の中に入って部屋を見回すと老人と若い娘がベッドで寝ているのが見え、話しかけると骸骨と化したあと消えていく……という現象に遭遇します。

 

 そこの作業員たちに話を聞くと、この別荘地がブラド博士のものだったということがわかります。つまり、この亡霊の老人こそがブラド博士なのでしょう(若い娘は恋人か)

 

 実はメタルマックス2世界において、「幽霊」という存在が見えるのはこの別荘地だけだったりします。敵モンスターに幽霊・亡霊的なものはいませんし、賞金首モンスターも皆実体のあるものばかり。死者は、新鮮なものならばドクターミンチの蘇生術で生き返ることもあるのですが、そうでなければ朽ちていくだけの存在として描写されています。

 

 いえ、もう一つだけ幽霊的存在が出てくる場所があります。ラスボスのバイアス=ブラドを倒したあとに、です。コンピュータが破壊されたAIは「バイアス=ブラドという偉大な精神は死すらのりこえたのだ!」と絶叫します。「わしの意識が物質を超越し、純粋エネルギー体になる そのときこそ、わしは不死の存在になる!」と続きながら、そのAIは強烈なエネルギー体「トランス=ブラド」となって襲いかかってくるのでした。

 

 なるほど、これはまさしくブラド博士の精神が死を恐れるがあまりにそれを超えたものとして実体化したものなのだと……解釈したくなります。でも、少しお待ち下さい。

 ブラド博士の幽霊は、いるんです。別荘地に恋人の霊と一緒に。ではいったい、このラスボスは?

 

 ブラド博士が作り出した、ブラド博士に似ているが全く似ていないスーパーコンピュータ。それが自らの死を乗り越えようとして生み出した怨念…。人ならざるものが生み出した、人よりも恐ろしい理解不能な悪意の塊。まさしく「魔王」としか表現できない存在が、最後の最後、ラスボスの最終形態として現れる。アンチ・ドラゴンクエストであるメタルマックス2の最後の敵は、ドラゴンクエストのラスボスと等しい「魔王」だった。私はそう考えます。

 

ドラクエを超えるのはドラクエだけ」

 

 ドラゴンクエスト6のキャッチコピーはご存知でしょうか? 「ドラクエを超えるのは、ドラクエだけ」というものです。RPGを日本に普及させた自負をもつドラゴンクエストだけが言える名キャッチコピーであるといえるでしょう。

 しかし今の視点から見ると、この時もしかして、「ドラクエを超えたドラクエ」はすでに存在していたのかもしれませんね。メタルマックス2というゲームは、それを主張してもいいゲームだと思うのです。

「キャラゲーに名作なし」は過去のモノになった? バットマンアーカムシリーズレビュー

 かつてのゲーム好きな子供たちの間では「キャラゲーに名作なし」という言葉が、さも真実であるかのように流布されていたことがあります。ファミコンブームで沸き上がるゲーム業界では、「あの人気作の版権取ってきたからなんか適当につくれ!」と現場に押し付け、コンセプトもゲームバランスもどこかにいってしまった作品が(どれとは言いませんが)現れ、子どもたちを絶望に突き落としたのです(どれとは言いませんが)。その中でもキラリと光る出来栄えがいいキャラゲーもあったわけですが、どうも中には「もともと別のオリジナルゲームキャラで成り立たせるはずだったものの、タイミングよくキャラゲーの仕事が舞い込んできたので、キャラのガワだけ入れ替えてつくった」なんてものもあったそうです(どれとは言いませんが)。

 さて、時代を進めてPS2時代あたりのゲーム事情を振り返ってみると……「キャラゲーに名作なし」に引っかからないキャラゲーがどんどん出てきたと思いませんか? ガンダムがアニメのままの動きで動いて格闘ゲームしてる!?」と衝撃を受けたガンダムvsシリーズ。とんでもないキャラ数と必殺技は原作再現そのまんまで収録されているドラゴンボールZ Sparking!シリーズ。ま、まあこの時代でもアレめな出来栄えのゲーム(どれとは言いませんが)があったわけですが、「どうしようもない駄目」なゲームもまた、少なくなっていった気がします。
 
 私の勝手な想像なのですが、今のキャラゲーを作っている人たちが、そもそも若いうちからゲームに親しんでおり、かつアニメや漫画、映画でがっつりとサブカルチャーを楽しんでいるために「いかにして原作をゲームに落とし込むか」という点への意識が高いからなのではないでしょうか? 先に上げたガンダムvsシリーズの「連邦vsジオン」でも、ガンダムとジムでは性能差がありすぎるため普通の格闘ゲームとして再現できない点を「コスト性」という発明で乗り切りました。ジムは量産機なので何機やられても平気だけど、ガンダムは痛手になる、というのは十分に原作再現で、かつゲームを盛り上げる要素として成立しています。


 今回のゲームレビューは「原作愛満載の奴らが作ったキャラゲーシリーズ」の中でもトップクラスに位置するだろうバットマンアーカムシリーズ」です。
 バットマンアーカムシリーズとは、有名アメコミキャラバットマンを主役とした3Dオープンフィールドアクションゲームです。現在まで四作出ており、ストーリーもそれぞれ連続してはいますが、どこからプレイしても問題ありません。なにせあまりに原作愛溢れすぎているためキャラ一人一人の説明が綿密に用意されていて、それを読むだけでも時間が潰せますし、キャラ把握が可能です。私は映画のバットマンシリーズしか見たことがないにわかなのですが、このアーカムシリーズは楽しめながら進むことができました。演出も丁寧で「ああ、このキャラはこういう奴なのね」というのがするする頭に入ってきます。あとだいたい共通してバットマンの命を狙っているということ。

 このシリーズの醍醐味はそのアクション性。攻撃、マント、回避、カウンターの4つの操作をぺちぺちと状況にあわせて押すだけで、バットマンがカッコよく敵をぶちのめしてくれます! 敵が殴りかかってくるとその敵キャラの上に冠マークがつくのですが、それが合図。カウンターボタンを押すとバットマンが敵の腕を掴んで反転させ後頭部に一撃決めます。二人攻めて来た場合は、カウンターボタンを二回押しましょう。バットマンが二人の敵の頭を掴んでごっつんこします。スタンスティック持っている敵がいる? その場合は回避ボタンで敵の背中側から攻撃しましょう。シールド持ち? 回避ボタン連打してジャップキックでシールドごと撃ち抜きましょう。ボディアーマー着てる敵? そんな奴はマントで翻弄したあと攻撃ボタン連打のラッシュでボディアーマー越しにダメージを与え続けてノックアウトです!

 銃を持ってきた敵がいた場合、バットラングを投げつけて銃を落とさせてもいいし、バットクローで掴まえてバランスを崩させてもよい。後期のシリーズならば撹乱器を使うことで相手の銃を発射不能に追い込むこともできたりするのです(使用制限はありますが)。そもそも相手に見つかっていない状態なら背後から忍び寄って音もなく相手をノックアウトするサイレント・テイクダウンを発動させることができ、これがまた必殺仕事人的アクションを決めてくれるバットマンがボタンひとつで見れて格好いいのです。
 そんなバットマンに対する愛が惜しげもなく注ぎ込まれた「アーカムシリーズ」。その最初の作品は「バットマン アーカムアサイラム」です。

バットマン アーカムアサイラム

 「壮大なバットマンごっこ遊び」と称されるようになった初作品。舞台はアーカム精神病院という囚人を収容する大型施設。そこでジョーカーが暗躍し囚人たちを逃してしまい反乱が。バットマンは果たしてこの危機を乗り越えることができるのか、というストーリー。上記にあげたアクション要素のほとんどがこの初作で完成しており、また激しいアクションの合間にはバットマンが静かに建物のなかに侵入し、相手の監視をくぐり抜けるというステルスアクション要素が入っています。3Dアクションと思わせ唐突に2Dスクロール風アクションになってみせたりと、多彩な面を見せてくれます。後期シリーズと比較するとどことなく天井が低くオープンワールド感がいまいちなところもなくはないのですが、今プレイしても十分楽しめるアクションゲームです。オススメ。

バットマン アーカム・シティ

 アサイラムの正当な続編です。ゴッサムシティのスラム街を隔壁で閉鎖して、そこをすべて収容所としてしまう計画が進行しており、ブルース・ウェインはそれに反対していたものの、なんと冤罪で逮捕されてしまいアーカム・シティの中へと連れ込まれてしまう…というもの。しばらくはバットマンとしてではなく、ブルース・ウェインとして操作しなければならなかったり、おなじみのジョーカー、ペンギン、トゥーフェイスミスター・フリーズといったヴィランがガンガン出てきたりとファンアイテムとして非常に豪華な出来栄え。そしてバットマンへの愛情が狂ったように注ぎ込まれており、バットマンは物語が進むに連れ徐々にスーツやマントがぼろぼろになっていき、無精ひげが伸びていきます。
 大型精神病院から舞台をスラム街へと移したため、縦への移動が広く行えるようになり、かつグラップネルブーストスキルを獲得すれば異様なスピードで飛行することが可能です。ビルとビルの合間をワイヤーを使ってしゅんしゅんと飛び回り、無線を傍受して悪人が暴れる犯行現場に急行。空から急降下キックで犯人を吹き飛ばす……こんな映画のワンカットのようなシチュエーションを自分がバットマンを操って見ることが可能です。
 収集要素であるリドラートロフィーがあまりに意地悪なところに隠されていてムカっとすることがありますが、メインストーリーやサブストーリーにストレス要素はなくサクサクと進めて楽しむことが出来ます。さらにはおまけとしてキャットウーマンが操作できるDLCも存在します。
 ストーリーはアサイラムからの続きではありますが、状況説明や敵ヴィランの説明が非常に豊富であるため、今作からプレイしても支障はありません(現に私は今作からプレイをはじめました)。今はアサイラムと含めたリマスター版がPS4で販売されております。買うならこっちをオススメします。(なお、Steam版では日本語化することができませんので注意してください。アサイラムの方には日本語Modが存在します)

バットマン アーカム・ビギンズ

 アーカムシリーズではありますがストーリーはアサイラムの前、いわゆる前日譚となります。謎の敵、ブラックマスクからバットマンが懸賞金をかけられてしまい、多数のヴィランバットマンの命を狙い来る…というもの。前日譚であるため警察はまだバットマンを敵視しており、事件を追っていきながら彼らとの信頼を築いていく話でもあります。システム的には前作アーカム・シティを踏襲していますが、いわゆるファストトラベルや、犯行現場の証拠を集めて時間を巻き戻し事件を再現するモードが追加されたりしました。進化した方向性はゲームの面白さとは直接つながらない、あくまで演出面の強化であるのですが、これは前作アーカム・シティがいかに完成されていたかの証左であるといえます。前作同様犯行現場に急行し強襲をしかけることができますし、持っているガジェットを駆使して悪人の攻撃を逸し、撃退することが可能です。ガジェットはさらに追加され、それにあわせるように敵の種類が増え強化されました。前作をプレイしたプレイヤーにはちょうどよい歯ごたえになっておりますが、今作からプレイする人向けにイージーモードもあります。
 とてもオススメできる作品ではありますが、この作品だけはまだリマスターされておらず、WiiUPS3Xbox360の前世代機のみの発売となっております。そのためSteam版をオススメします。日本語化はされていないことになっていますが、ちょっといじるだけでちゃんと日本語字幕が付きます。つまり公式に用意されているのになぜかないことになっているわけですが……? そこらの事情はわかりませんが、マシンパワーも今ではさほど必要ではないので(CPUはCore2DuoGPUはGeForce8800でもOK)、もしプレイしたい場合はSteam版をどうぞ。
 ただしこのゲーム、すでにオンライン稼働を終了しており、オンライン周りのトロフィー・実績を解除することができませんのでご注意を。

バットマン アーカム・ナイト

 アーカムシリーズの最終作(今の所)。実はアーカム・シティにて衝撃の最後を迎えるのですが(アーカム・ビギンズが前日譚なのは、素直にシティの続きを描くのが困難だったからでは? と考えてます)、そこからの展開を描いた作品です。新たな謎の敵、今までのヴィランの再登場というもはやおなじみの展開になるわけですが、アーカムナイトはゲームを根幹から揺らす新要素を入れました。そう、「バットモービル」です! これにより広いゴッサムシティを全力疾走でき、悪人もミサイルで吹き飛ばすことができます! 被害が心配? ゴッサムシティには悪人しかいないので全力で暴れて問題はありません! 公園を駆け抜け柱をなぎ倒し目標とした車へ最短距離を突き進みましょう! グラフィックの書き込み具合も驚異的なレベルです。バットモービルが走れば火花がちり砂煙が上がり、バットマンが雨の中舞えば飛沫が飛び、照明の当たり具合でバットスーツがテカると、様々なレベルで高水準に到っています。

 戦闘システムはシリーズおなじみのモノを踏襲し、ボタンを組み合わせてバットマンガンガン戦うのを見ることが出来ますし、敵の目をかいくぐって潜入し一人づつ音も無く始末していくこともできます。シリーズをやってきたプレイヤーならばほとんどチュートリアルすっ飛ばしてプレイに入ることができます。
 そんなバットマンアーカムシリーズ最新作なのですが……実は私は唯一、このゲームを途中で辞めました。なぜか?
 追加要素であるバットモービルなのですが、これが実は快適なゲームプレイを妨げる要因になってしまいました。壁を破壊する、戦車を打ち砕く、そんな状況打破にバットモービルが必要になるのですが、これの頻度があまりに高すぎるのです。「如何にバットモービルをギミック打破の場所につれていくか?」がむしろ主軸となってしまい、バットマンが自身の能力で状況打開するのとはまた方向性が違ってしまいました。ことあることにバットモービルです。

 また今までおなじみの戦闘システムなのですが、唯一今までのシリーズにはなかった新要素が追加されました。されてしまいました。それは「ディレイつきオートカメラ」です。今までのシリーズもバットマンの動きにあわせて勝手にカメラが動くのですが、これが今作特有の調整が入った結果最悪の働きをするようになりました。このシリーズのアクションは方向キーと攻撃ボタンを組み合わせることで「どちらの方向にいる敵に殴りかかるか」を決めることができるのですが、それとずれるオートカメラが組み合わさることによりバットマンが全然違う方向の敵を殴るようになってくれました。しかもカメラ、プレイヤーの心理の裏をかくように絶妙な動きをします。そして全然違う方向に殴りにいったバットマンは、カメラの死角にいる敵に攻撃されてよろめきます。敵が十人以上いるような大所帯との戦いの場合、当然カメラワークがガンガン揺れるので視覚外の敵が大勢発生するので、こういう事故が多発し、最終的にバットマンはやられます。ゲームオーバーになるとヴィランからけなされ長いロードが入ります(これはシリーズ恒例ではありますが)。これを何回も何回も何回も何回も何回も繰り返す羽目になります。やる気が削れるのがわかりますでしょうか?

 今までのアーカムシリーズは経験値システムを導入しており、悪人を倒したり(華麗に倒すことで倍率ドン!)、隠されていたデータを見つけることでレベルアップし、新たなスキルをアンロックするのですが、今作は特定の指定ミッションをクリアすることでのアンロックとなっております。つまり街にいる悪人をいくら蹴散らそうが経験値にはなりません(バットモービルで轢くことで簡単に倒せるので仕方ないですが)。それはいいのですが、その指定ミッションが単純に面白くないという有様。バットモービルでカーチェイスして相手の車をミサイルで吹き飛ばす、というのは一見面白そうではありますが、実際は「バットモービルと同速で走る車の後ろをはりついてロックオンするまで待ち構えるのを何回も繰り返す」になってしまっていますし(バットモービルのミサイルを喰らって走り続ける車とは……?)、街にある地雷除去をするために戦車部隊を排除もバットモービルの操作感の悪さもあって爽快感が今ひとつありません。シリーズでお馴染みのコンバットやステルス戦もあるにはありますが、前述したカメラワークの悪さもあり「これを延々と続けていたい!」という気持ちにはさせてくれませんでした。

 アーカム・ナイトは高水準なゲームではあると思います。グラフィックの書き込みは凄いし、相変わらずのバットマンのアクションの切れの良さと、トンネルの天井をバットモービルが全力疾走する様はまさしく映画同等の演出です。しかし実際のゲームプレイ、ゲームデザインには心に引っかかるところがとにかく多く、小さなストレスが溜まる仕様になっていると評価せざるを得ません。ここを乗り越える事ができる人は最高のゲーム体験ができることでしょう。私には出来ませんでした。そういうものがあるのだ、と覚悟された方はプレイしてみて、実際に確認してみてください。日本ではPS4と、Steam版が発売されています。Steam版は日本語完全対応です。


 以上でバットマン アーカムシリーズのレビューを終わります。最後がちょっと「キャラゲーに名作なし」っぽくなった? 何をいっているんですか。8bit時代はそんなに甘くなかったですよ??

メトロイド・オモロイド -メトロイド サムスリターンズについて-

 私が一番最初にプレイしたメトロイドシリーズは、実はWii「アザーM」なんですね。このゲーム、ファンからの評価はあまり高くない(おそらく女主人公、サムスの内面が描写しすぎているため?)んですが、初プレイの私には非常に楽しめたソフトです。さほど複雑な操作はいらないのに、勝手にサムスが敵の攻撃をかわし、勝手にネックハンギングを決め、勝手に接射ビーム砲で敵の頭を打ち抜いてくれます! 非常にスタイリッシュで、簡単操作なのに「俺がサムスを操ってこの格好いい撃破をやってのけたぜ」感があるのです。まあ実際は違うのですが、野暮はいいっこなしです。
 ところが次にプレイしたメトロイドフュージョン(初期3DS購入者に配布されたアンバサダープログラムの奴ですね)をプレイしてみて、その面白さにぶっ飛びました。探索の面白さと敵ボスとのガチバトル、そしてサムスそっくりに擬態したXが襲いかかってくる恐怖! そして最後の最後、燃え上がる展開と演出! 2Dアクションゲームにおいて恐ろしいほどの高みに到達したゲームであると思います。(まぁこのゲームやった後にアザーMをプレイしたら、そりゃガッカリするよな、と)


 で、今回のレビューは3DSメトロイド サムスリターンズです。元はゲームボーイメトロイド2で、それのリメイクとなっています。ストーリー的には「また凶悪な宇宙生命体メトロイドが出てきたからなんとかしてくれ、サムス・アラン!」的なもので、初代をプレイしていない人でもあっさり入り込むことができます。そういうゲームではないので。
 「メトロイド」とは、主人公サムス・アランがパワードスーツをまとい、新種の宇宙生物メトロイドと戦うアクションゲームで、今作メトロイド サムスリターンズでは2Dアクションとなっています。体力はHP制で、攻撃手段もビーム、アイスビーム、ミサイル、ボムと多彩で、このうち強力なミサイルは残弾制。硬い敵はミサイルで打ち砕き、変な動きをする敵はアイスビームで動きを封じて足場にしてしまえばいいのです。そしてメトロイドシリーズのウリは「探索」です。広大なマップのいたるところに隠された通路が存在します。そこをビームやボムで破壊することで次のフロアにいけたり、またはミサイルの残弾が増えたり、HPを増やしたりというパワーアップが可能です。最初のうちからすべての武器がつかえるわけではなく、アイスビームやミサイル、ボムは探索を進めるごとに手に入っていきます。

 リメイク度合いとしては元のゲームをかなり大胆にアレンジしており、探索や戦闘を楽にするスキルが追加されています。周囲の状況をマップに映し、かつ壊れる壁を光らせてくれるレーダー、相手の攻撃を無効化してくれるアーマー、マシンガンのように弾を発射するバースト、周囲と敵を遅くさせた中自由に動けるいわゆるクイックタイム効果と、どれも効果的な代物ばかり。これらスキルの仕様にはエナジーが必要になりますが、探索を続けるとこのエナジーの上限も増やすことが可能です。さらには「メレーカウンター」なる接近技が追加されています。敵がキランッ! と光ってから突進してくる攻撃は、そのタイミングに合わせてボタンを押すとサムスがカウンターを仕掛けて敵をぶっ飛ばしてくれます。これがまあいい具合に格好良いわ効果的だわで爽快感バッチリです。アザーMで培われた要素も入れ込んでる感じですね。


 こう書いていくと「ガッチガチのストイックなアクションゲーム」のような印象を受けるかもしれません。しかし、実はそうではないのです。メトロイド サムスリターンズの実態は『ものすごくストイックなアクションゲームに見せかけて、初心者救済措置が練り込まれたゲーム』なのです。

 かつてのロックマン魔界村、近年でいえばCupheadのような横スクロールアクションはトライアンドエラーを繰り返し、プレイしている本人のスキルをあげることでボスを撃破し、クリアを目指すゲームです(内部に若干救済措置が練り込まれてはいますが)。このゲームは非常にそれに近い……ように見せかけて、そうでないように調整が施されています。最初のボスは非常に簡単に撃破することが可能です。もし負けてしまっても、ボス戦の直前からリトライが可能になっています。そしてしばらくのボス戦は「最初のボス戦に若干攻撃方法がプラスされただけのマイナーチェンジ版ボス」となっています。そのかわりにボス戦自体の数を増やし、サクサクと撃破することでアクションが不慣れな人でも徐々にサムスを動かすことになれさせていくような動線が敷かれています。それと並行し、サムス自体のパワーアップが成されていきます。ビームは壁を透過するようになり、ミサイルは数が増え、ジャンプ力はあがり、新規スキルも獲得しました。つまりボスの強化とサムスの強化を同時に行い、徐々にプレイヤースキルを向上させていくようになっているわけです。


 それでもボスの強化についていけない初心者はどうすればよいのか? その場合はボスから一回離れ、今までの道を戻ってみましょう。新しく手に入れたスキルや、ハイジャンプの能力でいけなかった場所、取れなかったアイテムに手が届くはずです。そうした結果、より増えたHPで、より大量にもったミサイルでボスに再戦することが可能です。このゲームは探索が自身の強化にダイレクトに跳ね返ってくるので、探索は苦になりません。余裕があればレーダーを発信してみましょう。アイテムの場所までバッチリ記してくれます。それでも「どうしても取れないなぁ」と思った場所は、また後でくればいいのです。パワーアップ後に取ることができるでしょう。

 そして慣れたころに、ようやく新規ボスの投入が行われます。足が生え牙が生えたガンマメトロイドは今までになかった攻撃パターンで貴方を翻弄します。さらなる成長体ゼータメトロイドはサムスの身長を大きく超える巨大生物となり、攻撃力も跳ね上がっています。どうやって彼らに対抗するか? 初心者は素直に持ってるエナジーをアーマーに振り分けましょう。凶悪なメトロイドの攻撃も、どんどん防いでいきます。そして攻撃パターンを見切り、どうやって動けばダメージを受けずに済むか学習したプレイヤーの前に、強化されたゼータメトロイドが現れます。攻撃力が上がったゼータメトロイドは……戦いに慣れたプレイヤーの敵ではないはずです。アーマーを起動させて『ちょ、ちょっと待って! そんなに激しい攻撃してこないで! こっち初心者なんだから!』と震えているサムスはもういません。『ゲハハハハ! ビームのマシンガンは美味いか? ほぉらそれで破けた腹部にスーパーミサイルをお見舞いしてやろう! おっ、攻撃直前に光ったな! それを待っていた! そぉらカウンターだ! ひっくり返って無防備なお前の弱点にミサイル連射じゃ!』メトロイドをぶち倒す男前なサムスを見ることができるでしょう。

 このゲームは丁寧です。上手いことプレイヤーのスキルを上昇気流に乗せることに主眼を置きながらも「スタイリッシュにサムスがメトロイドを撃つのが私自身が上手いからだ」と錯覚しやすいように作られています。流石に最後のボスやその手前の大ボスの難易度は歯ごたえがありますが、それでも何度もリトライしていく中で学習し、いつかは倒せるぞ、と思えるような調整がなされています。

 アクションゲームをするときに難易度調整を迷うことなく「イージー」を選択する人も、このメトロイド サムスリターンズは楽しめること間違いありません。是非プレイしてみてください。なにせこのゲーム、ハードは一度クリアしないとプレイできないようになってますので。